概要
イギリス海軍における最初の条約型巡洋艦で、1922年のワシントン海軍軍縮条約の制限範囲内で設計された。艦級の名称は、イギリス各地のカウンティの名称を艦名に採用していることに由来する。なお、15隻が建造された本級は、ケント級、ロンドン級、ノーフォーク級の3つのサブクラスに分類される。
艦型
主砲
主砲は新設計の「Mark VIII 20.3cm(50口径)砲」である。特徴としてはその性能は同世代の連合側では極めて軽い116.1kgの砲弾を仰角45度で28,030mという射程を得ている。俯仰能力は仰角70度、俯角3度である。旋回角度は単体首尾線方向を0度として左右150度の旋回角度を持つ。発射速度は毎分6発であるが実用速度は3発程度であった。仰角70度というのはこの時期の重巡洋艦として破格の大仰角であるが、これは20.3cm砲を対飛行船用の対空砲として利用するための設計である。そのため、専用の対空射撃用の揚弾筒を持ち、俯仰速度も毎秒10度と高角砲並みのハイピッチで設計されていた。
機関
第一次大戦後にイギリス海軍では主機関の型式統一が成され、ボイラーはアドミラリティ三胴式重油専焼水管缶、タービン機関はパーソンズ式オール・ギヤードタービンのみが採用されるにいたった。 本級は同アドミラリティ三胴式重油専焼水管缶8基とパーソンズ式オール・ギヤードタービン4基4軸を組み合わせて最大出力80,000shp、最大速力31.5ノットを発揮した。機関配置は第一次大戦前の「装甲巡洋艦」と同じく機関区前部にボイラー室、後部に機関室を置く旧時代的な配置を採っていた。この機関配置は「ノーフォーク級」まで改善されることはなかった。ボイラー室は三室に分かれ、一番缶室が2基・二番缶室が4基・三番缶室が2基の順に配置されたため煙突三本のうち中央の二番煙突が太くなっている。なお、「ケント級」においては煙突の高さが不足して排煙効率が悪く、艦橋に煤煙が逆流するというトラブルが多発しており煙突を約4.5m延長して対応した。
装甲
海外に広大な植民地を持ち、通商路を保護する必要性から基準排水量1万トンという制限内でギリギリの線で船体を大きく設計し、更に航海性能を良くする為に乾舷の高い形状に仕上げた。長期航海に耐えるように船体に燃料や各種備品を納める倉庫をおいた結果、本級の装甲配置や防御装甲重量は減少の一途を辿り、総合的に見れば高い航続力と航洋性を重視したため、防御力は他国の重巡洋艦と比較して劣るものになっている。
その防御は船体舷側全体にわずか25mmの水線部装甲を張り、砲塔は前盾のみ51mm装甲を持つが他は38mmから25mmと薄弱であった。砲塔ターレットも51mmで、他に火薬庫のみを111mmの防御装甲で囲む(ボックスシタデル)という防御装甲で、艦隊戦においては不安のある防御力である。 更に、第一次大戦時からその有効性が指摘された魚雷に対しての防御はケント級では舷側にバルジを設置し、水線下隔壁を設けることで対処したが、後のロンドン級とノーフォーク級では艦内容積拡大にともない条約排水量を超過する恐れが出たため、設計段階でバルジと水線下隔壁を撤去してしまい、対水雷防御能力を大幅に損ねてしまった。
各級の相違点
ケント級
詳細は、ケント級を参照。
ロンドン級
詳細は、ロンドン級を参照。
ノーフォーク級
詳細は、ノーフォーク級を参照。