曖昧さ回避
- ダッソー・ラファール - ダッソー社が開発しフランス空軍、フランス海軍航空隊などが運用する第4.5世代ジェット戦闘機。本項で詳述。
- ラファール(ファイアーエムブレム)『ファイアーエムブレム エンゲージ』の「邪竜の章」に登場するキャラクター。
- ラファール(ガーリー・エアフォース)『ガーリー・エアフォース』に登場するキャラクター。
- ラファール(マブラヴオルタネイティヴ) 『マブラヴオルタネイティヴ』に登場する戦術機の一種。
- リオン・ラファール - 『バーチャファイター』のキャラクター。
- 空牙団の英雄ラファール - デッキビルドパック ダーク・セイヴァーズで登場した効果モンスター。
開発経緯
1980年代初頭から開発に着手された『欧州共同開発戦闘機計画』にフランスも参加していたが、自国の要求が思うように通らないので1985年に離脱した。ラファールはその最中から独自開発された機体で、ミラージュ2000やF-8(FN)の後継機である。
欧州共同開発戦闘機
1970年代、アメリカやイギリス、そしてドイツ・フランスといった西側諸国は危機感を覚えていた。1967年7月9日のソ連のドモデドヴォ空港にて、"マッハ3の新型ミグ"ことMiG-25が初めて世界に公開された。その後MiG-25は世界の飛行記録を次々に更新し、初登場のインパクトに続いて高性能を存分にアピールしていたからである。
その実態は1976年9月6日、ソビエト防空軍(PVO)のビクトル・イワノビッチ・ベレンコ中尉が函館空港に強行着陸した事件により広く知れ渡るようになるのだが、当時はこの高性能機の登場に世界は驚き、恐怖したのだった。
これへの対抗としてアメリカ合衆国はF-15を開発。そしてヨーロッパの開発する戦闘機、それが『ヨーロッパ国際共同開発戦闘機』(当時ECF)であった。
「共同開発」の罠
といっても、当初から共同開発が決まっていた訳ではない。実際にフランスはジャギュアの後継を、ドイツ(当時は西ドイツ)はF-104、イギリスなどはジャギュアとハリアーの後継まで兼ねて開発しようとしていた。共同開発に至る道のり、まずはイギリスの試行から始まった。
イギリス空軍(RAF)は、
- ジャギュアやハリアー以上の搭載力を持つ
- 空戦が得意で安価
- なおかつVTOL可能な戦闘機
という要求を提示した。だが、この要求仕様は『欲張りすぎ』と分析されて計画が中止されたため、1972年に対空性能に要求を絞った上でBAe社に「P.106B」を設計させた。
同時期、西ドイツではメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(MBB)が同国空軍の要求に沿った戦闘機の開発を進めていた(要求仕様「TKF-90」)。1979年、この両国の開発作業のついて、共同開発協定が結ばれる。計画は「ヨーロッパ共同開発戦闘機(ECF)」、のちに「ヨーロッパ軍用機(ECA)」と命名された。
ただ、時は冷戦まっただ中であり、両国の開発予算にも限りがあった事から、新たにフランスのダッソー社にも共同開発を打診する。ただしフランスは開発費用の拠出に消極的であり(1980年の政府間協議の時には既に問題となっていた)、結局1981年にイギリス・西ドイツの共同開発計画は一度中止されることになった。
共同開発から離脱
その後、この計画の研究成果を応用してBAe社が「P.110」という発展型が開発された。しかし顧客は現れなかったため、今度はドイツの「TKF-90」を取り入れた設計案(当時はモックアップ)が1982年のファーンボロ航空ショーで初公開された。
そして1983年にはBAe社によってEAP(実験的航空機計画、後のユーロファイターの原型機)が開発される事になり、同年中にはこれを基にしてイギリス、西ドイツ、イタリア、スペイン、そしてフランスの間で合意ができ、具体的な「詰め」の協議が始まった。
だがフランスだけは国産エンジンの採用と艦上戦闘機も兼ねて開発する事を望んでおり、「要求仕様の違い」が決定的な溝を作ることになった(フランスの要求が軒並み受け入れられなかった事情もある)。こうしてフランスはEAP計画から離脱し、独自の戦闘機を設計する事になる。1985年7月の事であった。
独自開発の花道
ラファールA
さて1985年8月、こうして独自開発される事になったのが『ダッソー・ラファール』である(1983年命名)。
