斎藤一(るろうに剣心)
さいとうはじめ
「お前の全てを否定してやる…。」
「犬は餌で飼える、人は金で飼える。だが、壬生の狼を飼うことは何人にも出来ん!」
言わずも知れた、京都守護職会津藩傘下新撰組の三番隊組長「斎藤一」その人であり、幕末における緋村剣心の宿敵の一角。幕末から数々の死地を潜り抜け生還していることから新選組で唯一不死身と呼ばれていた。
維新後は「藤田五郎」と名を変え、警官となっており、現階級は警部補であるが、警視庁の密偵でもある。初登場時にはかつての上司・土方歳三が売り歩いていたとされる石田散薬を売っていた。
原作者がデザインした花札では剣心、比古、志々雄、宗次郎、縁と共に最強系の1人として挙げられた。
剣心皆伝のパラメーターでは以下のように記述されている。
三番隊組長時代 戦闘力5・知識知恵4・精神力4・カリスマ3・個別能力したたかさ5
警察官時代 戦闘力5・知識知恵4・精神力5・カリスマ3・個別能力悪即斬5
史実の斎藤一は剣の流派は不明(無外流とも言われる)だが、一応今作において斎藤は溝口派一刀流であるとファンブックにて記されている。
非常に冷徹で無愛想な一匹狼。口癖は「阿呆(あほう)が」。弥彦からは「殺人鬼みたいな目つきの男」(斎藤を探してその辺の人に尋ねた際の紹介)と称れている。
己の信念でもある「悪・即・斬」を絶対の正義としており、これに反する者はたとえ政府高官であろうと容赦なく粛清するのが「明治を生きる新撰組の務め」だと考えている。
京都へ行く前に引導を渡そうとしたのもあり、相楽左之助から一方的にライバル視されていたが、京都での終盤に彼が炎の中に姿を消してからは「倒す」のでなく「超える」対象となった。
剣心(緋村抜刀斎)とは幕末の頃から因縁があり、お互いを好敵手と認めあう関係でもあり、いつかは決着をと望んでいた。しかし物語の終盤、剣心が「飛天御剣流が撃てなくなる前に決着を」の意図をよそに、剣心が「人斬り抜刀斎」では無くなってしまった事実を悟り、戦う価値も意味が無いと決戦を拒否した。
本編で明治11年に再会した当初は、その性格故に剣心からも「仲良くやれる奴ではござらん」と距離を取られつつも、共闘を通じて「宿敵だが心から信頼できる仲間でもある」と思われるようになっていく。実際、単に冷徹なだけではなく無愛想に皮肉混じりながらも、他者への気遣いを見せる場面も少なくない。また、斎藤自身も剣心から「信頼している仲間」と見なされても、無言のまま否定しなかった。
配下の警官達が宇水に殺された際も、一見クールに「死んだ者が安心してあの世へ行ける様、残りの任務を完遂せんとは思うが復讐のつもり等毛頭ない」と割り切る姿勢を見せつつも配下たちのことに触れている。
こう書くとドライに見えるが、部下の遺族の栄次を引き取ったり、言葉は悪いが無用に命を散りそうな弱者は関わらせないか、関わったなら自分の近くにいるよう忠告するなど、わかりにくいけど人命の軽視はしていない。死者より生き残った者にリソースを割くべき、と言うスタンスを極端な形だが実践しているに近い。
蕎麦が好きなようで、『人誅編』にて沢下条張との待ち合わせの場所を「蕎麦屋」としか伝えなかった上に、実際に居たのは蕎麦の屋台だったので彼を閉口させていた。
ヘビースモーカーとして描写されており、舶来物の紙巻タバコを吸っている。
明治に密偵として神谷道場を訪れた際は、改名後の「藤田五郎」を名乗っており、当初は眼を細くして温厚な話し方をしていた。
(ヽ^ゝ^)<ちわー
薬売りとして神谷道場に来た際には、左之助から細い眼に関して追求された時には、笑いながら「この眼は生まれつき」と宣っていた。
その後に薬屋でないことがバレると刀を抜いて対峙。撃退するべく殴りかかってきた左之助の拳をものともせず、あっさり返り討ちにする。
更にその際の牙突で神谷道場の壁に大きな穴を開けた。……警察官としては少々いかがなものかと思うが、これに関して薫がどのように思っているのかは不明。
なお左之助に関しては自身が瀕死の重傷を負わされたことを既に水に流しているらしく、斎藤の強さに対抗心を抱きつつも漫才を繰り広げたりするなど(ある意味では)すっかり打ち解けている。
剣心、左之助、張 、弥彦、蒼紫らからは「斎藤一」の名で呼ばれており、同僚の川路、浦村、新市らからは「藤田五郎(警部補)」の名で呼ばれている。
