アライグマ
あらいぐま
食肉目アライグマ科アライグマ属の哺乳類の一種。漢字表記は「浣熊」。
外見はタヌキに似るが、分類的にはかなり離れている。尾はタヌキよりも長めで黒褐色の輪模様が並ぶ。体長60cmくらい。
夜行性で、小動物や果実などを食べる雑食。特にカエル・魚・貝・甲殻類などを好み、水中の獲物を探す姿がまるで物を洗っているように見えるためにこの名がついた。
北アメリカ大陸のアメリカ合衆国からカナダ、メキシコにかけて分布し(カナダ北部やアラスカには生息していない)、住環境として水辺の森林を好む。毛皮は優良で、ヨーロッパでは毛皮目的で野に放された。
ジュラシックパークで人を襲う恐竜の如く獰猛な害獣として世界各地で悪名を馳せている。牙や爪も鋭く、噛む力も強いため、噛まれてしまったら大怪我間違いなし。そのため、本当の名前の由来は「洗い熊」ではなく「(気性が)荒い熊」である、と半ば冗談半ば本気で言われることも。同程度の体格を持つイエネコを捕食した事例も知られている。
運動神経も抜群で、木登りがうまい。柵を飛び越えたり、わずかな柵の隙間から抜けだしてしまうので、とても飼いにくい動物である。基本的に人にはなつかないといわれており(なつくとしても生後2ヶ月が限度)、明らかにペット向きではない動物なのに、アニメ作品の影響で愛玩用に輸入されてしまったことから、多くの悲劇を生むことになった。
元々の生息地である北米では、よくゴミを漁っている姿を見かけることからtrash panda(ゴミパンダ)という別名というか蔑称で呼ばれ、不潔な動物というイメージがある。実際、寄生虫や狂犬病ウイルス等の感染症の媒介者としても知られる。北米では人家の天井裏に住み着いたアライグマが断熱材を破きそれを寝床にして子供を出産し、糞・尿による住人の健康被害や建物の資産価値を下げる。
早い話が、アライグマの実態はラスカルではないどころか、この画像の彼の方が、まだ可愛く思えるような代物なのである。
主な天敵は大型肉食動物で、オオカミやピューマ、アメリカクロクマなど。狩りの際にはインファイトが得意なアライグマに組み付かれないよう、体高の差を活かして襲い掛かることが多い。
日本ではアニメ『あらいぐまラスカル』の影響で可愛らしいイメージが定着しているが、本来アライグマは気難しく気性が荒い生き物で、少なくとも個人の飼育には向かない。そもそもラスカルのストーリー自体が「野生のアライグマの子供を保護したが、成長するにつれその悪戯が手に負えなくなり野生に返す」というもので、「ラスカル」という名前は“ならず者”と言う意味である。アメリカに於けるアライグマのイメージの一端が垣間見えるのではなかろうか。
販売が許可されていた当時、アライグマを取り扱っていたペットショップが「猫ちゃんみたいなものです」と客に吹き込んだ詐欺まがいの例も知られている(アライグマ、安易に飼い「流血の日々」 次第に見せた「野生の顔」)。
最初に野生化が確認されたのが愛知県犬山市にある『日本モンキーセンター』で、研究用に飼育されていた12頭が脱走し、2頭のオス(一部ではメス説も有り)のみ未回収となったが、数年後に近辺の町において野生化したアライグマを初めて捕獲した。またアニメ『ラスカル』の影響でその幼獣が日本に大量輸入されたが、前述の通りペットには向いておらず、さらに手先が器用という事もあり檻から開けて脱走したり、「顔がラスカルと違う」などの理由で、野山等に捨てられて野生化したものが生態系を脅かしたり、農作物の荒らす被害を出している。日本で野生化したアライグマが大量に繁殖されたのは天敵である狼がいない事が増えた要因でもある。日本ではニホンオオカミが人間の手によって絶滅してしまっため。
※天井に住み着くアライグマのイメージ図です。
ここからは真面目な話
解り易く噛み砕いて説明すると動物愛護法、外来生物法、鳥獣保護法に縛られている事が大きな要因と言える。つまりこの3つの法律を行政、及び弁護士等に相談してから出ないと捕獲も狩猟も駆除もしてはならないと言う事になっている。加えて言うと行政側が「非常に愛らしいので心理的にきつい」と言う感覚のため、かなり消極的ですらある。
さらに、この3つの法律を突破出来たとしても捕獲費用と処分費用も別途に掛かるのだ。
農作物の被害が深刻となった為に日本国政府もアライグマを2005年に施行された『外来生物法』(※1)による「特定外来生物」(すなわち害獣)に指定された事により、研究目的等以外での飼育や捕獲に移動が禁止されており、また「鳥獣保護法」(※2)により、狩猟免許を持たない農家などが勝手に駆除目的等で殺害する事も禁じられている。もし見つけた場合は自治体の農政課等に連絡する必要がある。
ただし自治体により方針はマチマチであり、「自分で殺して、燃えるごみに出してと言われた」。アライグマの駆除を自治体に相談したという福岡県直方市の60代女性から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に投稿が寄せられた。直方市の担当者は当初、西日本新聞の取材に「鳥獣保護法に基づき、わな設置者が処分する必要がある」と回答した。環境省に問い合わせると、捕獲したアライグマを自治体が殺処分することは法令上「問題ない」との説明。再び市担当者に聞くと、「市が殺処分を委託する猟友会のメンバーが高齢化し、イノシシ、シカの駆除で手いっぱいだが、アライグマの対応も今後検討したい」と、説明を一変させた。
日本獣医師会は「アライグマは気性が荒い。不慣れな人の殺処分は勧められない」としている。
福岡県久留米市では市職員が対応し、わなを貸し出した住民から捕獲連絡があれば職員が回収。ただ職員の精神的な負荷は大きい。市担当者は「本来はペットで輸入された動物。非常に愛らしいので心理的にきつい」と明かす。負担軽減のため2人一組で作業する。
