概要
アニメ『Free!』に登場するキャラクター山崎宗介×松岡凛のBLカップリング。
凛はFree!第1期からの初期キャラクターであるのに対して、宗介は第2期にあたる『Free!-Eternal Summer-(以下ES)』からの登場であることに注意(原案小説の『ハイ☆スピード!』には1作目から登場している)。
ストイックかつシビアで何事にも冷静だが年相応の茶目っ気も併せ持つ宗介と、熱血ロマンチストがゆえに涙脆く感受性豊かな凛という性格のバランスが良い二人。
イメージカラーのエメラルドグリーンと赤は互いに補色であり、ビジュアルも並んだ時のバランスを考えてデザインされている。身長は185cmと177cmの8cm差(3期では二人とも身長が伸び186cmと179cmの7cm差になった)。体格や肌の色の違いにも注目。
公式のアニマルモチーフは凛がシャーク(ホオジロザメ)で宗介がホエールシャーク(ジンベエザメ)と同じ鮫の仲間である。また、『ES』の職業パロディでは二人一緒に警察官に設定されている。
二人の関係性は多様で、小学生以来の幼馴染でもあり、水泳選手として切磋琢磨するライバル同士でもあり、何かと勝負事に持ち込むのが好きな年相応の親友同士でもあり、良き理解者同士でもある(凛は小学生の時点で宗介を「俺の1番の理解者」と語っている)。現在は卒業しているが、鮫柄学園水泳部の部長と部員、チームメイト、クラスメイト、学園寮のルームメイトでもあった。他キャラクターの中の人達からは二人のとあるじゃれ合いシーンを指して「彼氏と彼女」「恋人の所業」と茶化されたことも。
この二人のスキンシップとして特筆したいのがフィストバンプ(拳を合わせる行為)。小学生時代からの二人の習慣のようなもので、日常の一コマから試合の前後まで頻繁に行われている。また凛は足癖が悪いらしく、宗介に対してだけは膝で小突くなどしてよくじゃれている。作中ではどちらかというと精神年齢高めの二人だが、一緒にいると幼馴染らしく無邪気に振る舞うことも多い。宗介は凛を泣き虫ネタでからかうのがお気に入りなようである。
また宗介の好物であるコーラは、ESから3期に至るまで二人のシーンを印象付けている重要なアイテム。凛はコーラが特別好きなわけではないようだが、宗介といるときはコーラを好んで飲んでいることが多い。
(※以下アニメ本編・書籍関連などネタバレ注意)
アニメ1期
1期の時点で宗介は登場しないが、後に発売されたノベライズ版には多少描写が存在する。詳しくは後述。
1期の凛は高校2年生。水泳選手としての挫折を味わい絶望の淵にいたところを七瀬遙達仲間に救われた。
アニメ2期(ES)
ESの宗介と凛にとって重要なポイントは「二人が小学生の時に交わした約束」「擦れ違い」「宗介の抱える事情と凛への思い」であると言える。
・小学生の時に交わした約束
ESの時点で凛達は高校3年生。凛は鮫柄学園水泳部の部長に任命され、心機一転新学期をスタートさせようとしていた。そんな時東京の鯨津高校から転校してきたのが親友の宗介である。
5年ぶりの再会にも関わらず昔と変わらない仲の良さを発揮する二人。昔から一つのアイスを賭けてジャンケンをしたりスイミングクラブ(以下SC)への道をかけっこしたり、いつどんなことでも競い合うのが好きな二人だった。ただ一度だけ、小学生の時に異質なものを賭けて勝負したことがある。それは「負けた方が勝った方の言うことを何でも一つ聞く」という約束を賭けた勝負だった。結果は宗介の勝ち。しかし宗介は要求する内容が思い浮かばず、結局保留になった約束は果たされないまま、5年の月日が流れたのだった。
・擦れ違い
宗介と凛の出会いは小学校1年生の時。二人が通っていたSCで宗介が凛に声をかけたのがきっかけである。凛が岩鳶SCに移るまでずっと一緒のSCに通っていたが、リレーを共に泳いだのはただの一度きり。それは仲間と作り上げるリレーを大切にする凛に対して宗介が「誰かのせいで負けたり、たとえ勝っても自分一人の力じゃない、そんなリレーはつまらない」と主張したため。「俺は俺のために泳ぐ。俺だけのために、俺自身の責任で泳ぎたい」とも言い放っている。凛はその言葉に愕然とし(公式本で凛のトラウマとも)、その後二人が共にリレーを泳ぐことはなかった。
