概要
”薔薇十字騎士団”の最高幹部で位階は9=2。長い黒髪、死魚の様に濁った黒瞳、怜悧な容貌が特徴。美形悪役。
生体工学を駆使した人造精霊・人造矮人といったオーバーテクノロジーを魔法のように使うことから”機械仕掛けの魔道士(パンツァー・マギエル)”あるいは”魔術師”と呼ばれている。
本作中最年長であるという発言をしたある意味謎の多い男。
名前の元ネタは『銀河英雄伝説』のイザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼンかと思われる。「イザーク(Isaak)」はイサクのドイツ語形だが、「フェルナンド(Fernand)」はドイツ語のフェルディナント(Ferdinand)ではなく、フランス語やイタリア語の形に近いものになっている。「フォン(von)」は例によってドイツの貴族の苗字につく前置詞。「ケンプファー(Kämpfer)」はドイツ語で「戦士」「闘士」。
引用
登場するたびダージリン様のように色々な引用を喋る。
「From the empire」より
- 「“もっとも洗練された仮面は素顔である”――ティレ」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons フロム・ジ・エンパイア』角川スニーカー文庫、2001年、139ページ)
ティレは『神学大全』によると『そばかす』が代表作のドイツの作家らしいが不明。誰か知ってる人がいたら出典お願いします。
- 「“ラグーナの下に眠れ、ヴェネツィアよ。夜を流るるはわだつみの闇。永遠の死を謳うはただ砕ける波”――モーリス・バレス」(『フロム・ジ・エンパイア』177ページ)
モーリス・バレスは国粋主義的な発言で知られるフランスの作家、政治家。元ネタは小説Amori et Dolori sacrum. La mort de Veniseの一節。
Couche-toi, Venise, sous ta lagune. La plainte chante encore, mais la belle bouche est morte. L'océan roule dans la nuit. Et ses vagues en déferlant orchestrent l'éternel motif de la mort par excès d'amour de la vie.
(横たわれ、ヴェネツィアよ、お前のラグーナ〔潟〕の下に。嘆く声がまだ歌っている、だがその美しい唇は死んでいる。海は夜の中に逆巻く。砕ける波が、溢れる生への愛で、死の永遠の主題を曲にする)
『望遠郷5・ヴェネツィア』に名前が挙がっているが、日本語の翻訳があるのかどうか知らないのでこれまたフランス文学に詳しい方いたら追記お願いします。
- 「“死の恐怖は死そのものより厭わし”――シラー」(『フロム・ジ・エンパイア』212ページ)
„Sterben ist etwas mehr als Harlekinssprung, und Todesangst ist ärger als Sterben“
(死ぬってことは、ピエロが筋斗を切るのといくらも違わん、だが、死の恐怖という奴は、死ぬことよりも恐ろしいぞ)
フリードリヒ・シラーの戯曲『群盗(Die Räuber)』第二幕第三場から。岩波文庫で読める。
- 「“この優しき夜、星の精に囲まれて、いざ玉座の月の女王顕れなん。されど、ここには光なく”――キーツ」(『フロム・ジ・エンパイア』224ページ)
キーツの詩「夜鳴鶯の賦(Ode to nightingale)」から。
Already with thee! tender is the night,
And haply the Queen-Moon is on her throne,
Cluster'd around by all her starry Fays;
But here there is no light,
Save what from heaven is with the breezes blown
Through verdurous glooms and winding mossy ways.
(ああ、やっと今、私はお前と一緒になれた! この夜の
何と優しいことか! おそらくは妖精のような星の群れに
かしずかれ、月も女王然として夜空に君臨しているよう。
だが、ここには、ほの暗い木々の間を抜け、曲折した
苔むす小道をかすめて吹いてきたそよ風と、夜空から
漏れてきたかすかな月影が、睦び合っているのみだ)
(訳文は平井正穂編『イギリス名詩選』岩波文庫、221ページ)
「Silent noise」より
- 「“情熱を抱いた女は青銅のように強くなる”――バルザック」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons Ⅱ サイレント・ノイズ』角川スニーカー文庫、2001年、81ページ)
筆記者は本当フランス文学には詳しくないのでこれまたどなたか詳しい方いたら出典お願いします。
「Overcount」より
- 「“人生の半分は仕事であるが、残りの半分も仕事である”――ケストナー」(『サイレント・ノイズ』、132ページ)
エーリヒ・ケストナーの詩„Bürger, schont eure Anlagen“から。
Arbeit ist das halbe Leben,
und die andre Hälfte auch.
