四国東部、特に讃岐(現在の香川県)において言い伝えられている、伝説の化け狸。屋島禿狸(やしまのはげだぬき)とも称する。
四国八十八箇所84番屋島寺(本尊・千手観音)の御使いにして守護者(要は神様)たる神聖なる偉大なタヌキである。
別名(神名)は蓑山大明神。屋島寺内には簑山大明神を祀る摂末社があり、その横には威厳も高い大きな太三郎狸夫妻の彫像がある。
その事もあり、香川県内では「仏の使い」または「土地(国)の守護神」として、非常に深い崇敬を集めている。
佐渡の団三郎狸、淡路の芝右衛門狸と共に「日本三大狸(日本三名狸 / 日本三大名狸)」として知られ、伊予の隠神刑部狸や阿波の金長狸と共に「四国三名狸」にも数えられる。
四国狸の総大将と称される。
伝説
実は他所の化け狸(それこそ団三郎や芝右衛門ら)のような「自身の幻術で人間に対して(シャレのキツい)迷惑な悪戯を行う」ような伝承は、あまり聞かない。むしろ探す方が難しい。
さらに言うと他地域(特に愛媛県や徳島県)での狸伝説では騙される側として描かれたりする。しかし、それらにおいても騙した側は「狸としての純粋な技量では敵わないから悔し紛れに口八丁手八丁で策を講じて姑息な罠にハメた」という展開である事が多く、むしろ太三郎狸の素直さと人徳と妖術の力を称える見方も出来る話ともとれる。
屋島に迷った鑑真と空海を助け、その徳により感銘を受け、のち自ら修業をもって屋島寺に学堂を開き、四国ひいては全国のタヌキたちに対し、人に仇なす存在であった彼らを「タヌキこそが仏道に則る神仏の使いたる民草の人々の守護者となる」ように教育(仏徳)を広めたとされる。太三郎に宿った四国の総大将にまで至らしめた大きな力は、この神仏に通じた正しき徳によるものとされる。
日本一の変化術の使い手と言われ、源平合戦の再現のような大きなフィールドを要する幻術も易々と正確に使いこなしたと言われる。これをもって若き狸たちや、屋島の仏僧たちに諸行無常の教えを授け続けたという。
先祖は平家の守護狸であり、源平合戦で敗れた平家の落ち武者たちを、阿波・讃岐の山中へと隠して、彼らが「隠れ里」を興すのを助けたとも言われる。
また類を見ない愛妻家として知られる。まだ通い婚だの一夫多妻だのが横行していた中世封建の時代に、太三郎は一夫一婦の契りを神仏をもって妻に固く誓い、何よりも妻を大事にしたと伝わる。その事もあり、簑山大明神は「縁結び」「子宝授受」「家庭円満」の神威を持つとされる。
のち不慮の事故から猟師に撃たれて命を落とすが、その魂は神威を持って阿波(現在の徳島県)の霊峰に至り、ここでもまた四国の人々の守護のために尽くした。
阿波狸合戦では、双方の総領が死してなお対立する金長狸と六右衛門狸の各派閥に対して和解の仲裁を行った。六右衛門狸の息子、千住太郎こそが諸国漫遊の修行の末、屋島の学堂に学んだ太三郎の弟子であったという。
なんと日清戦争や日露戦争でも部下を率いて満州で活躍したという伝説があるほど。