概要
――狛治さん、もうやめて。
狛恋とは、『鬼滅の刃』に登場する狛治=人間であった頃の猗窩座と恋雪のカップリングである。
恋雪は道場を営んでいる慶蔵の一人娘であり、身体が弱かった。
狛治は自分の父も体が弱く、自身が盗みをして得た金で薬を買っていたが当然役人に捕まっては入れ墨を施されたり鞭や棒などで叩かれるなど厳しい罰を与えられてもいた。
そして3対目の入れ墨が施された時、父親はそのことを嘆き自分のために罪を犯し続ける狛治を止めるために自殺。「真っ当に生きろ」という遺言を残していたが、当然納得できるはずもなく荒れていた。そんな時に慶蔵に出会い、ほとんど無理矢理ではあったが連れて行かれた彼の屋敷で狛治は恋雪と知り合い、咳き込む彼女の姿から父親の面影を想起したのもあって頼まれた看病を自分からやるようになり、心を通わせていった。
数年後、恋雪は昔よりも身体が良くなり狛治も立派に成長していた。
そんな折に慶蔵から道場を継いでほしいことと、恋雪の夫になって欲しい、と頼まれた。
後にかつて狛治が昔、一緒に見に行くと無意識に約束していた花火大会で改めて恋雪から感謝の言葉と
「私は狛治さんがいいんです。私と夫婦(めおと)になってくれますか?」
と逆プロポーズを受け、それを
「はい。俺は誰よりも強くなって、一生あなたを守ります」
と受諾。父の墓に祝言の報告をしに行くなど幸せの絶頂へ差し掛かっていたその矢先、恋雪と慶蔵の父娘は隣接する剣道道場の人間からの妬み嫉みによって井戸の水に毒を入れられ、殺されてしまう。
命に代えても守ると決めた大切な二人を殺されたことで自我が喪失するほどの強い絶望のどん底へ叩き落された狛治は、素流の道着を纏い、剣道道場の人間67人を素手によって殺害。その惨状は見たものが正気を喪うほどの地獄絵図となっていた。
しかし、守れなかった二人が戻って来ることはない。
返り血に塗れ、茫然自失の状態で夜の街を歩いていた時鬼舞辻無惨に遭遇。
人間でありながら、多数の人間を無残な形で殺せてしまった狛治に目を付けた無惨は狛治の頭部を手刀で突き、鬼にしてしまう。
「もう・・・どうでもいい・・・全て・・・が・・・」
これが「猗窩座」という鬼が生まれた経緯である。
その後は「もうどうでもいい」と思っていた人間の時による反動か、鬼にされた時の経緯が原因か、狛治としての記憶を失くしていたが、恋雪に誓った約束の一部である「誰よりも強くなる」ために強さを求めていたり、無限列車に任務に来ていた竈門炭治郎に言われた「卑怯者」という言葉はじめ炭治郎の数々の言葉に強い不快な反応をしたり、技が恋雪と見た花火の名前であったり、技の展開時に彼女の髪飾りであった雪の結晶が現れたり、また型の姿勢が師匠であり養父になるはずだった慶蔵から習った素流のものであったりと、無意識にそれらを残していた。
本格的に猗窩座の過去が戻ってきたのは17巻収録の149話から。
炭治郎の言葉に不快感を感じると同時に、自分の背後から掛けられる言葉と手の幻覚に反応していたが、これは慶蔵のものだった。
死闘の末、猗窩座は炭治郎の真っ向勝負にて頸を斬り落とされたものの「誰よりも強くならねば」という一心のもと、更なる進化を遂げようとした。
そして、その際にかかった言葉が冒頭の恋雪のものである。
記憶を取り戻し「辛抱もできない弱い自分」への自己嫌悪の果てに地獄を臨み自死を選んだが、「強くなりたいのではなかったか?」という無惨からの声と、強くなるという恋雪との約束を守ろうとする気持ちとで雁字搦めにされる中、恋雪の姿が出てきて
「ありがとう狛治さん、もう十分です」
と微笑み、彼の耳を優しく塞いだ。
そこでようやく鬼としての進化と無惨の声を振り切った猗窩座はみるみる狛治の姿に戻っていく。
人間時代と鬼化以降に起こした惨事に嘆いた末、共に地獄に逝こうと決めてくれた最愛の恋人の腕の中で焼かれていった。
「おかえりなさい、あなた」
「ただいま」
余談
猗窩座初登場時の扉絵と、過去が明かされた時の扉絵が実は繋がっているのでは、という考察がある。前者はまだ恋雪の言葉が届いていないときのもの、後者は言わずもがな。
強い人間をやたら勧誘したり笑顔で戦うのは、慶蔵が掛けてくれた言葉や行動を真似しているという考えもできる。そして、特に猗窩座が鬼として変わっているのは、女を喰わず、鍛錬で鬼として強くなることをしていたということである(女は栄養があると言って積極的に喰らっていた童磨とは正反対である)。ちなみに無惨は、鬼殺隊であっても女性ならば喰いもしなければ殺しもしないことに散々嫌味こそ言いはしたようだが容認していた。
更に猗窩座の技名が花火の名前であること、雪の陣が恋雪の髪飾りと同じであること、「強くなりたい」という動機の根底に恋雪の存在があった。これらの事から、猗窩座という鬼の在り方に甚大な影響を与えたのが彼女だったという事になる。
更にネタバレ注意
鬼滅の刃の20巻においてのキメツ学園の設定より、狛治と恋雪が学生結婚をしていたのが判明した。しかも2人揃って手芸部。体育会系の狛治が1人で入るとは考えにくいため、恋雪の進学に合わせて入部した可能性が高い。
「子供の頃から結婚の約束をしており家は隣同士。お互いの親も公認ときてもう結婚するしかない」
二人の渾名は姫と狛治殿。恋雪の家の道場は狛治が継ぐことになっている。
おめでとうございます。
更に2021年2月4日発売のファンブック2のおまけ漫画にて狛治と共に地獄にいるのが確認された。
「鬼滅の刃」の黄泉の世界の詳しい設定が不明なので彼女がどういう経緯で狛治の地獄への道のりに同行できたのかは不明だが、仮に彼女のみ天国行きであった場合でも、狛治が鬼にされていた期間と同じく彼のいない天国は地獄も同然であろうことが想像できるので自分から堕獄することを望んだ可能性が高い。
狛治の性格上、彼女が地獄まで着いてきたことは心苦しいものがあるだろうが、それでも一緒にいることは複雑ながらも嬉しく感じていると予想できる。
地獄での贖罪の日々は長く辛い険しいものになるだろうが、それでも彼らの未来が来世も遠い道のりだろうと幸せになることを願わずにはいられない。
どうか、どうか、永く共にお幸せに。