概要
自らも鉄道ファンである漫画家・松山せいじが『鉄娘な3姉妹』に続いて執筆した鉄道を題材とする漫画。サブタイトルは「私立百合ヶ咲女子高鉄道部」。
時間軸的には『鉄娘な3姉妹』のおよそ3年後を描いた続編にあたる。しかし、画風やストーリーの内容は前作とかなり異なっており、少女マンガに近い画風になったとともに、鉄道の知識が少ない読者にも理解しやすいよう、よりライトな視点で鉄道を描く作品となっている。
また、本来松山が得意とする巨乳キャラがほとんどおらず、貧乳キャラがほとんどを占める。
ストーリー
主人公・日野はつねは、私立百合ヶ咲女子高に通う高校1年生。鉄道とは縁もゆかりもない、至って普通の女子高生。
入学式が終わったある日、はつねは、帰りの電車に乗るため訪れた上野駅で、見たことのない青い色の列車を目撃する。周りの人々が記念写真を撮る様子を見ながら、自分も写真を撮ろうとした時、同じ学校の制服を着た3人の少女に呼び止められる。
余ったきっぷを差し出され、少女たちに言われるがままその列車『北斗星』に乗り込んだはつね。その列車が、家どころか、遠く離れた地、札幌に向かうとも知らず。
車内で、3人から「鉄道部」を作りたいという話を聞き、はつねは設立承認に必要な4人目の部員、その上勢いで部長まで引き受けてしまう。ここに、私立百合ヶ咲女子高鉄道部「ゆりてつ」が誕生する。
登場人物
日野はつね
私立百合ヶ咲女子高鉄道部、通称「ゆりてつ」部長。高校1年生。自宅はJR常磐線勝田駅。鉄道を全く知らない一般人ながら、勢いで部長を引き受けてしまう。
かなりの方向音痴で、東京の鉄道網を覚えることができず、また勝田という遠隔地からの通学ゆえに、帰り道に四苦八苦する。
顔立ちが可愛らしく、私服はもちろん、浴衣や水着、晴れ着などあらゆる衣装がかなり似合ってしまうという天性のスキルの持ち主。そのため、他の部員から抱きつかれたりするなど、ヌイグルミ的な扱いを受けることがたびたびある。その上、本人が恥ずかしがり屋のため、抱きつかれてはそのたびに恥ずかしがるというのがお決まりのパターンになっている。
能登まみこ
百合ヶ咲女子高1年。撮り鉄。
松山せいじが以前に手がけた鉄道漫画『鉄娘な3姉妹』に出演していた『能登マミコ』と同一人物。およそ3年の時を経て立派な撮り鉄へと成長し、現在は親元を離れて神田のアパートで独り暮らしをしている。しかし、ツンデレで短気な性格は変わっていない。
悪乗りしやすいまろんとはくつるに対するツッコミ担当で、二人の暴走を止める役だが、時には自分が暴走することもある。2巻の番外編では、自らの鉄道趣味のきっかけとなった三姉妹のことをはつねに話しているが、最後にキスまでしそうになっている。
ちなみに、鉄道部の設立を最初に提案したのは彼女である。
石塚まろん
百合ヶ咲女子高1年。駅弁鉄。ゆりてつ部員で最も背が高い。チャームポイントは八重歯。
かなりの食いしん坊で、昼食に駅弁を、それも同じ駅弁を3つも食べているほどである。しかし、これだけ食べていても体重を気にしている様子はない。
もともとは食べ歩きが趣味であり、それが高じて駅弁鉄になった。鉄道に関する知識はさほどではないが、駅や沿線にあるグルメスポットの知識は事欠かさないほどあり、行く先々で駅弁を買っては三食代わりのようにそれを食べている。それ以外のときでもお菓子を食べ歩きしているなど、暇があれば常に何かを口にしている。
鶴見はくつる
百合ヶ咲女子高1年。乗り鉄。部員で一番小柄。
鉄道ファンだが、アニメオタクも兼業しており、どちらかといえば後者が本業。
超の付く優等生で、成績は常に学年トップ、全教科満点だが、無愛想な性格だったため友達から避けられがちで、クラスでは若干浮いていた。しかし、趣味で行っていた聖地巡礼の旅のさなかに出会ったまろんとまみこと旅を共にし、友人となる。それをきっかけとしてクラスでも次第に友達が増え、だんだんとクラスに打ち解けていった。
