概要
「ターザン」シリーズの作者であるバローズの代表作にして、彼のデビュー作。主人公のジョン・カーターが突如火星へと瞬間移動し、そこで見たことも無いような生き物や火星人相手に大立ち回りを繰り広げ、ヒロインである絶世の美女:デジャー・ソリス王女とのロマンスと言った恋と冒険を描く。
何よりも特筆すべきは、この作品が1912年ーつまり、今から百年も前に発表された。と、言う点だろう。この作品がなければ、著者のもう一つの代表作である「ターザン」はおろか、後にぞくぞくと登場するヒロイック・ファンタジーやスペースオペラ、そして様々なSF作品も存在しなかったと思われる。
事実、本作の実写映画「ジョン・カーター」が出来るまで、何度も映像化を試みたが、その度に頓挫。また、ジョージ・ルーカスも、ジェームズ・キャメロンもこの作品がなければ、「スターウォーズ」や「アバター」を製作していなかっただろう。
作品のスタイル
本作は主人公であるジョン・カーターが火星で体験した出来事を記した手記という形式をとっており、一人称小説として書かれている。第3作『火星の大元帥カーター』までは3部作として構成され、ジョン・カーターが主人公、デジャー・ソリスがヒロインを務めている。後のシリーズでは、彼らの子供や別の来訪者が主人公となったが、後期の作品では、ジョンが主人公に復帰している。
あらすじ
著者であるバローズの叔父にあたる、元南軍騎兵大尉:ジョン・カーターが突然亡くなった。遺言により、叔父の埋葬と遺産を管理することになったバローズは、次のような手記を手にした。
南北戦争終結後、ジョンは元戦友と共にアリゾナに金鉱脈を探していた。だが、その途中でアパッチ族の襲撃を受け、ジョンはある洞窟へと逃げ込む。すると、そこで彼の意識は肉体を離れ(幽体離脱)、着いた先はなんと地球から遠く離れた火星だった!
折しも、火星(バルスーム)は地球人によく似た「赤色火星人」や人間より大きい4本腕の「緑色火星人」など、様々な種族がそれぞれの帝国や部族を築き、文字通り群雄割拠する戦国乱世の時代だった。重力が地球より小さい火星では、超人的な身体能力となったジョンは縦横無尽の大活躍を繰り広げるのであった。
主な登場人物
ジョン・カーター:主人公。突如火星にやって来た、バージニア州の元南軍大尉。剣の達人。
デジャー・ソリス:ヒロイン。赤色人の国:ヘリウムの王女。絶世の美女。
タルス・タルカス:緑色人の部族:サーク族の副首領→首領。ジョンの無二の親友。
ソラ:サーク族の娘。ジョンやデジャー・ソリスの世話役。実はタルス・タルカスの娘。
タル・ハジュス:サーク族の邪悪な皇帝。後にタルス・タルカスにその座を奪われる。
カントス・カン:ヘリウム国の海軍士官。ある時、一緒に捕虜となった縁でジョンの友人となる。
サブ・サン:赤色人で、ヘリウムの敵国・ゾダンガの王子。デジャー・ソリスに想いを寄せている。
ウーラ:火星の犬に相当する生物:キャロット。10本脚で、ジョンの愛獣。
日本語版
様々なスタイルで出版されているが、中でも「創元推理文庫版」の武部本一郎氏が表紙と挿絵を担当したのがファンの間では、決定版と言われている。