概要
グルテン(小麦粉から取れるたんぱく質)を練って作る食材。そこから、練ったグルテンを熟成させて、残ったデンプンを洗い流して作る。
作り方や形、地域で様々なものがあり、100種に及ぶとされる。それぞれ見た目や食感も大きく異なる。
日本では味噌汁やお吸い物、煮物などに使われ、和菓子の材料にもなる。
また、琉球(沖縄)にも車麩という麩がある。内地と異なり、グルテンの多い独特のもの。
歴史
南北朝/室町時代、禅僧により中国から伝えられた「麪筋(めんちん)」が原型。これは小麦粉を水で練り、デンプンを洗い流したグルテンの塊のこと。“麪”は小麦粉のこと。
中国に留学した禅僧が精進料理に取り入れたのが始まり。暫くは寺院や宮中でのみ作られ、京都を中心に発展した。
桃山時代になると、麪筋を薄く焼いて、三温糖で味付けした「ふの焼き」という菓子が登場。江戸時代になると、「麩師」が登場し麩が全国に広まり、各地で独自に発展していった。
江戸後期には庶民にも手が届くようになった。この頃はお茶菓子として食べられることが多かった。
最初は生麩のみだったが、のちに保存が効く焼き麩が開発された。
種類
膨大な種類になるが、大きく分けて「焼き麩」「揚げ麩」「生麩」がある。以下、作り方別に各地の麩を列記する。
焼き麩
グルテンにデンプンと膨張剤を加えて、成形したもの焼く。さらに、直火で焼き上げる、釜で焼くものに分かれる。
スーパーでも売られ、最も一般的な麩で、保存が効くのが特徴。水分が染み込みやすく、出汁を使う煮物や汁物に使われる。関西ではすき焼きに使われる。
直火焼
- 板麩
山形県や秋田県。棒に生麩を巻き付け、焼いたあとに棒を抜き、潰して板状にしたもの。
独特の香ばしい香りが特徴。薄くて食べやすいため、砕いて味噌汁や、形状を生かしピザなど、様々な調理が出来る。カットして使うことが多い。
庄内地方で作られるものは「庄内麩」と呼ばれる。酒井藩で農家の副業として推奨したのが始まり。
- 車麩
新潟県。年輪のような見た目が特徴。棒に塗って焼くを繰り返すことで、この見た目になる。
しっかり焼くため、固いのが特徴。その分、煮崩れしにくく、すき焼きや煮物に向いている。また、食感が肉に似ているため、ヴィーガン料理で肉の代用にも使われる。
釜焼き
- 小町麩
一般的なタイプで、全国的に生産されている。棒状に焼いた麩を小口切りしたもの。フワッとした軽い食感が特徴。味噌汁や煮物に使われる。
切り口が観世水のように渦を巻いているので、「観世麩」とも呼ばれる。関西では「おつゆ麩」とも。
- 白玉麩
青森県津軽地方。外見は直径30~40ミリの丸状。煮崩れしにくいため、すき焼きや鍋料理に向いている。餅や白玉のような見た目を生かし、和スイーツの具材にも。
- 竹林麩
- すき焼き麩
関西地方。小町麩を大きめにしたもの。すき焼きや煮物に使われる。
- 花麩
石川県金沢市、京都府。花を象った堅焼きタイプ。鮮やかなピンク色や白が特徴で、飾り麩に使われる。
特に京都特産のものは「京花麩」と呼ばれ、少し軽く焼き上げている。お吸い物や麺類のトッピングに使われる。
- 丁字麩(ちょうじふ)
滋賀県近江八幡市。表と裏に線上の模様。長方形で厚みがある。長方形なのは、通常の丸型だと行商の際に潰れてしまい、持ち運びが不便なため、この形になったという。
由来は通りを思わせる線上の焼き目から「丁」「字(あざ)」を組み合わせたとも、元々「丁子麩」と書き、襖(ふすま)の丁子柄とふすま粉を掛けた、或は漢方薬「丁子」のように身体にいいから、とも。
すき焼きや鍋、煮物に使われる。また、滋賀県では酢味噌和えとして仏事に食べられる。
生麩
グルテンにもち粉を加え、蒸すか茹でたもの。様々な形に象ったものが作られる。
もっちりしており、出汁が染み込む。また、特徴的な食感を生かして、そのまま揚げたり、焼いたりするのが向いている。
京都府や石川県でよく作られる。京都では日常やハレの日の食材として、広く使われている。
- 手毬麩
京都府、石川県金沢市。小さく丸めた生麩に色や模様を付けた細工麩。多様な柄や色遣いは見た目に美しく、茶碗蒸しやお吸い物のアクセントに使われる。
- よもぎ麩
京都府。生麩にヨモギを練り込んだもの。鮮やかな緑色で、ヨモギの香り高く、風味高い味わいが特徴。水炊きや田楽、煮物がおすすめ。黒蜜をかけスイーツにも。
- あわ麩
京都府。粟を生麩に練り込み、蒸したもの。田楽や煮物、鍋料理が向いている。
- ごま麩
京都府。生麩生地に胡麻を練り込んで、蒸し揚げたもの。田楽や鍋、煮物向き。
- すだれ麩
石川県加賀地方。湯葉のような見た目。巻きすの上に延ばした生麩を蒸し、天日干しして作る。その為、表面に巻きすの跡が付いている。治部煮に欠かせない具材。他に煮物、すき焼きに使われる。
- 麩饅頭
京都府や石川県、愛知県。生麩生地にこしあんを包んだ饅頭。笹の葉でくるまれてることが多い。
もっちりした独特の食感で、ほんのり笹の香りがする。青のりを練り込んだ生麩を使うことが多い。
揚げ麩
グルテンに小麦粉を混ぜて揚げたもの。
- 仙台麩
宮城県、岩手県。油麩とも。1975年頃、登米市の豆腐店が発祥。
フランスパンのバゲットに似た見た目。ちぎって使うことが出来る。油で揚げてるため、ボリューミー。
しっかり煮込むと旨味が増すため、煮物やうどんに最適。
その他
- 安平麩(あんぺいふ)
山口県。饅頭のような見た目。淡白だが、軽い口当たりが特徴で、はんぺんのような食感。そのままだと小さいが、お吸い物や味噌汁に入れる、溢れるほど大きくなる。
食べごたえがあり、味がよく染みるため、すき焼きやきなこ餅のように食べられる。仏事の精進料理として使われてきた。
麩を砂糖で味付けした菓子。棒状をしてることが多い。
- 車麩(琉球)
琉球(沖縄県)。内地の車麩とは別。棒に巻いて作られ、長いのが特徴。袋詰めだと30cmになる。本土のものよりグルテンを多く含み、弾力があるため、餅のようになる。炒めても煮崩れしないため、フーチャンプルなど炒め物に使われる。