シュレディンガーの猫とは、量子力学の世界にて過去に論争を巻き起こした理論。
思考実験の一種であり、「生死が確率によってのみ決まる猫」について考察するものである。
概要
オーストリアの理論物理学者であるエルヴィン・シュレーディンガーが提唱した。
猫が登場する理論なので、提唱者の名前と猫を合わせて、こう名付けられている。
猫を一匹、箱の中に入れるとする。
この箱の中にはある種の時限装置(具体的には放射性同位体の原子1つとガイガーカウンター、それに接続された毒ガス発生装置)が仕掛けられており、『一定の時間』が経過すると毒ガスが発生、箱の中の猫は死亡してしまう(放射性同位体が壊れてそれをガイガーが感知し毒ガスを発生)。
しかしこの箱を外部から見ている人間『観測者』には、その一定の時間がいつなのかは分からない。
さて、猫を箱に入れてしばらくが経過した時、『観測者』は箱を開けようと思い立つとする。
『観測者』は当然疑問に思う。箱の中の猫は生きているのか、死んでいるのか。
量子力学の理論は「箱の中の猫は生きていると同時に死んでいる」と語っているのだが……。
つまり、どういうことだってばよ？
もちろん、この場合の『生きていると同時に死んでいる』というのは、半死半生の状態でも精神死という状態でもない。文字通り、生命活動を行うと同時に生命活動を停止しているという、不自然な状態を指している。
よって普通に考えると、量子力学のこの主張は理解しがたいものとなる。が、にもかかわらず量子力学はこの理論で正しいとしてしまっている。
つまりシュレーディンガーの猫とは、『物語として聴くとおかしいのは明白だが、理屈・理論上では正しいことになってしまう』という、学問の特異性を皮肉った理論なのである。
この手の問題は量子力学以外でも様々な学問でしばしば起きており、学者達はそれらを『パラドックス』と呼び、問題解決に頭を悩ませてきた。
今回の物語では、箱の中の時限装置に組み込まれている放射性同位体が壊れるかどうかが猫の生死を握っている。
量子力学の世界では、放射性同位体が『ある時点』において崩壊するかどうかは確率によって決まる。
よってこの物語の場合、毒ガスの発生も猫の死も確率で決まることになる。
例えば、放射性同位体の崩壊率が50％だとする。
すると量子力学の理論では、『この時同位体の中では、崩壊している状態と崩壊していない状態が半々に交じり合っている』と解釈されることになるのだ。
だからそれを、同じく確率で生死が決まる猫に照らし合わせ、『箱の中の猫は生きている状態と生きていない状態が混ざり合っている』という考えが生まれてしまったのである。
いや、そのりくつはおかしい
前述の通り、この理論の存在は学者らにとっては問題である。
よって数々の学者が、この理論に合理的な説明・反論をつけるべく、様々な主張を行った。
「放射性同位体の崩壊と猫の生死を直結させるのがそもそも間違っている」
「観測者が箱を開ければ猫の生死は確定するので、開けていない(観測されていない)状態での猫の生死は関係ない」
「猫は生きているか死んでいるかのどちらかである。しかしそれはこの世界での話であり、別の世界では反対の状態になっている」
サブカルチャーの世界での解釈
pixivにおいてはスカートの中身が見えないことで、はいているのかはいてないのか、はっきりと確認できないイラストにこのタグが付けられることがある。
詳しくは、シュレディンガーのパンツを参照。
また、既存のエンターテインメント作品の中でも、作者独自の解釈を織り交ぜてこの理論が語られる時がある。
主なシュレーディンガーの猫関係の作品
とある魔術の禁書目録(ライトノベル)
自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を開拓するヒントの代表例として扱われている。
うみねこのなく頃に(同人ゲーム)
ある島で起こる幻想的な事件について、『島の外の人間が何が起きているか知らない間、島の中では現実と幻想が両立されている』という形でこの理論が持ち出された。
ウルトラマンメビウス(特撮ヒーロードラマ)
この理論を能力に応用した『ディガルーク』なる怪獣が登場している。