幕末の動乱を生き延びた実力者であるが、その自負が強過ぎる故、初見の相手を見下し舐めて掛かる悪癖と化しているのが難点。
ストーリー上、最強クラスの敵でなければ「確実なる勝利」は重ねているが、その性格から慢心の隙を突かれたり、牙突の性質を見切られて反撃を食らい重傷を負う場面も多く、客観的には『痛み分けの勝利』に終始するケースも少なくない。
やはりか当然か再登場。
実は、本編終了時から今回の黒幕劍客兵器についての調査を命じられていたらしく、五年かけてようやくそのしっぽを掴んだ。それとほぼ同時に現れた凍座白也と交戦。刀と左腕を負傷するものの一歩も引かない姿勢を見せ、結果としては捕縛に成功した。
- 実際にはその際に居合わせた三島栄次の闘気に凍座が興味を示して、投降した。
その後は劍客兵器に対する北海道の実働部隊の隊長を担う事になり主に永倉新八、三島栄司と行動を共にする。
また剣心の事は『抜刀斎』から『緋村』と呼び方を変えている。
今作では最初の戦いで愛刀を全て失っており、その為、全力で戦うことが出来ないという剣心とは違った理由である意味弱体化している。
- 官憲仕様の刀では最も威力の弱い牙突・四式でも砕けてしまう。
新たな刀を調達しようにも牙突との相性の良い条件を持つ刀が見つからないことから、「馴染むのが無い」と言い、腕の負傷もあって剣心や永倉には「気長に探す」と語っている。
相変わらず「悪・即・斬」を自らの正義として胸に秘めているが、元新撰組隊士にして御陵衛士の阿部十郎からは「ひょっとして今でも「悪・即・斬」とか言ってる?」「まだまだ青春真っ只中」と皮肉を込めて吐き捨てられている。また、阿部が新撰組を恨む理由の一つである、油小路事件で敵として戦った服部武雄からの「今まで斬り捨ててきた相手は、果たして本当に悪だったのか?」という問いにも答えが出せていない。
- 斎藤と永倉が二人がかりでも相手にならないという常識はずれの強さだけでなく、極めて優れた人格を持つ服部だからこそ斎藤と永倉の心に残り、斎藤が「悪・即・斬」の信念を今後どう昇華させていくのかというテーマの一つになっている。
5年ぶりに再会した剣心は、斎藤に東京の頃とは何かが違うと感じていたが、後にこの考えを剣心から聞いた永倉は「変わったのは斎藤では無くて、人斬りではなく不殺になった剣心」だと言われており、斎藤は幕末の頃から全く変わってないと言われている。
斎藤自身が自覚していることではあるが、「揺るぎない信念を貫き続ける」ということは裏返すと「過去を引きずり続ける」という行為でもあり、前向きな生き方とは言い切れないものである。かつての宿敵や同志達が良かれ悪しかれ「変わっていく」中で、斎藤だけは名前や姿を変えても、宿敵との再々会が永遠に出来なくても、愛刀を全て失っても、自身の信念は変わること無く、壬生の狼のまま「悪・速・斬」を貫き通しており、幕末の頃から全く「変わらない」ままである。剣心と永倉は斎藤と同じく、変わる時代に抗い続けて、変わることなく最後まで士道を貫き通した果てにたどり着いた結果が散華と言う、土方歳三とは同じ生き様も死に様もしてほしく無いと思っている。劍客兵器との激化して行く闘いの中で、斎藤はこの点を否応なしに突きつけられることとなる。
永倉や栄次らと共に札幌での実験戦闘を止めるも、その後、かつて自身が殺し小物と下した男の関係者の襲撃を受けてしまい、それによって凍座との戦いで負傷した左腕の傷が開いてしまったことと、未だに斎藤に見合う新たな刀が手に入らない状態でもあることから、永倉の決断で斎藤は腕の治療に専念させて一時的に戦線からの離脱する状態になっている。
無銘の日本刀
幕末の頃からの愛刀。永倉曰く新撰組が結成して間もない時分に、京都の夜店で見つけた掘り出し物の刀であり、その夜店で斎藤は二振り購入したが「一本は局長に差し上げた」と本人は語っている。それを聞いた永倉曰く「これぞ虎徹に間違い無いと信じ込んでたアレ」。
史実での斎藤の愛刀とされる鬼神丸国重と関孫六は別の刀であり、二本とも所有していたが斎藤が両方ともそれぞれ会津戦争と西南戦争にて失ったと語っている。(PSP『再閃』では斎藤の武器として無銘の日本刀と、鬼神丸国重が別に登場する)。
