概要
何処かで見た事のある白髪に赤眼の兎のような容姿をしている。一人称は「私」(本来は「僕」)。
田舎村でハーフエルフの義妹フィーナと共に暮らしており、悪戯好きな夢見がちな少年。『英雄日誌』を常備しており、何か事があれば綴っている。
英雄となるべく、田舎を出て王都ラクリオスへと向かった。
人物像
夢見がちな幼い少年であり、道化のように振る舞っている。しかしこれには理由がある。
いつも義妹のフィーナや村人を振り回して、迷惑をかけては人々を笑顔にしていた。
アリアドネからはその性格上「気持ち悪い」等と散々言われた。だがお人好しで、国で差別されていたフィーナを助けたりと、他人に笑顔を振り撒いている。
ある人物は教養の深さから元はどこかの王族なのでは?と推測した。
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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか アルゴノゥト ベル・クラネル
以下、「アルゴノゥト」に関してのネタバレ
アルゴノゥトは英雄となるべく、義妹のフィーナと共に王都ラクリオスへ向かう。
道中、『英雄候補』達に遭遇した。『狼』の部族ユーリ、流離妖精リュールゥ、ドワーフの戦士ガルムス、占い師オルナ、暗殺者エルミナ、そして金髪の王女アリアドネに出会い、親睦を深めて(?)いく。
その最中、アルゴノゥトは王女が檻に閉じ込められたという事を耳に入れた。
しかしアルゴノゥトはアリアドネに会う事は許されず、他の『英雄候補』と「雷公」と呼ばれる将軍と共に侵略者からの戦争へと参加した。
しかし、そこで彼等は信じられないものを目にする。
「人を……食べてる?」
「雷公」――否、『ミノタウロス』が人間を食い荒らす様を。
三大前のラクリオス王家に『天授物(アーディファクト)』と呼ばれる神秘の鎖が天より落ちた。それを王都の者共はミノタウロスに向かって投げ付け、従わせる事に成功した。
『楽園』の名を借りた王都は、全て醜悪な魔物によって築き上げられたのだと、アルゴノゥト達は悟った。
そしてアルゴノゥトは反逆者として国を追われる身となった。王女アリアドネを連れ去った逆賊とされたからである。当然、アルゴノゥトはそんなことはしていない。つまり王が口封じのためにアルゴノゥトを殺そうとしたのだ。
アルゴノゥトは無事和解したオルナと共に城から逃げ出そうとした。追跡者から追われた所を助けられたクロッゾと言う精霊の血を継いだ鍛冶師と協力し、王都から逃げ出した。
途中、クロッゾの意見で、『ジュピター』という雷の精霊と(半ば一方的に)契約し、『雷霆の剣』を手にする。
三人で王都に戻ったアルゴノゥトは、民衆の前で剣士らしい服装『雷霆の剣』を掲げて「彼の「雷公」は死んだ! そして私が「雷公」の継承者だ!」と宣言した。「雷公」など最初から存在しないのだから、当然、王はアルゴノゥトの虚言を虚言だと証明する術はない。
何も知らない民衆たちはアルゴノゥトを本当の「雷公」だと思い込んだ。
程なくして、アルゴノゥト一行は迷宮へと向かう。魔物、王国騎士、他の『英雄候補』に追われる中、アルゴノゥトは生きているのが不思議な程な重傷を負ってしまう。
アルゴノゥトと合流したオルナはここで本心を吐きだした。
「少しはわかりなさいよ! 貴方を死なせたくないって! 私が、貴方に死んでほしくないのよ!」
「武器化した『精霊の剣』。それは貴方じゃなくても使える筈。貴方が戦う必要なんてどこにもない!」
「貴方が『英雄』じゃなくてもいい、そうでしょ!?」
オルナは今まで隠していた、いや許されなかった想いを全てアルゴノゥトにぶつけた。
