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P-8の編集履歴

2018-11-04 12:45:33 バージョン

P-8

ぴーえいと

ボーイング737をベースにした哨戒機。愛称はポセイドン。前任のP-3オライオンの後継として2010年代から配備が始まった。

概要

日本でも馴染み深い民間旅客機ボーイング737をベースに開発されている。


前任のP-3はアップデートを繰り返して長く現役を保ってきたが、それも限界が近づいてきていたため、1980年代から後継機の研究が始まっていた。当初はP-3のエンジンなどを改良したP-7が開発されていたが、開発遅延と予算超過により開発中止となってしまった。


2000年から再度、P-3後継機の競争を行う事になり、ボーイングとロッキード・マーティン、BAEシステムズが応募した。ロッキード・マーティンはP-3をアップデートした「オライオン21」、BAEはニムロッドの新バージョン、ボーイングは737の改修型である「737MMA(多用途海上航空機)」を提案し、結果ボーイング案が採用を勝ち取った。


試作機の初飛行は2009年4月25日。その後開発は難航したものの、2012年になって量産機の配備が開始、沖縄にも配備された。以降、南沙諸島における「航行の自由」作戦や墜落したマレーシア航空370便の捜索任務などで着実に実績を重ねている。


仕様

機体は当時の最新モデルのひとつ、737-800型がベースになっている。

P-3と同様に機体下部にソノブイ発射口や爆弾槽を備え、対潜爆弾や魚雷などの兵装を搭載できる。ソノブイはP-3Cより発射口の数こそ減ったが単純な搭載量は増加しており、全て機内から装填する事が可能である。

各種電子機器の新世代化・自動化に伴い、搭乗員の数も減り省力化されている。


しかし、ジェット旅客機をベースにした事は、本機にひとつの問題を生み出している。

それは、低空飛行に向かないという点である。

哨戒機は、海をじっくり監視するという任務の性質上、低空で長時間飛行する能力が要求される。

しかしジェット旅客機は、高高度飛行での経済性・快適性を最優先する。つまり、哨戒機のベースとするにはそもそも相性が悪いのである

航続距離自体はP-3より優れているとはいえ、ジェットエンジン故にP-3で行っていたエンジンを1、2発止めて飛行するロイター飛行ができず(プロペラピッチをフルフェザー(プロペラブレードの角度を機体と平行にする)にして抵抗を減らせるプロペラエンジンと異なり、停止したエンジンの空気抵抗を減らすことができないため、そのままどでかい空気抵抗の塊になりかえって燃費が悪化してしまう。ましてや双発機でやれば4発機よりもさらにバランスが崩れやすくなり、ますます燃費の悪化につながる)、低空での小型船舶に対する監視飛行には不向きとされている。

一応、紅茶の国ニムロッドという前例はあるが、あちらは4発エンジンを主翼の根元に装備するという特異な設計のおかげでロイター飛行のリスクが少ないという、むしろ異例な部類に入る。


そのため、P-8はP-3では試験のみに留まった空中給油に対応したほか、RQ-4グローバルホークをベースにしたUAVMQ-4Cトライトンを相方として用意し、普段の監視飛行はMQ-4Cに任せ、何か発見したらP-8を向かわせるという『哨戒機兼UAV指令室』的な運用を想定している。

もっとも、空中給油装置は空軍規格のフライングブーム方式(海軍の機体が空軍規格のフライングブーム方式を採用するのは実はこれが最初ではなく、E-6マーキュリーという前例がある)であり、MQ-4Cに至ってはまだ試験段階で配備はもう少し先の事になる。

P-8単体でも高額なためP-8のみを購入する軍もあり、単独で全く何もできないという訳でもないのだが。


この関係で低空での哨戒飛行を想定していないため(アメリカ海軍は高度600m以下での運用は想定していないとされている)、P-8の哨戒機材は高高度運用に特化されており、それまでの哨戒機の基本装備ともいえるMAD(磁気探知機)ブームを備えていない(装備自体は可能で、インドに輸出されたモデルには装備されている)。


それでも、既存の旅客機をベースとした事で信頼性が高いのは間違いなく、イギリスオーストラリアニュージーランドに輸出される事が既に決まっている。

むしろ「P-1はアメリカでさえ断念した完全新規開発機という贅沢な品」という意見もある。


余談

実は、P-8が配備される30年も前からボーイング737を哨戒機として使っている国がある

インドネシアである。

インドネシア空軍は、初期型のボーイング737を哨戒機に改造した「サーベイラー」と呼ばれる機体を現在に至るまで使用し続けている。

こちらはあくまでも洋上哨戒機であり対潜能力は有していないが、ある意味このサーベイラーこそがP-8の遠いご先祖様と言えるのかもしれない。

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