仲直りを済ませ関係こそ悪化しなかったものの、結果としてこの衝突は二人の行く末に大きな影響を与えてしまう。小学校6年生の冬に凛は「遙と同じチームでリレーを泳ぐ」という願いを叶えるために遙を追いかけて岩鳶小学校へ、岩鳶SCへ移っていってしまった。宗介はそんな凛に少しの動揺を見せたものの、自分と凛はライバルだから同じチームである必要はないとし、引き止めるようなことはしなかった。その後凛は遙達の前で寂しそうに宗介のことを語っている。
小学校卒業と同時に凛はスポーツ留学で渡豪したため、二人は離れた地でそれぞれ競泳選手を目指し修行を積むことに。凛が挫折に直面するまでは手紙での交流が続いた。手紙が途絶えた後もいつか世界の舞台で出会えることを信じ、宗介はひたすら練習に打ち込み続けた。やがてそのストイックさは諸刃の剣となり…。
ちなみに宗介は中学時代にも高校3年時にも遙と接触を計っているが、嫉妬心や遙の競泳スタンスへの苛立ちから高圧的な態度を取り続けた(現在は和解している)。
・宗介の事情と凛への思い
鮫柄学園に転入した宗介は凛が部長を務める水泳部に入部。高校3年生という妙な時期の転校については「大学のスカウトを受け卒業後の行先が決まったから、高校最後の1年は地元で好きに泳ぐことにした」と語った。そして保留にしていた「何でも言うことを一つ聞く」という約束の要求として「俺もまたリレーがしたい」と凛に告げる。凛はリレーを否定した当時の宗介を思い出し困惑。宗介は切実な面持ちで凛に畳み掛ける。「もうあの頃とは違う。お前とリレーを泳げば、何か分かる気がするんだ」と。凛は部長としてこの件は約束の適用外としたが、宗介の熱意を受け取り、鮫柄でのバッタの最速記録を持つ自分に勝てたらリレーへの参加を認めると告げた。結果宗介は凛との勝負に勝利し、二人は再びチームを組む事になる。
時は進み大会の季節。自ら望んだ凛とのリレーを経て、宗介は表情を曇らせた。凛とリレーを泳げば何か見つかると思っていた、その何かが見つからなかったと。凛も宗介の様子がおかしいことに気付き始める。
宗介は凛に嘘をついていた。肩の故障のこと。自分の選手生命が終わりに近づいていること。世界を目指す者としてのタイムリミットはとうに過ぎていること。再会する前に一度だけ凛の泳ぐ姿を見に行っていたこと(それが1期最終話の、凛を絶望から救った遙達とのリレーが行われた大会だった)。
いつか世界の舞台に立ち、そこには凛もいる―――その夢は潰えたが、凛と遙達のリレーは空っぽだった宗介の心に「最後に本当の仲間として凛とリレーを泳ぐ」という新たな希望を芽生えさせた。小学生の時は意固地になって気付けなかった、本当はずっと凛と泳ぎたかったのだ。
それら全部、宗介は凛に隠し通そうとしていた。自分が故障して水泳をやめることを知ったら、涙脆い凛はきっと泣いてしまうだろうと。凛を傷つけたくないが為の優しい嘘だったのだ。全てを知らされた時、凛の目からは涙が溢れた。
無茶をすれば二度と泳げなくなるかもしれないと嘆願する凛だったが、ついに宗介、後輩の似鳥愛一郎、御子柴百太郎の4人で最高のリレーを泳ぐことを決心する。持てる力全てを賭け泳いだ最高のリレーを終えると、宗介は晴れやかな表情になっていた。
宗介の真意が語られ最高のリレーが完成するES10話は宗介と凛の核となる回である。
3月、部活最後の日。凛は宗介に「待ってる」と告げた。「お前が戻ってくるのを待ってるから」と(これを言われて辛いのは宗介だと理解しつつも言わずにはいられなかった、と公式本にはある)。宗介は嬉しさと辛さの狭間で希望的な目を見せ「考えておくよ」とだけ答えたのだった。
映画ハイスピード!-Free! Starting Days-
