連載当時に唱えられていたヒトラーユダヤ人説(現在は否定されている)から着想を得た作品で、当時の国際事情を交えヒトラーを含めるアドルフの名前を持つ三人の男達の奇妙な人生を描く。
登場人物
架空の人物
峠草平 - W大学陸上部出身の新聞記者。スポーツマンらしい裏表がない爽やかな性格で、ベルリンオリンピック取材中に唯一の肉親である弟の電話がきたことから様々な困難とぶつかることになる。
アドルフ・カウフマン - ドイツ人と日本人のハーフ。日本で生まれ神戸の上流階級で育つが、ある事から運命に弄ばれる事となる。
アドルフ・カミル - ドイツ系ユダヤ人で神戸のパン屋のせがれ。ガキ大将的な所が有りカウフマンをハーフが原因の虐めから庇った事から大の親友となる。
実在の人物
アドルフ・ヒトラー - 言わずと知れた総統。ユダヤ人を嫌悪しながらも、自らの出生の秘密を知り徐々に精神に異常をきたしていく。最期は史実と同じく拳銃自殺、と思われたが実際はゲシュタポ将校ランプ(後述)に『ひとりのユダヤ人の粛清』という名目で拳銃を叩き落され、自殺に見せかけて射殺された。
マルティン・ボルマン - 史実にも登場するヒトラーの部下で、党官房大臣となっていたが、ベルリン陥落直前、現実に目を背け続けるヒトラーと、その遺言で冷遇されることに怒りと失望を抱き、後述のランプに「ユダヤ人をひとり、粛清するのだ」と命じてヒトラーを自殺に見せかけて殺害する命令を下した。
アドルフ・アイヒマン - ゲシュタポのユダヤ人課課長。上層部の不興を買い左遷されたカウフマンの上司。
リヒャルト・ゾルゲ - ソ連の工作員であり、ゾルゲ事件の首謀者。
手塚スターシステム
アセチレン・ランプ - 「氷の心臓を持つ男」との異名を持つゲシュタポの極東諜報部長。ひたすら冷酷で怪物的なタフさを持つゲシュタポ将校を的確に演じている。前述の通り、ボルマンの命令により、「ひとりのユダヤ人の粛清」の元、ヒトラーを自殺に見せかけて射殺した。
ハム・エッグ - 本作では赤羽という名前がつけられている特別高等警察の鬼刑事。ランプと比べればコメディ色があるが、執拗で頑迷な特高刑事を演じている。