概要
江戸川乱歩が大衆誌「朝日」に昭和4年1月(創刊号)から翌年2月まで連載した長編小説。乱歩の他の通俗長編と比べて構成が優れており、長編の代表作に挙げられる事も多い。
白髪の青年が記す身の上話として、男女の恋愛譚から始まり、前半は密室トリックの推理が中心となり、後半は乱歩独特の怪奇幻想趣味が加味された冒険活劇風の物語となる。乱歩自身の解説に拠ると、森鴎外の随筆に記された一挿話から着想したという(ただし、該当する挿話が実際に見られるのは小説の『ヰタ・セクスアリス』)。また、その頃に友人と同性愛に関する文献の蒐集を行なっていた影響もあり、同性愛が重要な要素となっている。
漫画化作品に高階良子「ドクターGの島」、長田ノオト「江戸川乱歩の孤島の鬼」がある。また、石井輝男監督映画『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』は本作を主な原作としている。
余談
「身の上話」の形式を採りながら、主人公の苗字は第三者の噂話の引用という形で初めて明らかになる。名前に至っては本文で言及される事はなく、雑誌連載時の梗概に記載されたものが唯一となっている。