それに対しアルゴノゥトは――それでも行こうとした。自分が姫の元へ行かなければならないと。
「……そうだ。『英雄』は私じゃなくてもいい……。でも、この『道化』だけは私がやらなくては」
人々を笑顔にするために。ならばまず僕が笑わなければ。
アルゴノゥトは今まで泣いた事はなかった。誰の前でも笑って、『道化』だと言われた。
「行かせてくれ、オルナ」
――斯くして、アルゴノゥト、オルナ、フィーナの三人は姫の待つその部屋へ。
アリアドネを救い、アルゴノゥトは一人猛牛の戦士と決着を果たす。
「待たせたな、ミノタウロス! 準備はできたぞ我が敵よ!」
……今までミノタウロスに、怒りと憎しみをぶつける者はいた。恐怖と絶望を叫ぶ者はいた。
けれど、笑みを向けた者はいなかった。
アルゴノゥトがミノタウロスの初めての相手。
アルゴノゥトがミノタウロスの初めての『敵』。
アルゴノゥトの劇場が、始まった。
アルゴノゥトとミノタウロスの激戦――。そしてミノタウロスの猛攻が遂にアルゴノゥトの顔を直撃する。
「がっっ――」
アルゴノゥトは、目を失明していた。
視力を完全に失い、『英雄日誌』を綴る事も出来ない。
ミノタウロスが止めの一撃を放とうとした、その時。
「ごめんなさい、アルゴノゥト……。貴方たちはの決闘に踏み入って……」
アリアドネ。
アリアドネが『精霊の剣』を手に取り、アルゴノゥトを助けたのだ。
「私は守られるだけなんていや! 私は貴方を助けたい! 貴方を支えたい!」
王家の人間として。アルの姫として。
彼女は彼の剣を取り、二人でミノタウロスとの『運命』を断ち切ろうとした。途中うっかり姫のお尻を揉む等というドタバタがあったりしたが(「黙って揉むなぁ!」「ぐはぁっ!」)。
「ここでお前を討つ! 私一人ではなく、姫と二人で! 本当に申し訳なく思う! だから――また会おう、我が敵よ! 生まれ変わり、次にまた巡り合った時、今度は一対一で! 私達の決着を!」
「約束だ、『好敵手』よ!」
アルゴノゥトは最初で最後の『好敵手』に再戦を誓い、そしてアリアドネと共に『雷霆の剣』を構える。
「「討て、『雷霆の剣』」」
数日後。アルゴノゥトとアリアドネは国民に今回の顛末を知ってもらう為、部屋に集まっていた。
ミノタウロスという王国の闇を祓い、王女を助けた英雄は、しかし代償とばかりに両目の視力を失っていた。
だが彼は見える筈のない青空を見てこう笑った。
「姫、空が青いです。まるで天が祝福してくれているようだ。今日という日のを、新たな時代の始まりを」
「……はい、空はとても美しい。でも、アル……貴方、目が……」
「いいえ、姫。私には見えます。沢山の人の笑顔が。喜びに満ちて笑う人々が。今もみんな笑っている。そうでしょう?」
「……ええ。笑っているわ。みんな、笑ってる……!」
アルには、見えていた。人々の笑顔も。そしてこれからその笑顔が絶える事のない、未来も。
『喜劇』はこれで終わり。
王都は数多の『英雄』の活躍によって魔物の侵略を退け、『人類の砦』として在り続けた。少なくとも私が見届けた範囲では。
そしてアルゴノゥトは、偉大な英雄として語り継がれることはなかった。
次の冒険で、アルゴノゥトはあっさりと死んだわ。
誰も枯れない涙なんて流さなかったし、悲しみに暮れたりなんてしなかった。
みんな、口を開けて、空を仰いで、一緒に笑ったの。
本当よ? 本当なんだから。
だから、私は彼を謳う。私だけは、彼を謳い続ける。
――嗚呼、アルゴノゥト。貴方は道化、滑稽な笑い者。
――嗚呼、アルゴノゥト。貴方は始まりの英雄。貴方こそ、真の英雄。
私が……いいえ。私達が愛した英雄。