独自開発は開発費用をすべて自国で負担しなければならないが、その分好き勝手に設計することが出来る。実際にユーロファイターが関係各国の調整に手間取っているのを尻目に、ラファールの開発作業は順調に進んでいったのである。
1984年、まだEAP計画からは離脱していなかったが(すでに溝は決定的になっており、離脱は時間の問題だった)、最初のデモンストレータ(ラファールA)の製作が始まった。このデモンストレータはのちの生産機よりも一回り大きいものになっている。これは国産エンジン(SNECMA社製M88エンジン)の開発が間に合わず、アメリカのF404を搭載した為である。
デモンストレータは1985年12月14日にロールアウトし、地上で各種試験に用いられた。1986年7月4日には初飛行を遂げ、さっそくマッハ1.3を記録(EAPも8月8日に初飛行)。同年9月にはファーンボロで披露され、EAPよりも高い完成度を披露した。
1987年4月30日、空母運用に向けた初めての着艦テストを実施(実際の着艦はしなかった)その後1989年に終了するまでに多くの試験を行い、実績を積み上げている。1990年2月、右エンジンを国産のM88-2に変更。3月には左エンジンも換装され、すっかりフランス製の心臓を手に入れる事になった。最初のデモンストレータは1994年1月24日、867回目の飛行を最後に任務を終了。現在はシャトード空軍基地にて保管されているという。
ラファールC
ラファールAで得られたデータを踏まえ、再設計すると共に実戦型となったのがラファールCである。(再設計そのものは予定通り)ラファールCは最初に完成した空軍用の型で、海軍のラファールMにも発展していく。
ただし開発途中で冷戦が終結し、空軍250機・海軍86機を導入する計画は大幅に縮小されてしまった。もちろん軍事費が大幅圧縮されたアオリである。
そして変更を余儀なくされたのは機数だけではない。
調達の内容も大幅に変わり、単座機(ラファールC)が減らされて複座機(ラファールB)が増えている。これは『様々な任務に用いるためには2人乗りの方が都合がいい』と判断された為で、もちろんマルチロール戦闘機としての活躍を期待されている。
配備予定はラファールCが95機にラファールBを139機。
元々は225機のラファールCに対して、ラファールBが25機の予定だった。
しかし輸出用としては単座型が求められる事もあり、生産は継続している。
ラファールB
元々は転換訓練用の練習機として開発されていたが、上記のような方針転換で運命が変わった。練習機では省略される事も多い実戦用装備をそのまま残し、二人乗りの戦闘攻撃機として主力を務めている。2013年9月、AESAレーダー(RBE2)搭載型のトランシェ4が受領された。(欧州初のAESAレーダー搭載機となる)以降のラファールはB以外もRBE2・AESAレーダーを搭載する事になる。
ラファールM
ラファールCに続いて完成したのが海軍型のラファールMである。主な構造や部品などは8割ほどがラファールCと共通にされ、F-8(FN)やシュペルエタンダールの後継機として採用されている。
生産はこちらが優先されており、これは特にF-8(FN)の老朽化(旧式化ではない)が著しい為とされる。ついでにシュペルエタンダールも旧式化して久しいので増産・配備は急がれている。それでも完全な入れ替えにはまだ時間が必要で、転換完了は2020年ごろだとか。
(そのおかげで空軍ミラージュの入れ替えにはメドが立っていない)
また空軍と違い、こちらでは単座が主力である。
本当は海軍でも複座機を導入する予定があったのだが、(ラファールN)
経費削減のためか訓練は空軍で一本化するようだ。86機生産する予定だったが、ラファールNの開発中止と共に60機に減らされている。
重爆装型
現在は計画のみだが、兵装搭載量等を増やしたアップデート型を計画している。
2018年ごろまでに完成予定で、空対空ミサイルの搭載可能数を4発から6発へと増やすほかに燃料等裁量も増える予定。
海外での採用
輸出までの道のり
当初の販売は思うように伸びず、ほとんどが不採用となった。中でも韓国などはいい所までは行ったのだが、F-15Kのための当て馬扱いだったらしく不採用にされてしまった。
スイス、モロッコ、ブラジルに関しては「値段高けーよ!!軍事費抑えざるをえないご時世にこんなもん買えるか!!」という理由で断られてしまった(モロッコはF-16、スイスはF-35、ブラジルはグリペンを採用)。
