生態
主にインド洋や太平洋など温暖な海域に生息しており、日本でも沖縄や紀伊半島周辺に生息している。
体長が10~13cmでありながら肉食性で、ゴカイ類等の小さな生き物は勿論、イモガイと同じ大きさの小魚まで食べてしまう、かなりの大食いである。自ら積極的に行動して狩るのと、砂利に潜んで待ち伏せするという2つの行動を取っている。
その捕食方法は、体内で作った毒針で獲物をぶっ刺した後に口を大きく開いて丸呑みにしてしまうものである。この毒針は先端に釣り針みたいな“かえし”が付いているため、刺された獲物は幾らもがいても抜けることは出来ず瀕死の状態になり、そして捕食されてしまうのである。その狩りの方法から、“海底の暗殺者”と呼ばれている。
“イモガイ”という名前は外観が円錐形のような形をしていて、それが芋のように見えることから由来している。英語ではやはり姿が円錐形であることから由来して“Cone Shell”と呼ばれているが、歩き方がカタツムリに見えることからか“Cone Snail”と呼ばれることもある。
危険生物たる所以
それは先程述べた通りの毒針である。
この毒針は“コノトキシン”という、コブラやウミヘビとほぼ同じ強い神経毒が備わっている。これを人間が刺された場合、少しの間は痛みを感じないが10~20分後に目眩や痺れが出始め、その後は発熱や血圧等の低下が発症して呼吸困難に陥り最悪の場合死に至ってしまうのである。この毒針は血清がないため体内から毒が完全に抜けきるのを待つしかない。
そんな恐ろしい毒針を持つイモガイの種類の中で一番猛毒なのがアンボイナガイで、その毒性の強さは人間の大人30人を殺してしまうと言われているほどである。実際、日本ではこのアンボイナガイによる死亡事故が報告されている。その危険性は沖縄の住民の間では“ハマナカー”や“ハブガイ”と恐れられており、前者はアンボイナガイに刺されば“浜の半ばで”死んでしまうと言われていたことから、後者はその毒の強さがハブと同じであることから由来している。英語では“Cigarette Shell(Snail)”と呼ばれているが、これは毒針に刺されたら“煙草を一服する”かのような速さで死ぬと言われたことから由来している。
イモガイの毒針による事故が発生してしまうのは、潮干狩りや貝の採取が行われるにあたって“マガキガイ”という毒を持たない巻貝と間違えられてしまうこと、もしくはその綺麗な形にほだされて手に取ってしまうという理由が殆どである。生物が持つ毒は基本的に獲物を捕食するのと身を守るためにあるので、イモガイもまた手に取ってしまうと危害を与えたと認識して毒針を発射し相手を死に至らしめてしまうのである。
以上のようにイモガイの被害に遭わない一番の安全対策、それは(どの生物にも言えることだが)形が綺麗だからと言って不必要に手を伸ばして取らないことである。