概要
ただし、歴史的、文化的に、この言葉は様々な形で用いられており、その意味は多様である。哲学、心理学、生物学、医学、宗教、日常会話などの中で、様々な意味で用いられる。
日本語では、「ある物事について要求される注意を払っている」とか「考え方や取り組み方について努力が行われている」といったことを表す場合に、意識が高い(または低い)といった言い方が許される。たとえば公害や廃棄物などの問題についてよく勉強し、改善のために様々な行動や対策を行っている個人や集団を、環境問題についての意識が高い、などと表現する。このような用法は遵法意識、コスト意識、プロ意識、意識調査、意識改革、など様々な表現に見られる。
学術的には、文脈に応じて意識という語は様々な意味で使用される。以下では、哲学、心理学、臨床医学をはじめとするいくつかの分野に分けて、代表的な意味を解説する。
意識の種類
覚醒状態
睡眠、気絶、昏睡状態などではなく、目覚めているということ。意識はあるが肉体は全く動かせない閉じ込め症候群など、意識があるか外部からは判断しにくいケースもある。医学ではJCSやGCSなどの意識レベルを判断する指標がある。
注意
ある物事について注意を向けている状態のこと。これが困難になる注意散漫になったり思考が上手くまとまらなくなったりする。認知心理学では、視界には入っているが注意を向けられていないが故に見落してしまう非注意性盲目という現象が知られている。
自意識
自らの主観的意識そのもの。自らを意識し、主体と客体が一体化したもの。人間には自らの意識を意識するメタ認知と呼ばれる機能がある。
無意識
意識の働きなしに情報が処理されたり行動を行うこと。たとえば人間は全身の感覚器官から外界の情報を受け取っているが、その情報の取捨選択はほとんど無意識的に行われている。
架空の意識
集合意識
単一の個体の意識ではなく、無数の個体たちによって統合された意識。集合精神、Hive mind(巣の精神)などとも呼ばれる。宗教、超心理学、オカルトなどでは古くから用いられ、現在ではSFやファンタジーなどフィクション作品で登場する。個体としての意識と、統合された集合意識が両立されることもある。
人工意識
コンピュータや人工知能などでシミュレーションされた意識。実現性について古くから議論されているが、実際に実行可能であるのかどうかは現在でも不明である。現在の意識の科学では、現在の人工知能やインターネットには意識がないとされている。
考案されている方法論としては、生物の脳の機能を丸ごとシミュレーションする全脳エミュレーションなどの手法が知られている。
生きた人間の脳をスキャンして人工意識を作る場合は精神転送(マインドアップローディング)と呼ばれており、SF作品などでよく登場する。
理論物理学者のマックス・テグマーク教授は、人工意識を持った超知能が銀河全域に自らの機械を送り込み、銀河規模の人工意識が実現した場合の仮定について論じている。意識的な経験には情報が統合されることが必要であるが、光速の限界があるため銀河規模人工意識は数百万年に一度しか主観的経験を経験できず、無数のサブシステムを構築する必要があるだろうと書いている。