リョウ・ルーツは、『ガンダムセンチネル』に登場する架空の人物。
鋭い目つきとボサボサに逆立てた髪が特徴。階級は少尉。22歳。通称は「R&R」。
同作品は映像化されてはいないが、ゲーム等ではCVを藤原啓治氏が当てている。
性格としては、自信過剰で功名心や自尊心が強く、社会性や協調性に欠ける不良青年(今風に言うところのDQN)。
『ガンダム』シリーズのメインパイロットではあるが、人格的にも技量的にも未熟で、初出撃では失禁し、最終決戦ではシステムに翻弄されてうろたえるばかりとヒロイックな面は殆ど無い。
劇中での活躍
職業訓練校のつもりで軍に入隊したが、シミュレーションばかりの訓練に辟易し、ルールに歯向かっては繰り返しトラブルを起こしていた(訓練生時代の一年で上官反抗6件、傷害事件2件、命令違反9件、規律違反14件)。その後、実験MS隊に配属(※注1)され、ここでも早々に喧嘩をして(相手は後に戦友となるシン・クリプト)3日間の重営倉入りに処されるなど、軍のどこでも厄介者扱いされていた。その根底には、1年戦争で父を亡くし、母親は仕事(※注2)に執心して家庭を顧みなかったという環境が影響しているようである。
2年後、小惑星ペズンでニューディサイズの反乱が起きると、ルーツは討伐隊であるα任務部隊・第110MS戦隊に配属され、実戦に臨むことになる(この時には既にクリプトとは親友になっていた)。その際、MS戦隊指令としてストール・マニングス大尉、同僚としてカラバ出身のテックス・ウェスト少尉と出会う。
ルーツ初の実戦は、ニューディサイズが立て篭もる小惑星ペズンの発電衛星SOL7804の破壊任務であった。Sガンダム(ブースターユニット装備型)に搭乗したルーツは出撃前は自信満々だったが、ブースターの加速Gに圧倒され、敵の弾幕に突っ込む恐怖に小便を漏らしてしまい、マニングスにもそれを看破されるなど散々であった(発電衛星の破壊自体には成功している)。
その後、訓練でのミスで罵倒され、同僚からも失笑されたルーツは激怒してマニングスに喧嘩を売り1対1の模擬戦になるが、マニングスの搭乗するネロ・トレーナーにSガンダムで完膚なきまでに圧倒されてしまう。また、戦場で対峙したジョッシュ・オフショーのゼク・アインに対しては、相手の技量が上であることを悟った悔しさから直情的にタイマンを挑もうとするが相手にされないなど挫折を味わう(ちなみに、ALICEが初めて覚醒の片鱗を見せたのがオフショーとの戦闘時であった)。だが、その後も実戦を重ねる度にマニングスと衝突、主力機ネロ隊のパイロットであるチュン・ユンとの確執も深まり、ルーツらガンダム隊は部隊の中から浮き上がってしまう。
しかし、α任務部隊がニューディサイズの罠によってピンチに陥った時、動けなくなったチュン・ユン率いるネロ隊を助けたり、戦友クリプトのFAZZ隊が全滅した際にはマニングスの冷徹な態度に怒るが、マニングスの尤もな反論に感情を抑えるなど、僅かながら成長の跡を見せる。それと同時に、彼の不条理さに反応したALICEが徐々に自分の意思を持ち始める。
そして、月面・エアーズ市において、ルーツは敵将ブレイブ・コッドの駆るガンダムMk-Ⅴと対峙する。コッドの圧倒的な技量で幾度も追い詰められるが、ピンチになる度に瞬間的にALICEが彼を救う。それでも最終的に撃破される寸前の状況になり、ルーツがパニックに陥った際、ALICEは覚醒し、彼に代わってEx-Sガンダムをコントロール。襲い掛かるMk-Ⅴをビームサーベルで撃破した(この時、ルーツは泣きながら死にたくないと叫んでいるだけだった)。
その後、ルーツはALICEの覚醒に気付いたマニングスとの模擬戦に臨み、やはり技量で圧倒されるが、ALICEの発動で勝利。この頃から、ルーツはマニングスを越えるべき壁として認識し始める。また、Sガンダムの分離戦闘機であるGアタッカー・Gボマーに搭乗するクリプトやウェストにリーダーシップを発揮し、ネオジオンのガザC編隊を威嚇して追い払うなど、徐々に人格的な成長も見せるようになる(※注3)。
ニューディサイズ残党との地球軌道上での最終決戦において母艦を守ってマニングスが戦死した際、ルーツは壁を殴りつけてマニングスを越えられくなったと嘆く。その後、戦場で分離したSガンダムを合体させる際には、反目していたチュン・ユンが身を挺してSガンダムを守り、搭乗したルーツとクリプト、ウェストの3人の意思統一を果たす。だが、その戦闘中にALICEが覚醒、3人は混乱したままALICEの戦闘を見守るだけになってしまう(最終的にALICEは3人のパイロットを救うべくコクピットであるGコアを分離、残ったパーツのみでニューディサイズ残党の乗ったシャトルを撃破して大気圏に散っていった)。
こうしてALICEに救われたルーツは、クリプトとウェストと共に大気圏を抜け、航行していたガルダ級輸送艦に見事に着艦、任務を完了する。その際、胸の中でマニングスの名を呼ぶなど、兵士として、また人間として彼は成長を遂げていた。
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(注1)これは、Sガンダムに搭載されたALICEシステムのパイロットをメンタルテストによって選抜する目的があった。ALICEシステムを「男の我が儘が理解できる”いい女”にする」ために、パイロットはいわば「常識では判断できない危険な男」である必要があった。ALICEを導くそのパイロットは『不思議の国のアリス』から「チェシャ猫」のコードネームで呼ばれ、最終的に選ばれたのがルーツであった。
(注2)連邦軍での学習コンピュータシステムの研究。これこそがSガンダムに搭載されたALICEシステムであり、皮肉にもルーツの命を救うものとなった。尚、この研究に偏執していた母親は、原因不明の爆発事故(システムの完成を妨害しようとする連邦軍内の分子によるものと思われる)によって死亡している。
(注3)彼の性格に関して、ウェストは「自由な心を持った、当たり前の人間」と評し、上下関係などの枠組みを嫌う彼に理解を示している。一方で、ウェストより付き合いの長いクリプトはルーツを「難しいことは考えてない」「孤児の独りよがり」と断じているが、これもまた彼の正しい捉え方である。一見矛盾しているようだが、これが彼の不条理さであり「チェシャ猫」に選ばれた理由でもあるのだろう。ちなみに、作者自身もルーツのことを「書いててイヤになる位よく分かんない人間」と述べている。