英語:national security
概要
文字通り、何らかの脅威による身の危険が及ばないように、何かの手段を講じることで安全な状態を保障することであり、また、その目的のための体制や組織などを指す場合もある。
主に政治用語として、国防などの国民の身の安全を守るための法整備や、国家を守る防衛組織である軍隊や、多国間の脅威削減のための軍縮等に関する国内議論がされる際に使用され、「安保」と略されることも多い。近年では非国家組織によるテロ攻撃や自然環境の変化などから生じる恒常的脅威等も安全保障の対象とみなす考え方も増えてきている。
安全保障には、一般に「抑止」と「信頼醸成」が車の両輪として語られる。
抑止とは、軍隊を代表とする実力や軍事同盟、経済制裁等の威嚇的措置を指し、他方信頼醸成はホットラインの開設や大使館・領事館の設置、様々なレベルでの定期的な会談の設定、経済的結びつきの強化、軍縮の実施などがある。
一方に頼りすぎることは逆に自国の安全を損なうため両者のバランスに常に気を配るべきというのが教科書的な指針となる。
抑止のみに頼る政策は「安全保障のジレンマ」として有名な問題を引き起こす。
(例1)安全保障のため軍事力を増強した結果、周辺国に警戒心を抱かせ周辺国もまた軍拡を行い軍事衝突発生のリスクと戦争になった場合被害が大きくなる。
(例2)最強の抑止力である核兵器の所持を目指した結果、世界秩序への挑戦者と警戒され経済制裁等の対抗措置を招く。
(例3)集団的安全保障体制拡大のために軍事同盟の範囲を拡大した結果、自国で起こったのであれば非軍事手段によって解決できる問題でも他国政府の対応によって軍事衝突に発展ししまう。
このように、自身の安全保障のみを考慮して行動すると逆に自身の安全を脅かす結果を招きかねない。
従って緊張緩和や軍縮、軍備管理も重要な安全保障のテーマとなっている。
近年の例では2015年にイランが核開発を断念して核査察を受け入れた行動が、自国の安全保障を検討する上で核抑止よりも核放棄の方がより有利であると判断した例といえる。
安全保障のジレンマは囚人のジレンマの一形態ではあるが安全保障ではほかにも囚人のジレンマの例を挙げることができる。2国間での軍縮が最も分かりやすいが、パワーバランスを保ったまま軍備を削減するはずが一方が裏切れば当然ながら裏切られた方は一方的に自国の安全保障を危機にさらすことになる。
さらにいえば、抑止力は「軍事力を行使すれば反撃で自分も大きな損害を受ける」という認識を関係各国が共有していて初めて発生する。国家は自然人とは異なりある程度理性的、論理的な行動を期待できるものではあるが、例えば1人の最高権力者の考えによって動く国家やそもそも領域や国民を持たない非国家組織主体のテロ攻撃などに対しては抑止も信頼醸成も対国家のように機能するとは言い難く、現在の国際社会の喫緊の課題の一つとなっている。
一応テロ攻撃に対しては治安維持や警戒体制の強化を抑止と、テロに走る人々を生まないように不安定地域の安定化や生活基盤の再建、対話プロセスによる紛争解決等を信頼醸成と呼ぶことも可能ではある。
それぞれの国における、民族独自に育まれ先祖たちが守り続けてきた文化・歴史・伝統、それらの発祥地である国家、その地に家族・友人らと住む多く国民の生命や財産を、外敵などの脅威から守るために、国民が意識し考えなければならない大切な事柄である。