概要
メタルギアシリーズに登場する組織であり、正式名称は反メタルギア財団「フィランソロピー」。
その名の通り、世界に拡散した核搭載歩行戦車メタルギアやその亜種に抗議するべく、「シャドーモセス事件」の関係者達を中心に結成された組織である。
国連にもNGO(民間の非政府組織)として正式に登録されている。
結成の経緯
シャドーモセス事件の後に、メタルギアREXのデータも含めた演習データを持ち去ったリボルバー・オセロットによって、メタルギアの研究・開発データが世界中のブラックマーケットに流出してしまい、これによってメタルギア及びその亜種が全世界に拡散してしまう事態となった。
これを受けて、シャドーモセス事件の関係者であるソリッド・スネーク、オタコン(ハル・エメリッヒ)、メイ・リン、ナスターシャ・ロマネンコらによって、メタルギアの世界への拡散を食い止めるべく、メタルギアの根絶を目的とした民間の財団組織として結成される。
表向きの活動内容は、「メタルギアの開発に対する抗議とその是非の追及」であるが、実際にはスネークとオタコンが実働部隊として、世界中のメタルギア及びその亜種を国や組織を問わず破壊して回り、さらに基本的には極秘であるメタルギア開発の情報を、財団のホームページを介して世界に公開・発信する事で、各国政府に圧力をかけ続けた為に、メタルギアを保有あるいは保有しようとする全ての勢力にとって、彼等の存在はまさに目の上のタンコブ以外でしかなかった。その為にスネークとオタコンは、FBIを初めとした国際的な警察機関などから、ある事ない事を含めて様々な罪状を被せられて国際指名手配をされるようになる。
勿論、表向きは非合法な事は何もしておらず、スネーク達の破壊活動と財団の関係性は無いという事にはなっているものの、スネーク達とフィランソロピーの活動は内情を知る者達からは、半ば公然の事実として知られており、雷電からは「君らの活動はテロに近い」と評されている(スネーク自身も「NGOの中では過激な方」と認めており、自分達がフィランソロピーである事をあまり隠そうとはしていない)。
資金元・組織の内情
フィランソロピーは正式なNGO財団とはいえ、活動資金は充分足りているとは言い難い。
その為に、実働隊員であるスネークの装備も足りてはおらず、シャドーモセス当時のステルス迷彩をそのまま使用していたり(MGS2のタンカー編冒頭で壊れている)、武器も基本的なもの以外は現地調達も多いのはこの為である(スネーク自身は、それでも武器も装備も完全に現地調達だったMGS以前よりは遥かにマシだと評している)。また装備に関しては、SSCEN(陸軍兵士システムセンター)に勤務するようになったメイ・リンから、そこで開発された(あるいは彼女自身が開発した)装備等を密かに横流しして貰っていた(スネークはバレない内に早めに手を引くよう忠告している)。
ちなみに財団の出資元は複数あるようだが、主な資金源はナスターシャが執筆した著作『シャドーモセスの真実』の売上金及びその印税であるとの事。
構成員
実働部隊
後方支援
- メイ・リン
- ナスターシャ・ロマネンコ
- サニー(厳密にはフィランソロピーのメンバーではないが、MGS4の時点でスネーク達と行動を共にしており、そのプログラミング及びハッキング能力で彼等をサポートしている)
外部の協力者
- ロイ・キャンベル…スネークのかつての上官にして戦友であり、シャドーモセス事件の関係者の一人でもある。フィランソロピーの直接のメンバーではなく、シャドーモセス後はスネーク達が指名手配された事もあって直接会ってはいなかったが、メイ・リンらを通じて影から彼等の活動を支援していた。MGS4では久しぶりにスネーク達と対面して、彼等にリキッド蜂起の情報提供とリキッド暗殺の依頼をする。
- 雷電…MGS2の「ビッグ・シェル占拠事件」で出会った特殊工作兵。最初は上記の通りスネーク達の活動にも懐疑的だったのだが、行動を共にする内にやがて彼等の考えに同調し、事件後は彼等を支援して『愛国者達』の施設からサニーを救出する。その後はしばらく消息を絶っていたが、MGS4で再びスネーク達の前に現れて彼等をサポートする。
