概要
食肉目イヌ科タヌキ属の哺乳類。
タヌキを題材としたイラストやフィクション、日本文化における扱いなど文化的側面については「狸」の記事に譲り、ここでは生物学的側面について説明する。
分類
イヌ科の哺乳類で、東北アジア地域に生息している。日本では「ニホンタヌキ」が生息し、本州・九州・四国に生息する「ホンドタヌキ」と北海道に生息する「エゾタヌキ」の2亜種に分かれる。ホンドタヌキは冬でも活動するのに対しエゾタヌキは冬ごもりするなど生態に違いはあるが、種としては同種である。
満州には「ウスリータヌキ」、華南には「ビンエツタヌキ」、朝鮮半島に「コウライタヌキ」が生息する。このうちビンエツタヌキは1920年代後半のソビエト連邦で(毛皮目的で)捕獲、養殖したものの一部が脱走し、ヨーロッパ東部へ生息域を広げている。
そのため一部で「日本のタヌキが外来種としてヨーロッパで猛威をふるっている」と思われているが、実は日本のタヌキは大陸のタヌキと染色体の数が異なり交配ができない。大陸のタヌキとは頭骨の長さなど形態的な違いもあり、日本固有種として「ニホンタヌキ」と呼ぶことが提唱されている。
英名はラクーンドッグ。そのまんま「アライグマに似た犬」の意。学名Nyctereutes procyonoides
のプロキノイデスも一応アライグマを指す(CYNO は「イヌ」の意)。ちなみに似ているのは見た目だけで分類は全く異なる。
生態
森林に住み、特に水辺を好む。基本的に単独もしくはペアとその子供の家族で生活する。縄張り意識はほぼ皆無であり、複数の群れの行動範囲が重なるどころか、全く同じ場所に「ため糞」をしていることも多い。
ため糞が群れ間の情報交換に役立っているという説もある。
ため糞の場所にはかなりこだわりがあり、ちょっとやそっとでは変更することはない。有刺鉄線や薬剤で囲ったとしても断固としてガードを突破し糞をしようとするため、食害と並んで深刻な獣害になったりもする。
雑食性で、果実、植物の葉、小動物、魚介類、腐肉やゴミなどなんでも食べる。夜行性で死んだふりをするため、「狸寝入り」という言葉ができた。近年、アライグマとの競合により個体数を減らしているホンドギツネに比べ、タヌキは食性が幅広く人工的な環境への適応力に富んでいるためか個体数を増やしているようで、山林が近くにあれば都市部にも普通に出没する。
形態的には、胴長短足の体形など、イヌ科動物の原型をよく残している。狭いところを好むのでネコっぽいイメージがあるが、運動能力はネコよりイヌに似ている。鈍重そうなイメージと裏腹に足はかなり速い。木登りはあまりうまくなく、足を滑らせて「木から落ちる」姿がしばしば目撃される。泳ぎはイヌと同様、基本的に「犬かき」で泳ぐ。
余談
日本ではなじみ深い動物だが、上記のように東アジアの一部にしか生息していないこともあり、実は希少動物に数え上げられている。
どれほどなのかというと、2010年に旭山動物園と久留米市鳥類センターがタヌキのペアをシンガポール動物園に贈ったところ、「パンダ並みの珍獣」と評され、冷暖房完備の専用舎が用意された上、歓迎式典までが開かれた程。
(更に2013年には、いしかわ動物園に世界三大珍獣にも数えられるコビトカバを入手する際にシンガポール動物園と相談したところ「タヌキとの交換」を持ち掛けられ、結果タヌキ6頭とコビトカバの交換が成立してしまった。)
関連タグ
表記揺れ
仲間
【実在の動物】
動物 哺乳類 食肉目 イヌ科
ケモノ キツネ 猫 鼬 アナグマ アライグマ ムジナ ハクビシン
狢 ※アナグマの別名、狸と混同されている。
山猫 ※中国語で「狸」は山猫のことである。 →仙狸