おやしお型潜水艦
おやしおがたせんすいかん
2代目「おやしお」型(現役)
概要
海上自衛隊が運用する潜水艦は、1955年に運用を始めた海自初の潜水艦・2代目「くろしお」が米国から貸与された元・ガトー級潜水艦「ミンゴ」(あのレイテ沖海戦にも従軍している)であるほかは、すべて日本製で、三菱重工と川崎重工の神戸造船所で建造されている。途中の「うずしお」型からは、「はるしお」型までの長年にわたり、完全複殻式涙滴型の構造を採用してきた。
この完全複殻式涙滴型を脱し、部分短殻式葉巻型の船体を採用したのが2代目「おやしお」型である。
また、艦体側面にコンフォーマル・アレイ・ソナーを装備、艦体前面に無反響タイルを取り付けるなど多くの新技術が採用され、この技術をもとに次級の「そうりゅう」型が開発されることになる。
なお本型は、現時点で艦名に「しお」がつけられた最後の潜水艦でもある。
主要スペックは次の通り;
基準排水量/2750t 満載排水量/3500t
全長/82.9m 幅/8.9m 深さ/10.3m 喫水/7.4m
主機/軸数:ディーゼル2基、主電動機1基(搭載主機:川崎12V25/25S)/1軸
水中出力:7750馬力
速力:水上12ノット、水中20ノット
兵装/533mm魚雷発射管6門(魚雷、ハープーン兼用)
乗員/70名
同型艦
1998年から2008年にかけて11隻が建造され、すべて現役にある。
- 1番艦「おやしお」TSS-3608(←SS-590)
- 2番艦「みちしお」SS-591
- 3番艦「うずしお」SS-592
- 4番艦「まきしお」SS-593
- 5番艦「いそしお」SS-594
- 6番艦「なるしお」SS-595
- 7番艦「くろしお」SS-596
- 8番艦「たかしお」SS-597
- 9番艦「やえしお」SS-598
- 10番艦「せとしお」SS-599
- 11番艦「もちしお」SS-600
それぞれの漢字表記は「親潮」「満潮」「渦潮」「巻潮」「磯潮」「鳴潮」「黒潮」「高潮」「八重潮」「瀬戸潮」「望潮」である。
ところで、涙滴型潜水艦の発祥は戦後に竣工した米軍の試験潜水艦3代目アルバコアである。
初代「おやしお」型(1960-75)
前述したとおり米軍から貸与される形で、日本の潜水艦として旧日本海軍消滅以来10年ぶりに復活した、海自初の潜水艦・SS-501「くろしお」は水上航走を主体とした在来船型であり、大戦末期に登場した水中高速潜と比べれば見劣りするものの、潜水艦戦力整備の端緒として重要な役割を果たした。
その傍ら、海自では1954年の発足当初から、戦前に伊58など200隻もの潜水艦を建造・運用した旧海軍の実績も踏まえ、潜水艦の国産化を検討し始めていた。この際、水中速力20ノットを目指して、250型、500トン型、1,000トン型の3種が検討され、戦後初の国産艦であることから造りやすさが優先されて1,000トン型が選定される。のちに「くろしお」での実績や派米視察団の報告を加味して開発を進めて、最終的には1,100トン規模まで大型化した。
これによって建造されたのが「おやしお」型である。
本級は1960年6月末に竣工し、1976年9月末限りで除籍されたSS-511「おやしお」の1隻のみで同型艦はつくられていないが、本級をもとに建造されたのが改良型の「はやしお」型である。