※以下、『宝石の国』未アニメ化部分(原作6巻~)のネタバレとなるため、閲覧の際には注意をお願いします。
概要
『宝石の国』のカンゴームとフォスフォフィライトの組み合わせ。
二人が直接的に対面するのは、フォスを庇って月へ連れ去られたカンゴームの外側が剥がされた後のこととなる。
出会い
発端であるゴーストの事件は次のようにして起きた。
ゴーストと二人で見回りをしていたフォスは、見つけた黒点を先生へ報告するより先に、近づいて月人との意思疎通方法の解明を進めたい、と提案した。
このとき、フォスは「ダメそうだったらすぐ斬る」とも言ったが、不意をつかれて身体を真っ二つにされたことで身動きが取れなくなり、ゴーストが助けに入った。
よって二人は増援を呼ぶことができないまま、月人の猛攻によってゴーストは剥がされ、連れ去られる……という最悪の結末を迎えてしまう。
このことから、連れ去られたゴーストの内側から現れたもう一人のゴーストは激怒し、目覚めたフォスは修復が終わったそばから顔面を殴られ粉砕される、という手厳しい挨拶を受ける。
「できもしないことをしようとするな」
「あいつを回収し、おまえがあいつに謝るまで、許さない」
これに対し、フォスは「これも夢かもしれない」と再度自分を殴るよう懇願したが、かえって彼を怒らせることになり、頭上から踏みつけられそうになった。(ただしこれは先生が止めた)
以上の経緯からフォスはゴースト(内側)に頭が上がらなくなり、彼の子分のような関係になることでひとまず落ち着いた。
ゴーストから “カンゴーム” へ
ゴースト(外側)から出てきたゴースト(内側)は、黒い肌の宝石だった。同時に外側が剥がされたとき、左腕も失っていた彼は、代替品であるスモーキークォーツの左腕が早く馴染むよう、光の吸収率を上げるため敢えて白粉を塗らない状態でいた。
しかしながら短い銀髪、はっきりとした物言い、ピシっとした立ち姿などから、ゴースト(内側)と見回りに出たフォスはその背中を、「黒くても似ている」とアンタークチサイトに重ねていた。
そのときちょうど月人が現れたため、二人は先に戦闘に入っていたウォーターメロン、ヘミモルファイト、ベニトアイト、ネプチュナイトの援護へ駆けつける……はずだった。
「おまえ いまなんつった」
「君が連れ去られると危ない アンターク」
フォスにとって、目の前で月へ連れ去られたアンタークの存在は、深いトラウマとなっていた。
(ゴースト(外側)も連れ去られた点は同様だが、こちらのときのフォスは意識を失っていたと思われるためか、強いショックは受けたもののトラウマというほどの描写はされていない)
さらにフォスはアンタークが連れ去られたとき、手を伸ばすのではなく剣を投げる選択したことも後悔していた。実際、冬のある日には「次はうまくいく」と合金の調子をたしかめてもいた。
そして今回の月人の襲撃、ゴースト(内側)の姿がアンタークに重なったこと、などの要素が絡まったことでついにフォスは錯乱。ゴースト(内側)を合金の手の中へと閉じ込めてしまった。
そのままウォーターメロンたちのところに到着したフォス(たち)に対し、合金の内部を見たウォーターメロンからは「アンタークじゃないよ」との指摘を受ける。しかしフォスは、閉じ込めたのがゴースト(内側)であると認識してもなお正気には戻らず、むしろ自分のせいで捕まった宝石たち、犠牲を払っておきながら月人の秘密にも辿り着けない自分、などを思ったことで余計に暴走。自分で自分の身体を握り潰す凶行に走ってしまう。(人間で言うところの自傷行為に近い)
結局、フォスは身体を折られて無理矢理動きを止められることになり、その後、修復されて目を覚ますまで元に戻ることはなかった。
「おまえがいかれたところで二人は帰ってこない」
「手足に加え正気までなくしたら、今以上に何もできない」
目を覚ましたフォスは当然、彼を修復したルチル、合金に閉じ込められていたゴースト(内側)の双方から叱られる。
