概要
NPO法人「特定非営利活動法人江戸しぐさ」が主張している、「江戸の商人達の行動哲学」とされるものである。
「江戸しぐさ」理事長の越川禮子は、江戸しぐさの「復興者」を称する芝三光に弟子入りし、江戸しぐさを学んだという。
日本の心遣い溢れるマナーのありようとして広められ、教育界でも一定の影響力を持ち、一部では道徳の教科書に載るようにもなっている。
代表的なものは
- 傘かしげ
狭い道などですれ違う際に、傘を少し倒して相手のためのスペースを作る動き
- こぶし腰浮かせ
船に乗り合うときの席の譲り合い
- 時泥棒
断りなく相手を訪問し、または、約束の時間に遅れるなどで相手の時間を奪うのは重い罪にあたる。定刻より5分前を合言葉にしたい。
- 傘かしげ
狭い道などですれ違う際に、傘を少し倒して相手のためのスペースを作る動き
などであるとされ、これらは商売繁盛の秘伝として口述で伝えられて来たという。
明治維新の後にこれらは滅びたが、それは江戸開城の時、「江戸講」のネットワークを恐れた新政府軍が江戸しぐさの伝承を失わせ、江戸しぐさの伝承者である江戸っ子たちを大虐殺したためであるという。生き残りの伝承者は勝海舟の計らいで江戸近郊の武蔵(埼玉・多摩)や下総(千葉)に逃れ、秘密結社として細々と江戸しぐさを伝えてきたが、戦時中に全て解散させられたという。
「江戸しぐさ」に対する批判
江戸しぐさについては「実際の江戸時代の習慣などを考えるとあり得ない」という、在野の歴史研究者や江戸文化研究家、落語家などからの批判が数多く入っている。
例えば上記の「時泥棒」については、電話もない時代にどうやってアポをとるのか? 時計も普及していない時代に、多くの人が時間に厳密だったとは考えられない、などである。
その他明らかに昭和以降の感覚で設定されているのではないか?というツッコミ所が多数あり、落語、歌舞伎、浄瑠璃など江戸文化の愛好家からも違和感と嫌悪を示されている。
また江戸しぐさが現代に伝わっていない理由として「江戸っ子大虐殺」などというナンセンスな設定を持ち出している(さすがに道徳の教科書などではオミットされているが)点は、多くの人々の失笑を買っている。
「江戸しぐさ」の実在を示す歴史上の文献はもちろん、その存在を裏付ける証拠(同時代の証言や物的資料など)はなく、典型的な偽史であると言える。