岩鳶中学校を舞台に遙や橘真琴が新たな仲間達と新たな絆を結ぶ物語のため、宗介と凛の出番は少なく、またその描写も切ないものが多い。本作の監督は宗介を描写するにあたって「宗介を描くということは、宗介にとって凛という人物がどれだけ大事な存在かを描くということとイコールなのではないか、と思いました」とパンフレットで語っている。その通り、宗介のシーンは凛への切々とした思いで溢れている。
劇場版 Free!-Timeless Medley-約束(TM約束)
凛を主人公に据え、上記『ES』の宗介と鮫柄学園に焦点を絞った劇場版総集編。凛と宗介が好きな人には感慨深い作品だと思われる。凛が鮫柄学園で宗介達と共に最高のチームを作り上げるまでの高校3年最後の夏が作品として一本化され、より熱い演出になった。劇伴も一新され雰囲気が大きく変わってる。
特別版 Free!-Take Your Marks-(TYM)
『ES』のその後を描く続編。遙達が高校を卒業した3月の物語。宗介の進路にも光明の兆しが。
初登場時の頃と比べると宗介も凛も纏う雰囲気が優しくなっている。特に凛は見違えるように穏やかで素直な表情を見せるようになった。
内容としては、ひょんなことから宗介と凛に後輩から温泉旅行のペアチケットが贈られたり、そこに似鳥と百太郎が加わり鮫柄リレメンの4人で温泉旅行へ出掛けたり、凛が宗介の今後を気に掛けていたり、チームの絆を通して宗介が未来への決意を固めたり、感動映画を見に行って泣く凛とそれをからかう宗介が見られたり(映画のペアチケットも後輩から宗介に贈られ宗介が凛を誘ったという経緯がある)、と見どころもたくさんである。特に温泉回は宗凛と鮫柄好きなら必見。中の人にカレカノといわしめたのもこの回。そしてオーストラリアへ再出発する凛と日本に留まる宗介のフィストバンプには込み上げるものがあるはずだ。
アニメ3期Free!-Dive to the Future-(DF)
宗介の進路を巡る顛末については明確に答えが出た。てっとり早く結論が知りたいクラスタやそうでないクラスタも「Free! DF エンドカード 10話 Twitter」で検索してみてほしい。
遙達が大学に入学した春から物語は始まる。物語開始時点で凛はオーストラリアで修行に励み、宗介は地元の佐野で家業を手伝いつつ病院に通い、後輩たちの水泳の指導も行っていた。宗介サイドは肩の手術に至るまでの決断が課題として描かれている。
遠距離になってしまった二人ではあるが、宗介が一方的に凛を思う描写の強かった『映画ハイスピード』や『ES』の頃に比べ、凛が宗介を大切に思う気持ちも明確になっており、作中の端々で二人の繋がりを感じることができる。
1話、凛への書きかけの手紙を前に思案する宗介。従兄の数馬と家業についてのやりとりをする。
3話、凛はオーストラリアで、師のミハイルの弟子入り志願に来た桐嶋夏也に出会う。数日の間に親交を深めた二人。そして勝気に勝負を申し込んでくる夏也の様子を見て凛は「宗介みたいだ」と笑い、幼い頃から何でも勝負に持ち込む親友兼ライバルがいること、その親友は肩の故障で今は泳いでいないこと、けれどもまた一緒に泳ぎたいと思っていること、などを語った。凛の話を聞いた夏也は自分にも泳ぎたい相手がいたことを思い出し、日本へと帰って行くのだった。
4話、松岡江に自分の今後のことを凛には直接伝えたいと打ち明ける宗介。
5話、帰国した夏也は岩鳶・鮫柄・湊風館高校の合同合宿にOBとして参加する。そこで同じくOBとして参加していた宗介と再会(この2人はTYMで出会っており、故障の話題なども交えている)。夏也はオーストラリアでのとある日本人との出会いを宗介に語った。「子供の頃から水泳選手を目指している、スゲー真っ直ぐな奴がいた」「友達とまた一緒に泳ぎたいと話していた」と。宗介はその話を聞くと凛を連想して笑い、「一緒に泳ぐ」という言葉を噛み締める。そして完全に選手復帰するためには手術が必要なこと、治療が合わなければ選手への道は完全に閉ざされることを打ち明けた。夏也は宗介を鼓舞し、別れ際にコイントスを持ちかける。コイントスの結果で進路の行先を決めてみるのもいいだろうと。宗介はその提案をすんでのところで制し、自分のことは自分で決めると言い切った。そして互いの健闘を誓って別れるのだった。