なお、日本でも、ファントムの後継機の候補に挙がっているのでは?と言う噂が立ったが、これに関してはフランス側から「ミーはそんな提案した覚えないザンス!!」と、否定している。
シミュレーションでは『Su-27と互角の勝負ができる』と判定されていたが、本国でさえ配備の進まない本機の採用にはどこも及び腰になっていた。
納期の都合は合っても、「能力に不安をぬぐえない」と見られていたようなのだ。
一応DACTではユーロファイター相手にBVR(有視界外)、格闘戦を共に一方的と言える勝利していたりもするが。(同数での戦闘に加え、相手の半数に減らしての戦闘でも多くの勝利をしている)
しかし2020年代に入ると、ラファールは途端に売れ始める。
特に2021年の受注数は、なんとあのF-35をも上回った。
これは、ハードウェアを一新した新バージョンへの更新で余剰となった比較的新しい機体を安く販売したり、F-35の販売が軍事機密的な意味で「信頼できる国にしかできない」事が足枷となって伸び悩んでいる事が理由にある。
インド
インドでの採用が決定している。
これは同じく旧式化したMiG-21(MiG-21FL・bis)の後継で、予定では126機を配備する。
126機中18機はフランス製で残りはインドで製造されるという予定だったのだが、インドでの製造分まで品質保証をするという条件をインド側が提示したため(ダッソーはインドでの製造分までは品質の保証が出来ないとしている)、代わりに全機フランスでの製造にする代わりにインドへの技術移転が条件として上がり、採用は暗礁に乗り上げてしまった。あわや交渉破綻かと危ぶまれたが、2015年に36機は無事ダッソーが受注し、納入する事になった。しかし残り90機の発注までは頓挫し、空軍におけるラファール導入はこれで終了してしまった。
一方で、海軍が空母ヴィクラントで運用する艦上戦闘機としてはラファールMが採用された。
エジプト
エジプトでは2015年2月に24機の購入計画が無事結ばれたが、フランス空軍向け製造分から一部機能をオミットして回してもらう形を取った事で、わずか約半年後に3機納入された。さらにダッソー側はF-16の代替となる126機の追加契約を希望していたが、2021年に追加導入が発表されたのは30機であった。
カタール
カタールでは2015年4月に24機採用されることが明らかにされたが、実は2010年頃に購入を検討したことがあった。そのときは立ち消えになったが、結果5年越しでの購入実現となったのである。
ちなみに、戦闘機戦力の拡大を図るカタールは、ライバルのユーロファイターやF-15QAも同時に採用している。
ギリシャ
2021年1月、ギリシャ政府とダッソー社がラファールCの売買契約を結んだとの報道がなされた。売却機数は18機で、うち12機はフランス空軍の現有機から「即納」、6機が新造とされた。
クロアチア
2021年にフランス空軍の余剰機12機の導入を発表。
旧ユーゴスラビア圏で東側製の航空機を主に使用してきたクロアチアは過去にフランス製戦闘機を導入した事がなく、初めて「お得意先」以外からの受注を得た事になる。
UAE(アラブ首長国連邦)
2021年12月、UAEは最新型のラファールF4の80機導入を発表した。この数は今までで最大の契約で、納入完了の暁にはフランス本国に次ぐ世界第二のラファール配備国になる見込みとなっている。
ゲームでの採用
こちらでは早くから割と恵まれており、エースコンバット等によく登場している。フランス国内向けのパッケージでは表紙イラストの主役機がF-22等からラファールに差し替えていることも。
登場するのは制式型(ラファールC・M)の筈なのだが、ラファールAのような塗装(黒)で登場したりする。もちろん艦上機なので空母にも発着できる。
エースコンバットシリーズでは初代より登場しているが、米国式コードネームに合わせる為かR-C01なる独自のコードネームを与え、ラファールとは呼称しなかった(これは同社のミラージュ2000も同じで、MIR-2000という名義を使っていた)。C型の登場は初代のみで、『エースコンバット2』や『エースコンバット04』ではM型をR-M01と表記した。『エースコンバット5』以降の作品ではダッソー社から航空機名使用許諾のライセンスを取得しているため、正式名で登場させることができるようになった。