懐石料理
かいせきりょうり
概要
日本料理の一種。
「懐石料理」の「懐石」とは、禅寺で修行僧が空腹や寒さをしのぐため温めた石を懐に入れた故事に由来するもので、空腹しのぎに茶事の一環として出される軽食から発展したもので、お茶を楽しむための料理である。懐石という言葉には「料理」という意味が含まれているため「懐石料理」とするのは間違いとも言われる。
発音が同じ「会席料理」とはよく混同されるが別物。
ただ発祥は同じ地点であるとも目される。
形態
一品料理を時間をおいて一品ずつ出していく、いわば日本料理版のフルコースである。
流派によって差異があるものの、概ね以下の通り。
「一品料理が小刻みに出る」と聞くと、あまり量はなさそうに思えるが、下の通りの伝統的な供し方に則った場合、かなりのボリュームとなる。
一, 飯・汁椀・向付
飯は文字通りご飯、汁椀も同じく味噌汁や澄まし汁などの汁物、向付は副菜(主に刺身盛り)である。
飯は小振りなお椀にやや少なく盛り、汁物も椀は小さく具は少なく、向付は味わう程度とする。
なお向付は次の酒が来るまで、箸をつけないのがマナーとされることが多い。
四, 焼物
焼き魚などの焼き料理が提供される。
多くの場合は、大振りの魚を取り分け要の竹箸で、各々の取り皿にとって食する。
重箱に入れて個別で出すこともあり、その際は下に焼物・上に香の物(漬け物)を入れる。
ここで二度目のご飯と酒、三度目の汁のお替わりが登場するが、汁椀はここでは断るのがマナーとされる。
またご飯は少し椀に残しておく。
酒は客同士で注ぎ合う。
五, 預け鉢
焼物とほぼ同じタイミングで出される副菜。
煮染めや餡かけなど、ご飯のお供として提供されるもので、大きな鉢から取り箸を使って取り分けて食する。
六, 吸物
口直し用の汁物。
食事の〆として出されるもので、あっさりとした薄味の澄まし汁を出すことが多い。
このときの椀の蓋は、後の酒を受ける際に使用される。
七, 八寸
はっすん。約25cm四方の素木の角盆に載せた二品一対の酒の肴。
「一が海の幸なら、二は山の幸」といったように、二品一対で変化を出すのが習わし。
主催者が吸物の椀へ取り分けて客に提供する。
ここで三度目の酒が登場し、主催者が客へ注いで回る。主催者が注ぎ終わると、主賓が主催者に自分の杯を懐紙で拭って一献傾けて労い、そこから順に末席まで主催者に酒を注ぐ。終わったら主催者が注いで回り、また主賓から末席までが主催者に労いの杯を、と回っていく。これを「千鳥の盃」という。
八, 湯と香の物
酒を堪能し終えると、「湯の子」(煎り米やご飯のお焦げ)と漬け物が出される。
桶に入った湯の子を柄杓で飯椀に装い、湯桶(漆器製の注ぎ器)に入った湯を注いで湯漬けにして頂く。いわば酒の〆である。
最後は湯をすべて飲み切り、器を懐紙で拭き清めて主催者に返す。
九, 菓子
重箱に入った菓子を出す。
菓子は黒文字(木製の太い楊枝)と共に添えてあり、客は一番下の重箱を残して下から順に取っていく。
菓子を頂くときは、懐紙に取って黒文字を使って食する。