剣心との戦いで返した逆刃刀で両断されてしまった。
PSPゲーム「再閃」では、初期装備の武器として登場した。
業物の日本刀
剣心に折られた愛刀の代わりに調達。
銘は不明だが、八ツ目無名異との対戦時に「化物の血で錆び付かせるには惜しい代物」と発言しているので業物ではある。後に凍座との戦いで素手で粉砕されてしまった。斎藤が所有している最後の刀であり、凍座との戦いで粉砕されてから新たな日本刀を調達しようにも、後述の牙突を完璧な威力で放つのには刀にも条件があることから「手になじむものがなかなかない」とのことで新たな刀の調達には難儀している。本人は気長に探すと語っており、札幌での劍客兵器との戦闘では官憲から支給された刀を使ったが、牙突を一度放っただけで破損した。
キネマ版での愛刀
鎺の部分が長方形状に突出しており、そこに「悪・即・斬」の銘が彫られている。
幕末時代に、牙突・零式と剣心の天翔龍閃(てんしょうりゅうせん)との打ち合いで粉々に砕ける。明治時代では、同じ悪・即・斬の銘が彫られた刀を携帯している。
牙突
刺突の極地にも等しい斎藤独自の必殺技。
右手を前に突き出し、刀を持つ左手を後ろに引いて、刃を地面に水平に構えた状態で猛烈な速度で突進して突きかかる、平刺突(ひらづき)を絶対の必殺技にまで昇華させた、桁外れの威力の左片手平刺突(左片手一本突き)。避けられても即座に横薙ぎの攻撃に移行できる。平刺突の考案者は新撰組副長土方歳三で、かつて新撰組隊士だった鵜堂刃衛も、剣心との対決で片手平刺突を使用する。
斎藤は牙突以外の目立った技を持っていないが、それは「戦場では同じ相手と二度以上相対することはきわめて稀であり、見切られる心配をして多数の技を考案するよりもおのれの得意技を徹底的に磨き上げ、戦ったその場で相手を一撃で確実に仕留める方が合理的である」とする理論に基づく。剣心は自身が知り得る最強の突き技であり「拙者を突き殺すつもりなら牙突を超える技を撃ってこい」と言い切る程で、一度牙突を受けた左之助曰く「九頭龍閃に匹敵する」とのこと。キネマ版での剣心からは、「その速度は射矢よりも速く、その精度は弾丸をも貫き、その威力は砲弾をも砕く」と評されている。
突進術である故に視界が狭くなり、軸とする右手側から回り込んで間合いの外から攻撃すれば、横薙ぎの攻撃も届かず反撃できない弱点もあるが、斎藤の剣腕さえあればその弱点もいくらでも克服可能(例として青龍戦では、右手を突き出して顔面を抑えた上で零式に繋いで破った)。剣心曰く、「牙突を返したぐらいで斎藤を倒せるのであれば、幕末で戦った時に決着は既に付いている」との事。
牙突の威力による刀への負荷は尋常では無く、自身が選んだ刀でなければ、一撃打っただけで刀身がへし折れてしまう。また永倉によると、牙突を完璧な威力で放つには『威力を正確に伝えられる"浅い反り"と十全に伝えられる"身の厚さ"を併せ持つ、選び抜かれた刀身』を持つ刀で撃つ必要がある。その条件に合わない刀の場合、牙突の負荷に耐え得る刀だったとしても永倉曰く「唯の強力な左片手一本刺突」とのこと。
史実の斎藤の得意技「左片手一本突き」を少年漫画風にアレンジしたもの(作者談)。史実でも片手平突きからの横薙ぎの戦術は、新撰組隊士に伝えられている。
実写映画版でももちろん使用
第1作目では剣心と戦った際には使用せず、武田観柳邸のシャンデリアを破壊する際に一度だけ使用される(おそらく三式)。
第2作目となる『京都大火編』では冒頭で志々雄に対して使おうとしたが、構えただけに留まる。
第3作目『伝説の最期編』では海岸で襲いかかって来た宇水を倒す際に使用され、煉獄の内部で志々雄にも何度か放つが通用しない。
第4作目『The Final』では縁相手に構えるもの降伏したことで不発。その後大量のモブ相手に使用し最終バトルの乾天門戦では零式で吹き飛ばした。
第5作目となる『The Beginning』では池田屋で使用し建物と敵数人を零式で吹き飛ばした。
キネマ版では回想での抜刀斎戦でしか使用せず、外印との戦いでは敢えて殺さないようにする為に右片手平刺突を使用する。
下記のように、状況や間合いに応じた型分けがある。
- 牙突・壱式(がとつ・いっしき)
通常の牙突。劇中で最も多く使用された。
