民間防衛
みんかんぼうえい
戦争やテロなどの紛争や、自然・人為による災害などが発生した際国民の生命や国及び国民の財産を守るため、速やかな避難や被災者の救助、終結後の復旧活動により被害を最小化させるための、民間レベルの活動を指す。
戦争およびテロへの対策に関しては、武力を行使した直接的な侵略が発生した際の対策、防衛や一般人の避難、あるいはそれらの行為の支障にならない行動や、必要な物資の備蓄などが一番に考えられる。
また直接的な侵略ではないもの、例えばスパイや工作員、彼らのシンパ等が出版および放送等のマスコミを支配することによりプロパガンダ( 宣伝 )工作や各種情報操作を行うことにより、国民の愛国心や国防意識を減少させ、結果国家の乗っ取りや戦争遂行を容易にする間接的な侵略への対処も存在している。
あるいは紛争の結果等により他者に自国が占領支配された際、国を取り戻す、あるいは自らの立場を優位にするために行うレジスタンス活動やゲリラ活動などの対策まで含まれる。
この種の文章を国民に配布した国は2つあり、リトアニアが2015年に、スイスが1969年に配布した。この項目では有名であるスイスの書籍に関して説明を行う
永世中立国の立場をとっているスイスでは、冷戦のまっさ中であり、チェコスロバキアに対するソ連の軍事介入が起こった翌年、国防意識を向上させるために、政府がこれらの活動について具体的にかつイラストを交えて解説された書籍を1969年に発行し、全スイス国民に配布された。
スイスは「永世中立国」として、世界で唯一200年以上も戦争をしていない近代国家であり、その所以(ゆえん)には以下の理由がある。
武力と覚悟
まずは強大な軍事力を有しており、「侵略を受ければ徹底抗戦する」と宣言し、それでもし敗れることがあれば国内の発電所・ダム・橋梁などのありとあらゆる施設を破壊して国土を焦土化してでも、侵略国には何も与えない。
非同盟
どこの国とも軍事同盟を組んでいないため自分たちで国防を行う必要が存在する。そのため、国民皆兵で男子には徴兵の義務、女子の兵役は任意、が課せられており、除隊すると60歳までは予備役兵、すなわち有事の際には現役復帰する前提の民間人として登録され、軍隊の力が必要となる事件等が発生した際は軍に復帰し、そのため国民の一人ひとりに民間人であるにもかかわらず小銃が支給されている。ただし弾薬は現代においては支給されていない。
日本においてはこの書籍は3度、日本語で発売された。具体的には発行された直後の1970年、阪神淡路大震災の発生した1996年に発売され、2003年には、『あらゆる危険から身をまもる 民間防衛』のタイトルで、発売された。
日本国内では戦後に長らくおろそかにされていた国防に関して1980年代までの冷戦時代の内容とはいえかなり現実的な解説がされている。
日本において同様の書籍を作成し利用させる際は、日本は民兵制度が存在しないため「民間人はいわゆる専門家の邪魔にならないように行動し、できれば自分のできる仕事や後方支援に徹する」こと、国土の特性上このマニュアルに存在していなかった大規模な災害等への対処などの記述を行い、防災マニュアルとしても活用できるように作成すべきであろうと思われる。
日本国内では戦後に長らくおろそかにされていた国防に関して1980年代までの冷戦時代の内容とはいえかなり現実的な解説がされていることから、複数メディアで話題になり、インターネット上、特にネトウヨとレッテルを張られる人々の間では特に参考にされている。
逆に非武装の中立を掲げたルクセンブルクは、第一次・第二次世界大戦において、その宣言を破ったドイツの侵略を受け、国土を蹂躙されて危うく現在のチベットのような状態になりかけるという、手痛い思いをしており、そのためルクセンブルクは、戦後に中立と非武装宣言を放棄し、国防のため徴兵制を敷いて軍隊を創設し、NATOに加盟して軍事同盟を結んだ。
非武装中立が可能なのは「中立であることを守ってくれる信頼できる隣国」、及び「中立宣言をした国に侵攻するメリットがデメリットよりも大きい」ことが必要となるである。