特にゴースト(内側)からは上記の厳しい言葉をかけられたが、今度のフォスはゴースト(外側)を失ったときとは異なり、真正面から非を受け止めた。
「幻覚は、きっと僕が見たがってるから見るんだ」
「わかったからには、もうしない」
ルチル曰く、面と向かって怒られたことで気持ちの整理がついたらしく、以降のフォスは沈んでいた性格から、アンタークを失う前の明るい性格が戻ってくる。(フォス自身はこれについて「病みかわいい僕から、そこそこ健康的でかわいい僕に戻った」と話している)
また、このタイミングでゴースト(内側)はフォスの提案により新しい名前がつけられることになり、先生から「カンゴーム」という名前を与えられた。
これについてゴースト(内側)は、「完全にゴーストがいなくなったみたいだ」という感想を述べたが、やめようかと言ったフォスに対して、自身の担当する長期休養所の現実(月人に連れ去られた宝石のその後)を打ち明ける。
そして新しい名前を受け入れると共に、“カンゴーム” はフォスへ冬の担当に就くことを持ちかけた。(これ以前にもフォスが冬の担当を申し出たことはあったが、そのときは即座に断っていた)
二度目の冬
フォスにとって二度目の冬となる年は中々雪が降らず、宝石たちは幾度も冬眠を延期していた。
カンゴームはようやく身体に白粉を塗れるようになったが、とある事件の影響で、くっつきかけていたスモーキークォーツの左腕の接着がふりだしに戻ってしまう。
(余談だが、白粉を塗ってますますアンタークそっくりになったカンゴームに対し、フォスは一度だけ「アカンゴーム」と誤って呼びかけていた)
そんな中、フォスとカンゴームに緒の浜の見回りを担当する日がやって来た。
道中、カンゴームは自身の左腕が割れかけていることに気付いたが、それをフォスに伝えることはないまま、緒の浜に到着したところで月人が襲来した。
直前にフォスが池に落ちる失敗を犯していたこともあり、一人で先に出ることを宣言したカンゴームは、フォスに見守られる中、単独で月人と対峙した。
ところが大鎌(武器)を振りかぶったとき、割れかけていた左腕が勢いで身体から離れてしまう。吹き飛んだ左腕は、月人の内側へと取り込まれた。
すぐさま助けに入ったフォスであるが、目の前で月人に取り込まれるカンゴームの左腕に集中するあまり、頭上からの攻撃に反応出来ず、首から上を月人の矢で落とされ……奪われてしまった。
奇しくもフォスはアンタークを失った緒の浜で、自分を庇って連れ去られたゴーストのように、カンゴームを助けようとして頭を持って行かれたのである。
その後、頭部以外は修復できたフォスであるが、頭を失ったフォスが再び動き始めることはなかった。(ルチルは腕のように合金が補うことを期待したが、付きすらしなかったらしい)
話を聞いたカンゴームは、以前彼(とゴースト)がペアを組んでいたラピス・ラズリの頭部をつけることを提案する。
「すまない ラピス」
実際カンゴームがどのような心境で、ゴーストと自分が一番大事にしていたラピスの頭を差し出したのか、作中では明言されていない。
しかし頭部を差し出す提案をしたとき、ゴーストの「フォスを守ってね」という言葉を思い出したこと、眠るラピスへ上記の言葉をかけたこと、先生に意思を問われたときに語ったことや直後の反応などから、彼の胸中を窺い知ることが出来る。
こうしてフォスはラピス・ラズリの頭部を接合された。しかし施術後もすぐに目覚めることはなく、永い眠りへとついた。
フォスが目覚めたのは百二年後の春。カンゴームが冬の担当になって、ちょうど百年目となった年の翌春のことであった。
目覚めたフォスは元の性格を残しつつ、ラピスの天才を分けられたことで、それまで以上に深く月人の秘密に迫ることになる。カンゴームはその良き相棒となり、フォスにとっては軽口を叩き合いながらも信頼できる、強い心の支えとなっていく。