かなりの毒舌家で、随所にネタやオマージュ、ネットスラングをまじえた独特の喋り方をする。また、妄想癖が激しいところがあり、時々自分(とはつね)だけの世界にワープする。
滝沢このみ
百合ヶ咲女子高鉄道部顧問。模型鉄。1年生の英語担当の教師。
この作品唯一の巨乳キャラ。以前臨時顧問として対応していたことがきっかけで、顧問不在状態だったゆりてつの顧問になるが、本音は「自分と趣味を共有できる仲間が欲しかった」から。ゆりてつで抜け落ちているポジション『模型鉄』を埋める存在として、初登場回ではトミーテックの鉄道模型製作工場へ部員を連れ出した。
かつては鉄子仲間がいたらしいが、友人が次々と結婚していく中、彼女だけは未だ夫も彼氏もいないままであり、酒を飲んで酔うとその愚痴を延々とこぼし続ける。
福音寺美章・福音寺美唄・福音寺ビンゴ
3巻にゲスト登場した前作『鉄娘な3姉妹』の主役こと3姉妹。木次線備後落合駅でゆりてつ一行と遭遇する。
美章は長髪をバッサリ切ってショートに、美唄はツインテールになり、ビンゴに至っては背丈が美唄やまみこ以上に伸びているなど、3年間での変化を感じさせる出で立ちであったが、一方で最後には置手紙を残していつの間にか去るなど、父親の癖を色濃く受け継ぐ行動パターンに変化している。作中では餘部で行うオフ会への参加の途中であり、流れでゆりてつをもオフ会に誘い込む。オフ会に参加していたメンバーについては当該記事を参照。
北見美優・宮田くれあ
松山氏が挿絵を手掛けるライトノベル『僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない』のヒロインで、3巻のゲスト。
まみこがはつねを連れて父親との茶会に向かっていた途中、片瀬江ノ島で偶然遭遇した。まみこといつ知り合ったのかは不明だが、同じ鉄道仲間らしい。美優の原作同様の強引な手腕は相変わらずで、はつねとデートをめぐって争うゆりてつメンバーに、勝負は鉄道でつけるべしと持ち掛ける。
春日さくら
4巻に登場した女子生徒。太眉がチャームポイント。かなり強い秋田弁でしゃべる。
東京から新幹線「こまち」で秋田に帰ろうとしていたところ、併結していた「はやぶさ」に間違えて乗ってしまい、その車内でゆりてつ部員と出会う。
実は秋田県の第三セクター由利高原鉄道でアテンダントをしており「ゆりてつ」繋がりで秋田の案内をしてあげようと思い立ち、ゆりてつを羽後本荘に呼び出した。
その後、春になって、なんと百合ヶ咲女子高に入学、友人3人とともにゆりてつに入部届を提出し、後任部員がおらず廃部危機であったゆりてつの問題を一瞬で解決する。
そして、この「ゆりてつ」繋がりは、のちに現実のものとなる(後述)。
備考
舞台となる百合ヶ咲女子高はJR中央線の沿線にあり、最寄駅は「百合ヶ咲女子高前」という架空の駅である。この駅は立川~豊田間にあり、位置的には「日野駅」にあたる。実際のシーンを見た限りでは、駅名以外はほとんど日野駅そのものである。
鉄道マンガが聖地を作った
2014年4月に、由利高原鉄道はラッピング車両1両の運転を開始した。
そして、車体にはかわいらしい女の子のイラスト。そう「ゆりてつ」だったのである。
これは由利高原鉄道の社長が由利高原鉄道と略称が同じであるこのマンガに縁を感じ、作者の松山氏にコラボを打診し、松山氏が快諾して実現したものである。
鉄道マンガが実際の鉄道とコラボしたのは『鉄子の旅』の銚子電鉄などほとんど例がなく、またこの作品の知名度や、実際に作品内で紹介されたことなどの効果も相まって、運行開始から早くも今までにない数のテツが由利高原鉄道に押し寄せているとのことである。