自治体の方も無料で罠を貸してくれたりするのだが、自治体によっては地元の猟友会を派遣する場合もある。ただ動きが速いだけでなく数も少なくとも1万頭以上に増えている事から捕獲するにも自治体だけでも手に負えない事も有り、北海道や香川県の一部では条件次第によるが捕獲した場合は1頭当たり約3千円の報奨金を支払う事で捕獲数を増やそうと躍起になっている。
(※1)『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律』が正式名称。
(※2)『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律』が正式名称。
※捕獲されたアライグマのイメージ図です。
※※アライグマ好きは閲覧注意※※
もし仕掛けた罠に掛かり捕獲に成功した場合は『外来生物法』によりアライグマが生きたままでの移動が禁じられている為にその場で殺処分される。これは成獣だけに限らず幼獣も同様である(すなわち根絶やし)。
捕獲したアライグマはその場で袋もしくは罠を囲んだ大きな箱に閉じ込めてその垣間から二酸化炭素を発生するガスにより窒息死させる事となる(簡単に言えば小さなガス室状態)。一部では箱罠ごと水に沈めるといった水死や、自治体から派遣された猟友会のハンターによって射殺される事もある。YouTubeでは電気槍と呼ばれる高圧電流が流れた棒を捕獲器にかかったアライグマに咥えさせるか胴体に刺してショック死させる方法が紹介されている。
※アライグマの幼獣イメージ図です(「外来生物法」では幼獣・成獣問わず全てが殺処分の対象となる)。
※殺処分寸前のイメージ図です。(閲覧注意!)
※窒息による殺処分のイメージ図です。(閲覧注意!)
「可哀想だから動物園で飼育出来ないのか」という一部の動物愛護団体からの抗議もあり、過去には動物園でも捕獲されたアライグマを去勢した上で飼育されていたのだが、前述の通りに動きも素早く職員に噛み付いたりして怪我をさせるケースが多く、脱走対策にも多額の費用が掛かる事や追い打ちを掛ける様に『外来生物法』により事前の展示申請無しの捕獲や移動そのものが禁止された事によりお手上げ状態となってしまった。
所轄する環境省も『動物愛護法』(※)により、外来生物の殺処分に関しては「出来るだけ苦痛を伴わない」方法としてガスによる窒息死を勧めており、また水死や殴打によるリンチでの殺処分等は禁止されているとされているが実際の所は設備が整っていない地域もある事から(箱罠に閉じ込めている関係で)殴打はないにしろ水に沈めるといった殺処分も行われているのが実情である。また害獣駆除を行う猟友会のハンターも高齢化や担い手不足により現在は窒息死が主流となっている。
(※)正確には『動物の愛護及び管理に関する法律』が正式名称。
※捕獲後、運良く動物園に移動されたアライグマのイメージ図です。
※息絶えるまでリンチされるアライグマのイメージ図です。(当然ながら縛り上げて吊るすような殺処分は認められていない)(閲覧注意エロ的な意味で)
アメリカでの対応
ちなみに原産国であるアメリカでの対応は、害獣ではあるものの在来種という事もあり根絶やしまでは出来ない。また生態系の保護を名目に多くの州が州法によりアライグマの飼育は禁止されている。基本的には捕獲した後に放獣されるのが原則だが市民生活に悪影響が出る場合は警察官の判断でその場で射殺される事もある。(州によって開始時期は異なるものの)毎年冬の時期においてアライグマの狩猟を行っており、個体数そのものを減らす事で被害の軽減を図っている。
ヨーロッパでの対応
ヨーロッパにおいても害獣とされており、1960年代に毛皮の材料としてドイツに持ち込まれ、その一部が脱走し野生化したのを機にフランスやスイス等にも広がっている。ただイギリスといった島国や北欧や南欧の一部での生息は確認されていない。
またフランスでは、アライグマをただ殺処分するのではなくその個体を使ってジビエ料理に使われるケースも増えている(事前に頸動脈を切り裂いて血を抜かなければならない手間も掛かるが)。また、アライグマの陰茎(細くて骨がしっかり入ってて先っぽが折れてて珠を二つ合わせたようになってる)は「幸運のお守り」として珍重され、ネックレスなどになって売られているという。(わけのわからんところでアライさんは偉大なのだ)
そんな外来種問題ばかりが取り沙汰されるアライグマだが、元々の生息地である北米では狩猟動物として重宝されている。(日本におけるイノシシやシカと同じポジション) 国内においてもアライグマ肉は高いものだと100g/3000円弱で取引されることもあり、ぶっちゃけ高級食材。
かの有名なTV番組『芸能人格付けチェック』にも「正解」枠の最高級米沢牛に対抗する「絶対ありえへん」枠の肉として用意され、すき焼きの形で調理されて出された。通称「グマスキ」。
味については赤身と脂身がくっきり分かれており、同じく狩猟動物であるアナグマのジビエには劣るものの、イノシシ肉(牡丹肉)に近い味わいで旨味が強いとのこと。(ただし先見者曰く「牛肉と間違えることはまず無い」らしい)
あのGACKT様ですら「アライグマ美味しい」と太鼓判を押すほどである。
一方アライグマと姿が似ているタヌキの肉はどうしようもないくらい不味いらしい。特に脂身の部分が。
タヌキ:見た目が似ているタヌキも欧州では外来種としてアライグマと似たような問題を起こしている。タヌキはアライグマのように獰猛ではないが、欧州における狂犬病の主な媒介者として悪名を馳せてしまっている。
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