(仕事は人生の半分だが、
その半分もまたそう〔仕事〕なのだ)
最後のルビが「オイヒ」とか書いてあるからeuchかと思った。
- 「“生まれ出ようとするものは一つの世界を壊さねばならぬ”――ヘッセ」(『サイレント・ノイズ』、180ページ)
ヘルマン・ヘッセの『ダミアン(Demian. Die Geschichte einer Jugend)』から。『少女革命ウテナ』でも敵が喋っていた。
Wer geboren werden will, muss eine Welt zerstören.
小説だと「ヴェア・ゲボーレン・ヴェルデン・ヴィルマス・アイネ・ヴェルト・ツェルシュターレン」とルビがふってあるが、無理やりカタカナにすると「ヴェア・ゲボーレン・ヴィル、ムス・アイネ・ヴェルト・ツェアシュテーレン」の方が近い。
- 「“絶望している悪魔以上にみっともないものは、この世にない”――ゲーテ」(『サイレント・ノイズ』、213ページ)
ゲーテ『ファウスト(Faust)』第17章のメフィストフェレスの台詞。
Nichts Abgeschmackters find ich auf der Welt
Als einen Teufel, der verzweifelt.
小説だと「ニヒツ・アプゲシュマックタース・フィン・イッヒ・アウフ・デア・ヴェルアルス・アイネン・トイフェル・デア・フェアツヴァイフェル」とルビがふってあるが、無理やりカタカナにすると「ニヒツ・アプゲシュマックタース・フィント・イッヒ・アウフ・デァ・ヴェルト、アルス・アイネン・トイフェル、デア・フェアツヴァイフェルト」が近い気がする。
「Know faith」より
「いつも勝者が敗者の歴史を書き、生き残った者が死者たちの歴史を書くのである――レッシング」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons Ⅲ ノウ・フェイス』角川スニーカー文庫、2002年、223ページ)
ドイツの劇作家で詩人ゴットホルト・エフライム・レッシングの著作„Geschichte als Sinngebung des Sinnlosen“から。
Immer schreiben Sieger die Geschichte von Besiegten, Lebengebliebene die von Toten.
(常に勝者が敗者の歴史を書き、生き残った者たちは死者たちのそれ〔歴史〕を〔書く〕)
ルビの最後は「トイデン」になっているが「トーテン」である。
「Lady guilty」より
- 「“あってはならぬことは、ありえぬこと”――モルゲンシュテルン」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons Ⅳ ジャッジメント・デイ』角川スニーカー文庫、2003年、56ページ)
モルゲンシュテルンの詩「ありえぬこと(Die unmögliche Tatsache)」から。
Weil, so schließt er messerscharf,
nicht sein kann, was nicht sein darf.
(なんとなれば――とあざあかに断を下す――
あってならぬはありえぬだから)
(訳文は生野幸吉・檜山哲彦編『ドイツ名詩選』岩波文庫、1993年、195ページ)
「Radio head」より
- 「『死とは、厳密には人生の最終目標である』――モーツァルト」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons Ⅴ バード・ケージ』角川スニーカー文庫、2004年、239ページ)
元ネタはモーツァルトの1787年4月4日付の手紙。
Da der Tod (genau zu nehmen) der wahre Endzweck unseres Lebens ist, so habe ich mich seit ein paar Jahren mit diesem wahren, besten Freunde des Menschen so bekannt gemacht, daß sein Bild nicht allein nichts Schreckendes mehr für mich hat, sondern sehr viel Beruhigendes und Tröstendes!
(Wien 4. April 1787.)
岩波文庫と講談社学術文庫で訳されている。「死は、厳密な意味で、我々にとっての人生の最終目標ですから」みたいに訳されていた。
「Public enemy」より
- 「待つとは先に立って急ぐこと――トーマス・マン」(『トリニティ・ブラッド Rage Against The Moons Ⅵ アポカリプス・ナウ』角川スニーカー文庫、2005年、58ページ)
元ネタはトーマス・マン『魔の山(Der Zauberberg)』の一節。
Warten heißt: Voraneilen, heißt:
ルビは「ヴァルテン・ハイスト、フォラナイレン・ハイスト」となっているがどっちかというと「ヴァルテン・ハイスト、フォアアナイレン、ハイスト」かと思われる。