概要
ガラス管内に水銀が封入してあり、放電により水銀蒸気を発光させる。
しかし、そのままでは、青白い光と紫外線のみを発するだけであり、照明にはとても使えないので、内部に紫外線を受けると発光する蛍光体を塗布してある。1種類の蛍光体だけでは白色光が出ないので三原色分混合して塗布してある。
歴史
原理の発見まで遡ると白熱電球と同等に古いが(ガイスラー管)、実用化されたのは1934年である。第二次大戦直前に日本でも製造・販売が開始されたが当時はまだ非常に高価な機器であった。
戦後もしばらくの間高価であったのは変わりがないが、戦時中の灯火管制の反動から明るさを求める向きが非常に多く、日本では爆発的に普及した。LED照明が実用の域に入る前、日本の家庭用照明の98%が蛍光灯であったといわれる。
しかし蛍光灯も水銀灯の一種なので、2020年の水俣条約の発効をめどに生産が中止となる。既に照明器具単体の新品は家電屋で売っておらず、替えパーツとしての蛍光管や電球型蛍光灯の販売にとどまる。
発光させるための仕組み
手動式
ONボタンを長押しすると蛍光管の電極に電流が流れて放電準備のための加熱が始まり、その後ONボタンを離すと安定器というコイルからキック電圧と呼ばれる高圧が電極に印加され放電が始まり点灯する。いったん放電が始まれば、後はコンセントからの電源のような低い電圧でも放電は続く。
消灯する際はOFFボタンを押して回路を切り離すと電力供給が途絶えるため放電が止まり消灯する。
ちなみに、手動式はその構造上消灯/点灯に係わらず常に電極にコンセントからの電圧がかかっているため蛍光管の交換時は感電事故に注意。
グロー式
放電準備のための加熱の時間調整をグロー管という小さな電球のような放電管で自動的に行う。グロー管は電極にバイメタル(熱膨張率の異なる金属同士を貼り付けたもの)を使用し、管内の放電の熱による温度で自動スイッチとして働き、手動式の長押しに該当する動作を自動的に行う。
通電するとグロー管の放電が始まると同時に電極の加熱が始まり、その後グロー管の電極がくっつくとグロー管の放電はとまり電極が離れる。すると、安定器からのキック電圧で放電が始まる。
※手動式・グロー式の安定器は一種の変圧器で鉄心を有し、電圧と電源周波数に対応した磁束密度→鉄心厚さが設定されている。通常、世界の大多数の国ではこの規格は国内に1通りしかないため問題になりにくいが、日本だけは東西で周波数が2通りになっているため、誤った器具を使うと過大電流が流れて焼損する恐れがある。
インバータ式
インバータで始動電圧を印加する。その後点灯を維持するだけの電圧に落とす。単純なものでは電圧の安定化をしていない(※)発振回路を目的の蛍光灯に合わせた特性に製造してあるが、高度なものではマイコンによる制御で点灯時の始動電圧印加と点灯維持を行うほかに、明るさを変えられるものもある。インバータ式は電源周波数よりはるかに高い周波数(大体数十kHz位)で点灯させるため、点灯中のちらつきを感じにくい利点がある。現在市販されている電球型蛍光灯は全てインバータ式で、その構造上気温が低いとなかなか動作せず点き始めはかなり薄暗くなる(灯具本体にインバータがあるタイプだと室温の範囲内ではそこまでの不調を来さないが、更に下がれば同様に暗くなる)。
※・・・電流が流れていないときに高圧が生じ、電流が流れ出すと電圧が落ちる。
こぼれ話
- 蛍光灯下で色褪せや樹脂の変色・変質が起こるのは、紫外線が洩れているため。
- 蛍光体を塗布していない蛍光灯は、殺菌効果の高い紫外線が出るため殺菌灯とよばれ主に殺菌に使われる。目に有害なので殺菌灯の光を見てはいけない。
- 欧米、特にヨーロッパ諸国においてはオフィス・公共空間用としては普及していても、家庭用としてはほとんど普及していなかった。たいてい白熱灯である上、日本のような天井照明一本ではなく、床置・壁付けの照明を組み合わせた照明が普通であるため、白色の蛍光灯が天井からぶら下がって発光する日本人世帯の家は、一発で見破られ空き巣に入られることもあったという。