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タヌキだってがんばってるんだよォ


作品解説編集

原作・監督・脚本は高畑勲

1994年7月に東宝の配給で公開された。

杉浦茂の『八百八狸』の影響を受けての制作とされている。


主人公正吉を中心にデフォルメされた達の群像劇である。

開発が進む東京都多摩ニュータウンを舞台に、その一帯の狸が長く忘れられていた変身術である「化学(ばけがく)」を駆使し、四国佐渡から高名な長老狸を招いて人間に対し抵抗する様子を描く。


スタジオジブリ初のCG実写を一部に使用した作品でもあり、アヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリを獲得した。

キャラクターナレーションの語り口はコミカルながら、自然破壊という重いテーマを扱っておりメッセージ性は強い。

しかしながら出演した咄家等による軽妙なプレスコは秀逸で、キャラクターがいきいきと描かれている。

さらにアニメの利点をフルに活かした、文字通り変幻自在の妖怪パレードは圧巻である。


高度経済成長期の時代に生きる狸達が空回りしつつも生き延びるため必死に頑張る有様は、側から見て面白く、そして悲しくもある。

物語はコミカルな序盤から次第にシリアスな展開を見せ、クライマックスでのかつての里山の大幻影の展開を経てわずかながら救いを感じさせるラストへと向かう。


主題歌は、上々颱風(シャンシャンタイフーン)の『いつでも誰かが』が採用された。


あらすじ編集

かつて東京都郊外の多摩丘陵は緑あふれる里山として豊かな土地であった。

しかし高度経済成長の波にのまれて豊富な自然はニュータウンの建設によって大部分が開拓され、そこに住んでいた狸達も残った僅かな住処を巡って争うようになっていった。

そのような中で火の玉のおろく婆の警告により、彼らはいよいよ自分たちの生存が危うくなっている事に気づく。

狸たちは族長会議の末に「化学」の復興による変身術の習得により、人間たちを脅かして多摩丘陵から追い払う計画を建てる。


だが元来呑気でお調子者なタヌキ達には様々な困難が立ちはだかるのであった。


主な登場人物編集

本作品の狸達の形態は、本来の動物の姿の「本狸」、メイン形態の「信楽ぶり」、後述の気の抜けた状態の「杉浦狸」に分類される。

これらはあくまでも狸や視点の描写であり、変化をしない限り人間達には「本狸」にしか見えていない。


  • 正吉

CV:野々村真

本作品の主人公で、本名は影森の正吉。

落ち着いた性格で変化も得意。

父親の影響で人間に対する見識が深く、穏健派として若狸たちの実質的なリーダーとなる。

最終的に人間界に移り住み一般サラリーマンとなる。


  • おキヨ

CV:石田ゆり子

本名は縁切り寺のキヨ。

作中で正吉の妻となり4匹の子どもにも恵まれる。

人間界への移住後はスナック店員となる。


  • 鶴亀和尚

CV:5代目柳家小さん

ぼたもち山万福寺に住み着く老狸。

年齢は105歳で多摩の狸の最長老。

最終的に人間の僧侶として生活する。


  • 火の玉のおろく

CV:清川虹子

鶴亀和尚と並ぶ多摩の狸の女重鎮。

人間文化と化学に精通しており、若手を指導する。

最終的には人間の占い師に転身する。


  • 権太

CV:泉谷しげる

本名鷹ヶ森の権太。

鷹ヶ森エリアの血気盛んな若大将で、作中で最も人間を激しく憎んでいる。

最終的に過激派の同志と共に拳銃を持つ機動隊ダンプカーに捨て身の直接攻撃を仕掛け、壮絶な最期を遂げる。

終盤で人間界に移り住んだ愛妻のお玉が、正吉達と一緒に彼のものと思われる墓を訪れていた。


  • 青左衛門

CV:三木のり平

鈴ヶ森の長老。

序盤では敵対関係にあった権太と和解し、慎重派として過激派や急進的な戦略案を何度も引き止める。

終盤では人間の不動産屋として成功しているが、後発ながら地元の宅地事業に携わっているため正吉に呆れられている。


  • ぽん吉

CV:林家こぶ平(現9代目林家正蔵

正吉の幼馴染で、訓練を受けたものの変化術を習得できなかった。

人間たちをそこまで恨んではおらず、人間の食べ物を好みつつ元来の狸らしい生活をしたいと思っていた。

開発後も普通の狸として生き残り、家族や仲間と夜のゴルフ場で宴会をしていた時に仕事帰りの正吉と再会する。


  • 文太