7話、手術のために東京の病院へ行く準備をする宗介。従兄の数馬と胸中を語らう。
9話、帰国した凛は鮫柄学園を訪問し、再会した似鳥と百太郎から宗介が手術で東京へ向かったことを聞かされる。心配する二人を凛は宗介の理解者らしく励ますのだった。
10話、凛と宗介の再会。手術結果の報告。耐え切れず泣いてしまう凛。二人が互いを大切に思う気持ちが隅々から溢れている繊細なシーンなので実際に確認してほしい。凛が宗介に買ってきたお土産にも注目。ちなみに10話のエンドカードはこのエピソードの直後に宗介が自撮りしたものだと思われる。よく見ると凛の目の端に涙が浮かんでいるのがポイント。
11話、いきなり下方から凛に顔を寄せ「俺に負けても泣くなよ」とからかい出す宗介。ムキになって反論する凛。無邪気に笑う宗介。二人が未来の話で明るく冗談を言い合えるようになったことに胸が熱くなる一幕。
最終話、凛はバッタで全日本選抜を通過し世界への切符を手にする。宗介はコーラで凛の勝利を祝った。その際宗介は右手で凛にコーラを投げ渡しており、ESで凛から投げられたコーラを肩の痛みで取り落としてしまったシーンと対照的に描かれている。宗介は必ず凛に追いつくことを誓い、フィストバンプを交わした。
3期の二人の物語はここまでだが、2020年に続編があることが示唆されており、二人が泳ぐ姿はそこで見ることができるかもしれない。期待して待ちたい。
その他
14話
『ES』の円盤7巻に収録されたOVA。宗介と凛の絡みこそ少ないが伝説の「あーん」シーンがあったりする。
TV Animation Free! Novelize
1期のサイドストーリが詰まった短編集。まだ荒れていた頃の凛が宗介のことを思い出して感傷的になったり、泣きそうになった時に宗介(ぼかされているが、おおよそ宗介で間違いないだろう)の「泣くなよ、凛」という声が頭に響くなどレアな一面が垣間見える。宗介パートも多くはないが故障や凛のことで重い描写が続く。
キャラクターソングシリーズ
宗介キャラソンの2曲『明日へのLast Race』『Just Wanna Know』はどちらも水泳と凛への痛切な思いが歌われている。切ない良曲。
声優陣、製作スタッフから見た宗介と凛(一部抜粋)
※当然だが声優陣、スタッフの言葉には腐向けの意図は含まれていないことに留意。
宗介役の細谷氏は「凛は挫折もあったけど、宗介にしてみれば光。」「とにかく宗介は、凛のことが好きすぎなんですよ」と語り、それに対してシリーズ構成・脚本家も「そうそう」と肯定し「(宗介の)遙への対抗心も凛あってのことなので」と答えている(アニメージュ/2014年9月号)。
またTMシリーズ以降の監督も宗介については「無骨ながらも凛にも競泳に対しても一途で真っ直ぐないじらしさ」を抱えていると語っている(SPECIAL BOOK Free! TYM)。
凛役の宮野氏は凛にとっての宗介について問われ「宗介の存在は計り知れないほど大きいもの。凛自身が味わったことのある挫折と苦しみ、それよりももっと辛いはずの宗介の現状。それでも『今、生きること』を大事にした宗介の存在は、凛の中に愛と勇気と前を向く力をくれました。なので凛は今それしかできないけど「信じる」ことを忘れずに前を向くのです。凛の根底にある『強さ』と『優しさ』を成長させてくれたのが宗介という存在なんです。あと、『涙もろさ』も(笑)」と語っている(spoon.2Di/2017年vol.28)
ちなみにspoon.2Diのこの号で初めて宗介と凛が雑誌の表紙を飾った。
またTM約束の円盤には舞台挨拶の映像が収録されている。そこで宮野氏が語る細谷氏とのエピソードは胸に刺さる人も多いのではないだろうか。