片手で放つ以外は通常の平刺突を同じ性質を持ち、刀ではなく拳を放つ無刀版も存在する。
飛天御剣流最速の突進術「九頭龍閃」に匹敵する突進力を持ち、その威力は鋼鉄の扉ですら一撃で粉砕する。
- 牙突・弐式(がとつ・にしき)
斜め上から突き下ろす形の牙突。別名正真正銘の牙突。
アニメでの志々雄との対戦時は、高く跳躍してから使用する。
- 牙突・参式(がとつ・さんしき)
対空迎撃用の牙突。別名対空の牙突。上空にいる相手に向かって下から突き上げる。
神谷道場での剣心との戦いで使用。アニメでは志々雄に対しても使用する。
- 牙突・四式(がとつ・ししき)
瞬撃特化の牙突。北海道編で初登場。初動を最小限に抑えた無拍子状態から、最短・最速の一撃を放つ。この際、刃と峰がほかの型とは逆向きとなるのも特徴。他の型よりも瞬発的に繰り出せる利点がある分、威力では最も劣る。
- 牙突・零式(がとつ・ゼロしき)
間合いのない密着状態から、上半身のバネのみで繰り出す牙突。アニメ版では体を回転させて加速を付ける動作が加わった。まともに決まれば相手を胴から真っ二つにする破壊力を誇る。壱式を受け止められた際の追撃にも用いられる。斎藤はこれを「抜刀斎と決着をつける時のとっておき」だと宇水に語る(しかし剣心との対決の機会がなく、結局使用はされなかった)。
京都編での宇水との戦いで初使用しトドメを刺すが、志々雄には初見で回避され反撃を受ける。人誅編での八ツ目との戦いでは、手加減をした状態で使用するが、それでも左腕を完全に粉砕した。暴走した鯨波にも使用したが、持ち前の体躯による頑丈さに加えて、既に精神が肉体を凌駕していた為に平然と起き上がってきた。
OVA『新京都編』では志々雄に繰り出すも、原作と同じく鉢徹に防がれるが、その後の剣心との対決の際にはこの時の一撃が勝負の行方に影響を与える。
キネマ版では新撰組時代に剣心の天翔龍閃(てんしょうりゅうせん ※キネマ版での振り仮名)の迎撃の為に使用し、互いに刀が砕けて引き分ける。
- 牙突・六刃(がとつ・ろくじん)
PS2『炎上!京都輪廻』でのみ使用するオリジナル技。
超高速で敵に接近し一瞬で牙突の六連撃を繰り出す。技の性質は九頭龍閃に酷似している。
所帯持ちなのは史実の通り(作中では触れられていないが作中、明治11年の時点では既に長男・勉も生まれている)だが、剣心と操がそれを聞いて有り得ないレベルで驚愕し、斎藤の奥さんの時尾をたいへんな人格者だろう(でないと務まらないという意味)と評しており、弥勒菩薩像の様な想像図を思い浮かべていた。
尚、赤間倭子(著)の『新選組副長助勤 斎藤一』では、編集者の勉強不足から帯(帯紙)に「人気漫画「るろうに剣心」の主人公、新選組最強の剣士、斎藤一の激動の生涯を描く」と記され、ネットでは一時総突っ込みとなっていた。本自体は真っ当な本だけに作者はとんだ迷惑である。
人気の高いキャラであるが、原作者から見て失敗したキャラクターの1人と認識されている。
その理由は「コイツの前ではどんな強敵もザコに見えてしまい相手の格が下がってしまう」から。まぁ史実の人だから仕方ないね。
実写版映画で斎藤を演じた江口氏は口癖の「阿呆が」をたいへん気に入っており、『最終章 The Final』では乾天門を撃破した直後にアドリブで入れたものの、尺の都合であえなくカットされたとのこと。
旧アニメ版では人誅編が放送されなかったので京都編終了後は登場しない。
新アニメ版では志々雄一派との戦いが始まる直前のエピソードで第1期が終了したため、斎藤がラスボスとなった。
あまりにも印象が強過ぎて、斎藤一と聞くとこの剣心に登場する斎藤をイメージする人が多く、斎藤一と妻の高木時尾(藤田時尾)との夫婦イラストには、剣心の斎藤が描かれている場合が多い。
フタエノキワミ、アッー!シリーズにおいては、ゲイの警官としてその名を轟かせている設定。(主に『濃厚なヤツが射精るぞ!アッー☆』『ゲイの警官だブロックしろ!』『レイプする、サノ好きだから☆』等の空耳が原因)。
また、英語版では発音の都合で牙突が「ガトチュ」と聞こえてしまったから、ガトチュが彼の通称として使われる場面も。
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