「───────好きなひとが、できました」
作品解説
映画公開は1995年7月15日である。
アニメ版の監督は近藤喜文で、最初で最後の代表監督作品とされている。
現代の日常風景における登場人物の演技設計や演出は、どこか他のスタジオジブリ作品とは趣きが異なると評価されているようである。
アニメ版の舞台は東京都多摩市に設定され、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅周辺の風景をそのままあるいはモデルにして描写したシーンが多い。
なお原作とアニメ版では設定が多く異なっている。
2022年10月に実写版が公開。(当初は2020年9月公開予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により海外での撮影が困難となり、公開が延期されていた。)
なお、実写映画版では学生時代とその「10年後」の雫と聖司が夢を追い続ける姿や恋模様が描かれる。
アニメ版のあらすじ
大の読書好きである中学3年の月島雫は、父が勤める図書館から借りて読んでいる図書カードに「天沢聖司」という名が必ずある事に気がつく。
ある日図書館への道で変な猫を見つけ、追いかけると猫は小さなアンティークショップ「地球屋」へ入ってゆき、雫は老店主の西司朗と出会う。
西老人は聖司の母方の祖父で、実は雫の同学年生だった聖司は地下の工房でヴァイオリンを作っていた。
ヴァイオリン職人になるためにイタリアへ留学したいという確固たる夢と目標を持っている聖司に比べて、将来何がしたいのかが分からない雫。
自分の夢を追い求め、文芸好きの雫は西老人の愛品であるドイツ製の猫の人形バロンを主人公とした物語を書き始める。
主な登場人物
CV:本名陽子
演:清野菜名(10年後)
主人公で、向原中学校3年生。
読書が好きで、図書館や学校の図書室に頻繁におもむき、夏休みには本を20冊も読んでいる。
その後天沢聖司と出会うが、明確な夢や目標がない違いから「自分を試す」ために受験生でありながら小説を書き始める。
CV:高橋一生
演:松坂桃李(10年後)
向原中学校3年生で、西司郎の孫。
才色兼備で読書も好きであり、雫のことは以前から図書カードを通して知っていた。
ヴァイオリンを演奏できるが本人はそれを作る職人になることを夢見ており、中学卒業後は海外修行に出ようとしている。
逸話
雫の友人である原田夕子は、原作者が子どものころに大好きだったアニメ版『赤毛のアン』のアン・シャーリーがモデルとなっている。
このアンのキャラクターデザインを作り上げたの近藤喜文監督であった。
原作者はこの頃から近藤監督のことを強く意識していたようで、本人が監督するという話を聞いたときはひどく驚いた様である。
多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅周辺が舞台のモデルとなった事実は映画公開後すぐに知れ渡ったが、中高生カップルが観光に来て名前を書いた南京錠を高台の金網に掛けていったり、落書きをしていくといった迷惑行為もあった様である。
2005年多摩大学の学生の呼びかけと地元商店街協力で、本作を利用した町おこしプロジェクトが始動し成功を収めている。ただし、スタジオジブリが版権許可を出していないため、公式イラストは使用していない。
2012年には京王線・聖蹟桜ヶ丘駅の発着メロディが、本作の主題歌である『カントリーロード』になった。同駅は京王ライナーを含む全ての列車が停車する為、回送列車以外では耳にする機会も多い。但し2022年以降は上り京王ライナー・Mt.TAKAO号に限り、京王線新宿駅で使用している京王ライナー専用接近メロディに変更されている(これは他の京王ライナー停車駅も同様である)。
下り1番線ホームの電車接近メロディ
上り2番線ホームの電車接近メロディ
本作のエンドロールは、挿入歌としても用いられているカントリーロードの曲に合わせて町の一般市民達が道を歩いていく、というアニメーションが流れていくものである。
この場面は名アニメーター大塚伸治が担当したものであり、本作品の脚本を担当した宮崎駿も賞賛したとされる。