ヒンデンブルク号
ひんでんぶるくごう
ドイツで、20世紀はじめにつくられた世界最大の飛行船。1936年3月に運航を開始。全長248m。大西洋を横断し、アメリカとの間の定期輸送を行っていた。1937年5月6日夕刻、アメリカのレーク・ハーストに着陸する直前に大爆発を起こし、36人(乗客13人・乗員22人・地上作業員1人)が死亡するという大惨事となった。この事故は21世紀の現在でも飛行船没落のとどめとなった事件としてよく知られている。この事故ではツェッペリン号が炎上しながら崩壊する映像が記録され、新聞やニュース映画などで広く報道されたことで、世界中の人々に水素を使った飛行船の危険性を知らしめたが、飛行船そのものにも危険なイメージを持たせる結果となった。当時、ヘリウムはアメリカでしか生産していなかったが、飛行船産業が盛んであったドイツはヒトラー率いるナチスが政権を取っており、飛行船の軍事転用を危惧するアメリカからヘリウムの提供が得られずにいた。そのためドイツでは水素を使わざるを得なかった。現在ではヒンデンブルグ号の事故の発端は、着陸時に地上へのアースが上手くいかなかったことで静電気から発火したことによる外皮や塗料の炎上(溶接や焼夷弾にも使われるテルミットなどを成分としていた)であり、ヘリウムを使っていても起こりえたと考えられている(ただし、水素と違ってヘリウムは爆発しないので被害は少なくなる)。なお、この事故の死亡者は36人(地上スタッフ1人を含む)であり、生存者(62人)の方が多い。衝撃的な事故映像の割には意外と生存者が多いと思われるのではないだろうか?(生存者も少なからず重傷を負ったが、着陸時で低空にいたことや、海軍飛行場での事故であったため、素早く救助を行えたため。)。飛行船史上最悪の死者を出したのは実はこの事故ではなく1933年のアクロン号難破事故である(73人死亡)。