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概要編集

自らもかなりの鉄道ファンである漫画家松山せいじが2008年に小学館少年サンデーGXに掲載した読みきり作品。

その後、2009年より連載漫画として掲載が始まり、2012年まで連載された。


この漫画の製作にあたり、「鉄子の旅」でも知られる小学館編集担当の石川昌彦氏が松山に直接執筆を打診、松山はそれに二つ返事でOKを出し、連載が始まった。萌え・色気漫画が本業の松山が趣味全開で描いた漫画であり、内容もほぼ鉄道一色で、萌え・お色気要素はかなり控えられている。


ストーリー編集

福音寺美章・美唄・ビンゴの三姉妹は、それぞれが異なる分野をきわめる筋金入りの鉄子。


ある日、三姉妹の元に、くしゃくしゃの手紙とともに、東京発大分行き寝台特急富士』の乗車券が届く。それは、日本の鉄道の全路線全駅完乗を果たした伝説のテツである父・国鐡からのものだった。

10年ぶりに東京駅・銀の鈴広場に集った三姉妹。10年前、妻に先立たれたショックで表舞台から身を引き、姉妹を地方の親戚の家に別々に預けて蒸発した父に会うため、三姉妹は東京駅から大分行き『富士・はやぶさ』に乗り込む。


しかし、これは全国20000kmに及ぶ鉄道路線から父を探す、テツの娘『鉄娘』たちの壮大な旅の幕開けであった。


おもな登場人物編集

登場する人物の名前は、そのほとんどが鉄道駅や鉄道関連用語からつけられている。一部のキャラ名には(分かる人には分かる)ネタからきているものも存在する。

福音寺一家編集

福音寺美章(ふくおんじびしょう)編集

三姉妹の長女。撮り鉄。大阪生まれ、北海道育ち。JR札沼線豊ヶ岡駅の近くに住んでいる。

おっとりした性格で、本業は教師。北海道育ちのためか寒いところでも薄着で平然としていたり、大きな音も平気だったりと、どことなくズレたような感じを受ける。

かなりの巨乳で、本人いわく「母親からの遺伝」とのこと。また、長さが自分の身長近くもあるレンズを装着したカメラを軽々と持ち歩いたりバックでジャンプして一瞬で十数メートルもの距離を跳躍できるなど、超人的な身体能力の持ち主である。また、寝ている間に無意識にカメラのシャッターボタンを押してしまうほど、筋金入りの撮り鉄。列車の愛称を「ちゃん」付けで呼ぶ。

緑の服装を着用していることが多く、JR北海道をイメージさせる。


福音寺美唄(ふくおんじびばい)編集

次女。乗り鉄。北海道生まれ、東海育ち。JR飯田線小和田駅の近くに住んでいる。

日本全国の鉄道路線のダイヤをすべて暗記しており、三姉妹の旅のプランは彼女が立てることが多い。また、父親から毎月最新の時刻表を貰っている。

『乗り鉄ユニフォーム』と称するゴスロリを着用しているほか、眼鏡っ娘、かつツンデレである。何気にイラストの腕もなかなかのものである。が、色恋沙汰には免疫がなく「ハレンチな」と恥ずかしがってしまう。他にも、猫など可愛いモノが好きであったり、暗い所やお化けが怖いなど隠れた一面が多くあるが、その辺りを指摘されると怒る。

頭のオレンジ色のリボンや黒白のゴスロリはJR東海を連想させる。作者は373系特急型電車をモチーフにしたとコメントしている。


福音寺ビンゴ(ふくおんじびんご)編集

三女。模型鉄。中国地方生まれ、九州育ち。西日本鉄道天神大牟田線雑餉隈駅近くに住んでいる。漢字名では『備後』だが(モデルとなる名前の駅が複数あるためか。なお、後に備後落合駅と判明)、彼女だけは本文中カタカナで名前が表記される。

10歳にしては幼すぎる感のある容姿ながら、一部のモデラーから『スクラッチ模型の達人』と呼ばれるほど模型製作技術が高く、買えない模型は自分で作り上げてしまう。彼女の製作した模型は『ビンゴゲージ』という独自のスケールが用いられている。

また、旅行中は常に、800系を模した自分の身体より大きいリュックサックを持ち歩いており、中にはビンゴゲージが大量に詰め込まれている。

赤系の服を身につけることが多く、JR九州をイメージさせる。作者曰く、自分の出身地が九州だったため、最もデザインに力を入れたとのこと。


福音寺国鐡(ふくおんじくにてつ)編集

三姉妹の父。三姉妹に鉄道英才教育を施した人物で、その並外れた体力・筋力で全国の鉄道路線を完乗した『伝説のテツ』であり、鉄道ファンからは尊敬されている。

しかし、10年前に妻と死別。そのショックで表舞台から姿を消し、三姉妹を地方の親戚に預けて蒸発してしまった。

筋骨隆々で、身長は軽く2メートルを超えるであろう大男である。学生時代からこの体格だったようだが、実は鉄道ファンとなったのは妻・さくらと付き合い始めてからで、最初は単なる『バンカラ筋肉野郎』であった。


福音寺さくら(ふくおんじさくら)編集

三姉妹の母。旧姓は鶴見。

10年前に他界している。夫の国鐡の行くところ例えお腹に命を宿していようが同行するほどで、常に夫を支え続けた良き妻。それゆえ旅の途中で3姉妹を産んでおり、出産した地の最寄り駅が3姉妹の名前の由来となっている。

