概要
名前の由来は、個体識別のために左羽に付けられた紫色のバンドから。
性格は非常に甘えん坊とのことで、かつて足を怪我した際に飼育員みんなから優しくされたことが忘れられないのか、元気になってもエサである魚を自力で捕ろうとせず、飼育員に口元まで運んで食べさせてもらっているらしい。
1996年4月生まれの21歳(2017年5月時点)。
ペンギンとしてはかなりの高齢で人間に換算すると80歳程である。そのため、一部では「グレープおじいちゃん」「グレープ爺」、「グレ爺」などとも呼ばれている。
フルルに恋?
彼が話題になったのは2017年4月、メディアミックス作品『けものフレンズ』とのコラボレーション企画の一環として、作中に登場する「フレンズ(動物をモチーフにした女の子のキャラクターたちの総称)」のイラストパネルが、園内のそれぞれの動物がいる各エリアに設置された。
その中で、フンボルトペンギンをモチーフにした「フルル」のパネルは、グレープ君たちの居るペンギンエリアのド真ん中に設置された。以来、グレープ君はフルルのパネルをしげしげと見つめたり、近くに寄り添って離れなくなるなどの反応をみせるようになった。
同エリア内にはグレープ君以外にも複数のフンボルトペンギンがいるが、こうした反応を見せたのは彼だけであり、このことが観覧客の間で話題となり、SNSをはじめとするネット上で「二次元に恋したペンギン」として取り上げられるようになった。アニメ版でフルルの声を担当した築田行子も自身のTwitter内で彼の写真に触れ「フルルモテちゃってる♡」とコメントした。
なお、彼がこのような行動に至った理由は諸説あるが、同園の飼育員である山田氏(以下やまだおにいさん)は「高齢で視力が衰えているため、パネルを飼育員と勘違いしている」のではないかとコメントした。
しかし、その後本物の飼育員が直接世話をしたり持ち上げてパネルから離しても元の位置に戻り続ける姿が見られている。さらに、微動だにしないパネルを5ヶ月以上飼育員と勘違いし続けるというのは、高齢であっても流石に考えづらい。
以上のことから、フルルのパネル自体を気にしていることは間違いないと思われる。
しかし、群れから離れて一羽きりでパネルに寄り添う姿や、閉園時安全のために柵で隔てられている間も彼女に視線を向ける姿など、こうした彼の「一途な恋」とも見て取れる行動に感化されるファンも多かったようで、Pixivにおいても両者を題材にしたイラストが数多く投稿されている。とくにフルルとのコンビ・カップリング系のイラストが大半を占める(とうぶどうぶつこうえんコンビ)。
実際地元の新聞報道によれば、最初のコラボが行われた4~6月の園への来場者数は前年比の約2割増となったが、ペンギン舎に限定するとなんと約20倍という驚異的な増員となり、グレープ君の人気の凄まじさが窺える。
悲しい過去
こうした彼の人気を受けて、同園では5月20日に前述の築田行子をゲストに招きトークショーが行われた。その中で、グレープ君の現在に至る経緯がやまだおにいさんにより語られた。
グレープ君はもともと東京都の羽村市動物公園で飼育されていた個体であり、2007年に東武動物公園にペンギン舎ができたことを機に、奥さんのミドリと一緒に引っ越してきた。
そう、彼は子持ちの妻帯者だったのだ(子供は別の動物園にいる)。
一般にフンボルトペンギンは一度つがいになった夫婦は終生連れ添うものとされているのだが、その3年後、なんとミドリはペンギン舎の「デンカ」という若いオスに乗り換えて子供を作ってしまい、更に2017年現在両者ともまだ同じペンギン舎に住んでいる。
それからというものグレープ君は群れに混じらず一人でポツンとしていることが多くなったらしい。一体、彼はいかなる心境で日々を送っているのだろうか……。
本来ペンギンの社会でも浮気は禁忌とされ、これを犯した者は群れから疎外されることが多いらしいが、このケースではミドリとデンカは平然と群れの中で暮らし続け、被害者のグレープ君がのけものにされるという不思議な逆転現象が起きている。
ちなみに上述のミドリとの間にできた子供は「はんぺん」といい、卵の時点で江戸川区自然動物園に送られ、先輩フンボルトペンギンのつがいに養子として育てられていたのだが、なんと彼も成長後に義母を寝取って義父から奪うというとんでもない暴挙を犯している。実の両親とは面識が無いはずだが、実母の血の濃さを感じさせる話である。
妻も子も奪われ一人ぼっちになってしまったグレープ君だが、これなら子供のことは知らないままの方が幸せなのかもしれない。むしろここまで来ると、かつてミドリと結ばれてしまったことが彼にとって最大の不幸となってしまったような気も……。
ネットではこの情報が伝えられるや「二次元に逃げるのもやむなし」「幸せになって欲しい」など、彼を憐れむ声が広がったのであった。
粋な計らい
こうした世間での人気の急上昇、そしてグレープ君自身の熱意に後押しされてか、東武動物公園もけものフレンズとのコラボ期間中に園内のレストランでグレープ君とフルルのコラボメニュー「恋するグレープ」を限定発売したり、グッズショップでも缶バッジやクリアファイルなどのコラボ商品を売り出すなど、このカップルを猛プッシュした。また夏場には日当たりの良いパネルの前に居座り続けるグレープ君のために専用の日陰を用意するなど、動物園の飼育動物としてはまさに破格の待遇で接している。
そしてこれまで2度行われてきたコラボは6月25日と9月3日にそれぞれ終了し、フレンズたちのイラストパネルも園内から撤去されることとなったが、なんといずれもフルルのパネルだけはコラボ終了後も展示を継続することが決定した。コラボ終了前にはグレープ君の心情を思いやってフルルパネルの存続を願う声がネット上に溢れていたが、この決定に多くのファンが歓喜し、東武動物公園を賞賛。築田行子もTwitterで安堵と感謝の声明を出した。
これについて東武動物公園は「グレープ君の気持ちを考えて存続を決めた部分も、少しはありますかね」と語り、今後けものフレンズとのコラボの予定は無いとしながらも、グレープ君が飽きるまでパネルの展示を続ける方針を明かした。
テレビ出演
スーパーJチャンネル・・・2017年9月5日、「恋するペンギンに“神対応” そのお相手は・・・?」と取り上げられた。こちらでは失恋のエピソードまで知る事が出来る。
めざましテレビ・・・2017年9月14日、「めざましじゃんけん」のクイズ版「もの知りじゃんけん」にて、「東武動物公園のペンギン「グレープ君」が恋をしたと話題に お相手は?」と出題。選択肢は「飼育員」、「看板」、「ハト」の3択。どれも違うと言いたいところだが、正解は「看板」。
ちなみに、この時じゃんけんの相手だったのは加藤一二三であった。
最期もフルルに看取られて
体調を崩し2017年10月11日から静養していたが、12日14時30分ごろに静かに息を引き取った。(原因は調査中。)
入院に際してはフルルのパネルも一緒に移動していたとのことで、大好きなフルルに看取られての最期であった。
この突然の訃報に対する反響は当然大きく、Twitterで公表された翌13日のトレンドワードで「グレープ君」が1位となり、築田行子をはじめ多くのファンが悲しみや感謝の追悼コメントを寄せた。