飛行船
ひこうせん
概要
飛行船とは、水素・ヘリウムなど、空気より比重の小さい気体を詰めた気嚢によって機体を浮揚させ、これに推進用の動力をつけて操縦可能にした航空機である。ラグビーボール型の気嚢の下に、人の乗るゴンドラ部分が付いたものが典型。
気嚢を膨らませてガス圧で船体を維持する軟式飛行船と、丈夫な骨格に外皮を貼り付けて内部に複数の気嚢を収納する硬式飛行船に大別される(双方のメリットを持つ半硬式飛行船もある)。
フランスの技術者、ジファールが初めて飛行実験に成功したのは1852年のこと。葉巻型の気球と蒸気機関を組み合わせ、史上初めて動力飛行と操縦可能な航空機とを実現した。
その19世紀末から20世紀初頭にかけて、墺洪帝国のシュヴァルツや、ドイツのツェッペリン伯爵らが現在に通じる一般的な硬式飛行船の原型の開発を続け、特にツェッペリンは飛行船の製造会社および世界初の商業航空会社を創業し、大成功を収めた。そのため、ツェッペリンが設計した形の飛行船を単にツェッペリン、あるいはツェッペリン号と呼ぶこともある。
高速で大量の貨物の輸送を可能にしたことで、飛行船は一躍、輸送手段の花形となるが、ヒンデンブルグ号の事故、また飛行機の隆盛に伴って空の主役からは退くことになる。現在でも宣伝用の飛行船、あるいはファンタジー世界の航空輸送機として姿を残す。
現代では主に、観光や告知の為に使用されている(日本には飛行船を運用する会社がないため、海外から引き入れている)。
また、長時間滞空できる無人航空偵察機(UAV)としても使用される。
現在、気嚢に入れる気体はヘリウムが使われているが、非常に高価であり出し入れも出来ないため、もちろん気嚢を萎めて船体を収納することもできず、よって操縦していない時は、専用のスタンドに船首を繋げて駐機している。
過去には水素ガスが使われていたが、爆発の危険性があるために徐々にヘリウムに切り替えられていった。この頃ヘリウムはアメリカでしか生産していなかったが、飛行船産業が盛んであったドイツはヒトラー率いるナチスが政権を取っており、飛行船の軍事転用を危惧するアメリカからヘリウムの提供が得られずにいた。そのためドイツでは水素を使わざるを得ず、有名なヒンデンブルク号爆発事故に繋がった。
創作において
漫画・ゲーム等において「飛行船」というと、飛行機や、船型の航空機を含むこともある。
飛行船型であっても、それ以外の形でも、飛行原理その他は大幅に異なる場合が多く、特に原理を設定していないものから、世界内の物理等の法則に則った設定を施してあるものまで様々である。
気嚢はない事が多いが、何らかの動力はあるのが普通である。
作中での用途も、移動手段や広告のみならず、兵器としての運用や居住スペース等、様々。
小型の航空機を格納する航空母艦として登場する事も多い。