CV:村田雄浩

熱血タイプの若狸で、本名水呑み沢の文太。

高名な二つ岩団三郎狸をたずねて佐渡島へ旅立つが、現地でその長老の死去を知る。

多摩に帰還後は人間として暮らしており、権太達の墓参りをしていた。


  • 玉三郎

CV:神谷明

本名鬼ヶ森の玉三郎。

狸としても変化した人間としてもイケメンな若手で、四国の長老達の元へ派遣される。

そのうちの六代目金長の娘の小春と結婚し、人間の宮司としても七代目を継ぐ。


  • 佐助

CV:林原めぐみ

眼鏡をかけた一見インテリ風の若狸。

変化の試験では怖がりで鈍臭い様子も見られた。

現在は人間として暮らしており、権太達の墓参りをしていた。


CV:3代目桂米朝

徳島県小松島市にある金長大明神の主で、普段は人間の宮司を務める。

玉三郎から多摩の狸たちの窮状を聞き、屋島の禿、松山の刑部とともに駆けつける。

地元で長年崇拝を受け続けてきた経験から、変化の力を見せつけることで人間の狸に対する畏敬を取り戻せるとして妖怪大作戦を指揮。

敗戦後は娘婿の玉三郎と共に郷里へ帰って行った。


CV:5代目桂文枝

香川県高松市屋島に住む長老狸。

年齢は999歳で、屋島の戦いを生で見物していたという。

妖怪大作戦の失敗後は踊り念仏の教祖となり、最後は宝船に化けて信者の狸達と共に入水自決を遂げた。

勘違いされやすいが、精神錯乱を起こしたりボケたのではなく、他の土地には他の土地のタヌキ達しか生きていける余裕がなく、並のタヌキ達にはもはやどこにも行く場所がなく最終的には死ぬしかないと悟ったうえで、なるべく死の恐怖を和らげるために踊り念仏を始めたのである。

那須与一のシーンは源平合戦の最後を示唆するフラグで、四国でも行われていた補陀落渡海に通じる描写も同時に込められたシーンであると推測するファンもいる。


CV:芦屋雁之助

愛媛県松山市の長老狸で、八百八狸を統率している。

江戸時代には松山藩の御家騒動に関与した。

強力な神通力の持ち主で妖怪大作戦の大変化を繰り広げるが、高齢も相まって力尽き命を落とす。

狸たちの未来を守るために命を賭した献身を称えてからなのか、落命の際には来迎があり浄土に向かったと思われる。


  • お玉

CV:山下容莉枝

権太の妻。

夫を深く愛しており、彼が重傷を負ったときにも献身的に看病。

その最期を迎えた際は泣き崩れ、普段を人間として暮らす現在も権太の墓参りを続けている。


  • 竜太郎

CV:福澤朗

多摩の堀之内地域に住んでいた変化できる狐。

狸と同じく住処を失い、仲間の狐達と人間の姿で高級クラブを営んでいる。

金長に接触して、生き残るには人間に化けて暮らすしかないと説く。

その一方で妖怪パレードの「キャスト」達を探していた遊園地経営者に、従業員として狸達を斡旋しようとしていた。


  • 語り(ナレーション)

CV:3代目古今亭志ん朝

序盤から活弁士のような語り口で、狸達の戦いとニュータウン開発史を解説。

終盤でその正体が過去を回想する正吉の心の声である事が明かされる。

その際は口調は丁寧な「ですます調」に変わり、開発の良い変化や仲間達の動向を語った。



余談編集

妖怪パレードのシーンではナウシカトトロキキポルコ・ロッソなどのジブリキャラがカメオ出演しており、正吉達の変化の実技訓練中に前を横切る本屋のガラス戸には海がきこえるのヒロイン武藤里伽子のポスターが貼られている。


妖怪漫画の権威である水木しげるも制作に協力しており、釣瓶落としべか太郎なども同氏のデザインをベースにしている。作中ではニュース番組のコメンテーターとして本人役(CV:藤本譲)も登場。

  • ちなみに高畑勲は2期鬼太郎で狸妖怪足まがりの回を担当していて、鬼太郎のあしまがりの話も本作と類似した要素をいくつか持つ。

平成から新元号『令和』に移り変わる2019年4月5日にテレビ放送され、文字通り「平成の終わり」を見届ける作品となった。


なお、現実世界の多摩ではキツネやタヌキ達が数十年の時を経て逆転しつつあるという話もある。



関連項目編集

スタジオジブリ アニメ映画 高畑勲

/タヌキ ニュータウン 里山

多摩 多摩市 八王子市

ゲゲゲの鬼太郎 徳間書店


平成キツネ合戦

特撮テレビドラマ『忍者戦隊カクレンジャー』のサブタイトルの一つ。

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