見た目は美人だが非常に快活な性格だったらしく、3姉妹に向けて他界直前に別れの手紙を残していたものの、『つーわけで愛してるね~』など非常にノリが軽かった。

国鐡が『伝説のテツ』となるきっかけを作った人物で、国鐡も認める、三姉妹以上の筋金入りの鉄子。国鐡に厳しい鉄道英才教育を施してテツに仕立て上げた張本人。つまるところ、この母親にして父娘ありである。


その他編集

能登マミコ(のとまみこ)編集

日本有数の財閥『能登財閥』の令嬢。初登場は2巻で、この作品では数少ない『鉄道ファンではない・鉄道の知識がほとんどない』キャラクター。言動は高飛車だが、根は優しく人付き合いの良い少女。

父親とのすれ違いから家出をしてしまい、上野から急行『能登』に乗り込み、そこで三姉妹と出会う。最初は三姉妹が連発する鉄道関連のワードについていけず困惑するが、旅の最後には父親と再会し、父が鉄道ファンであったことを知ると同時に、父親、死別した母親の思いを知った。

最初は1編のみの登場の予定だったが、コアな内容の多いこの作品において『知識の少ない一般人の視点からこの物語を語る』という立ち位置のキャラクターであることが好評だったため、その後準レギュラーキャラに昇格した。

話が進むごとに鉄道に染まっていき、最終的にはややライトな撮り鉄になっている。

なお、時間軸的に続作となる『ゆりてつ』にも引き続き出演している。

ウツノ弁当編集

東京駅で弁当販売をしている業者。国鐡の手紙とともに弁当を三姉妹に届けてくれる。物語の序盤は老人であったが、途中で老人が腰を痛めたため孫娘(名前は宮子)に交代した。

なお、この業者のオーナーは能登財閥である。

海塚治夢(みづかおさむ)編集

ひたちなか海浜鉄道のメイドトレインに添乗するメイド。しかし実は一度も列車に添乗したことがない新人で、先輩メイドが全員風邪で倒れたため急きょ駆り出された。メイドとして必須の「おかえりなさいませ、ご主人様」を噛んだり、ワゴン販売中に転倒するなど生粋のドジっ子である。相棒は同鉄道のマスコット猫・おさむ。

日野いすゞ編集

國鐵のライバルであるバスオタク・日野ふそうの娘。生粋のバス好きで、逆に鉄道に乗っているときはいつも寝てばかりいる。寝ぼけて傍にいる人をふとん代わりにする癖がある。

はやて・こまち編集

盛岡に住んでいる國鐵の知り合いの子ども。しっかりものの兄はやて(8歳)と妹のこまち(2歳)の兄妹である。こまちは外見がやや男の子っぽいため、猫耳カチューシャをつけることで女の子であるとわかる。はやては作者曰く「名前ありきの外見」ということで、某漫画に登場する同名の執事外見がとても似ている


精霊編集

廃止される列車や路線がメインとなる回において、その列車・路線を擬人化し、何らかのメッセージを伝える役回りという形で登場する。コミック一冊につき一人か二人程度登場する。その姿や性格は様々。

  • はやぶさ

寝台特急「はやぶさ」の熊本行最終便に乗っていた謎の少女。自らの運命の終わりが近づいていくことに悲しみを隠せずにいたが、自分が寝台列車としてかけがえのないものを運んでいたということを國鐵に諭され、満足して消えていった。

  • 能登

最終の金沢行き急行「能登」の上野駅発車直前に、マミコの前に現れた少女。マミコに友達と家族を大事にしてほしいと告げ、最後に「貴女と同じ苗字だよ」という一言を残して、列車が上野駅を発車するとともに去って行った。

  • 餘部姉妹

JR山陰本線餘部駅の近くで旅館を営む姉妹。眼鏡で長髪の日本美人な長女と、タンクトップでツインテールの現代っ子な次女からなる。しかし、十年以上も前の写真と風貌が一切変わっておらず、その正体は新旧の余部鉄橋である。

  • 加賀一の宮

石川県の北陸鉄道のアテンダント。石川線加賀一の宮駅の近くに住んでいたが、社員は誰一人その存在を知らなかった。実際、そのような社員はおらず、正体は廃駅となった加賀一の宮駅そのものであった。

  • ルイス・I・デハニー

島根県の一畑電鉄の社員だが、その正体は一畑電鉄の長老電車であるデハニ50である。社員ということで、数少ない『3姉妹以外にもその存在を認知されている』存在である。ショートヘアのボーイッシュな少女で「デース」や「ナンデスヨー」などの独特の語尾が混じった話し方をする。


備考編集

松山の趣味が全面に出た作品であったため、内容がかなりディープな漫画となっている。そのため、コミックには、各話の終わりに、その各話の内容と関連した話題を対談形式で収録した『GX鉄道倶楽部』が収録されており、一般の読み手にも分かりやすい説明を加えてフォローしている。


また、この漫画の連載終了後、松山は続編という形で同じく鉄子をモデルとした漫画『ゆりてつ』の連載を開始するが、こちらは『鉄娘な三姉妹』での反省を生かし、より一般的な視点から鉄道を描いた漫画となっている。また、少しお色気成分も復活している。

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