偽装難民
ぎそうなんみん
偽装難民とは、難民を装い他国に入国する人々であり、主に欧州諸国で問題になっている。
概要
国連難民高等弁務官事務所(日本語版)においての難民の定義は難民の地位に関する1951年の条約において定められ、難民の地位に関する1967年の議定書において拡張されたものであり、具体的には「以前の条約や議定書などで難民とされたもの」および「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者」と定義される。シリアなどの紛争指定国からの流出した人々は大した審査もなく難民と認められやすいため、偽装難民はシリア人を騙ることが多い。なお、日本は上記のような問題のない地域とされているため、日本人が難民と認められることはない(福島第一原子力発電所事故による放射能汚染を理由にカナダ在住の日本人が当地の移民局に難民申請をしたが、却下された)。
ところが、実際にはこの定義に当てはまらないものが難民として難民申請を行う事例が存在しており、この存在は早急な受け入れを求めている「正しい」難民たちの信用を貶めることとなり、その受け入れを難しくさせる要因となり、また難民と保護する国の人々との関係を悪化させることになるため、対策を求める声が高まっている。
なお、たとえ「正しい」難民であっても、まとまった数の難民が国内に流入することで福祉予算を圧迫し、不動産価格の高騰、在来住民とのトラブル、場合によっては犯罪の多発など様々な問題が発生することは避けられない(このため、日本では難民を大量に受け入れるのを避けており資金提供にとどめている)が、欧州諸国ではこれら問題は人道上・安全保障上やむをえないコストとみなされ積極的な受け入れが行われている。これには、「難民は安い労働力として使える」という裏の理由もあると言われ、受入国の賃金低下や失業増加にもつながっている面もあることから労働者の反発が強い。
手法
この行為を行う場合、いくつかの方法が存在する。たとえば国籍を偽って報告したり、申請の状況に該当しないにもかかわらずその状況であるかのようにして申請するものなど複数存在するが、ここでは詳しく解説しない。
経済難民
経済難民とは経済的に生活が困難になったため住んでいた土地や国から逃れて難民になった人々のことである。
ところが、実際には現地での生活が十分可能であるにもかかわらず、受入国の支援を頼りにより豊かな生活を送るための手段として難民申請を行い、稼いだ賃金を残してきた家族に送金する、あるいは家族をどんどん呼び寄せるという出稼ぎや移民と変わらない人々も存在しているといわれている。
しかし、実際のところ生活困窮者とそうではない者の線引は困難である。上記のとおり、生活困窮者を難民として受け入れることは難民条約で義務づけられているものではない。先進国では貧困と認められる水準でも、発展途上国ではごく普通であり、そもそも経済難民は難民としては認めていない国の方が多い。
工作員
押し寄せる難民の中には、特定の意図を持って他国に潜入・潜伏しようとする工作員がしばしば混入している。これらの工作員は保護された国などにおいてスパイ行為などの情報収集行為を行ったり、オルグ等により仲間を増やしたり、反社会的活動、例を挙げれば暴動の煽動やテロ行為を行ったりするものが存在すると言われている。
一例を挙げるとフランスで起こったパリ同時多発テロを引き起こしたテロリストの一部がそのシステムを悪用したのではないかといわれ、シリアなどからの難民に混入していた可能性があるとして問題となっている。
しかし、元々テロリストになる意図なく入国した「真の」難民であっても、工作員等の働きかけを受けたり、ネットで過激思想に染まりテロ事件に参加することもあり、近年はイスラム圏からの難民の受け入れに慎重な国が増えている。