- ドレビン…MGS4で出会った武器商人。システム管理下のID銃を洗浄して「裸の銃」にする武器洗浄人であり、戦場を渡り歩くスネークの事を「戦争の火種」として、取引を持ち掛けてくる。スネーク達としては信用はできないものの、彼の力を借りなければID銃は使えないのもあって、あくまでビジネス上の関係として付き合う事になる。しかし彼の方は不信なところも見られる一方で、「顧客第一」と称して取引以外でもスネークの事を度々助けに現れるが…
作中での活動
METAL GEAR SOLID 2 SUNS OF LIBERTY
本作からスネーク達がフィランソロピーとして活動している事が語られる。
冒頭のタンカー編では、アメリカ海兵隊が開発した新型のメタルギアRAYが、演習の為に極秘裏に輸送されるという情報を入手し、その調査及び証拠写真を確保して公開する為に、輸送用の偽装タンカーに潜入する。しかし、それはオセロットの罠であり、最終的にタンカー沈没の全ての罪を擦り付けられ、史上最悪の環境テロリストに仕立て上げられたスネークとオタコンは、フィランソロピーの活動を一時休止して地下に潜らざるを得なくなる。
プラント編では、ビッグ・シェルで建造中の新型メタルギア「アーセナルギア」と、その襲撃及び強奪を目論むテロリストの情報を掴んだ事で、スネークはNavy SEALsチーム10の隊員「イロコィ・プリスキン中尉」に、オタコンはビッグ・シェルのセキュリティ開発スタッフに偽装して、それぞれビッグ・シェル内に潜入する。そして、最終的にはそこで『愛国者達』の陰謀を突き止めて『G.W.』内のデータの回収に成功し、覚醒したリキッドによって強奪されたRAYに発信機を取り付けその動向を追いつつ、オルガ・ゴルルコビッチの娘のサニーを『愛国者達』の施設から雷電の協力を得て救出した。
METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS
本作の時点では、大型輸送機「ノーマッド」が事実上の活動拠点になっている。
キャンベルから[リキッド蜂起の情報と、リキッド暗殺の依頼を受けて活動を再開する。
資金問題は少しは向上したのか、装備は過去作に比べれば比較的充実しており、国防高等研究計画局(DARPA)で開発された技術を、オタコンとサニーが盗用して開発したオクトカムスーツや、周囲のSOP情報の視覚化や望遠鏡、赤外線暗視ゴーグル機能を備えた眼帯型機器であるソリッドアイなどを装備可能な他、オタコンが操作するサポートロボ・メタルギアMk-Ⅱなども投入される。
加えてメイ・リンは、アメリカ海軍VR訓練用艦である「戦艦ミズーリ」の艦長になっており、ミズーリとそこの乗員達を使って直接スネーク達を海上戦でサポートし、国連安全保障理事会の補助機関である「PMC活動監視監査委員会」に所属しているキャンベルは、その立場を活用してスネーク達への情報提供や潜入補助などのサポートを行う。またナスターシャも、メタルギア月光の用途に関するアドバイスをオタコンに行っており、さらに消息不明になっていた雷電も再び現れて、スネーク達をサポートするべく行動を開始するなど、続々と他のメンバーや協力者達も集結する。
ちなみにこの時点で、フィランソロピーの活動方針は「反メタルギア」から「反愛国者達」に転換されており、その為に反メタルギア活動は休止状態になっている。この組織としての方針転換については、『愛国者達』による『戦争経済』の拡大の影響で、戦争の経済活動化とそれに伴う戦争の局地化や、PMCや民兵による非対称戦争化の流れが加速した事で、従来の核搭載戦略兵器としてのメタルギアの需要が急速に消滅し、直接歩兵や戦車に変わる無人戦闘兵器化の方向への派生が進み始めたという時代背景も影響している。つまり彼等が当初警鐘を鳴らした戦略兵器としてのメタルギアは、時代の流れの中で既に自然消滅しつつあったのである。
最終的にはリキッド・オセロットの蹶起を阻止して、『愛国者達』の代理A.Iネットワークの完全破壊にも成功する。そして『愛国者達』の創設メンバー全員の死亡も確認された事で、フィランソロピーは組織としての役割を一旦は終える事となった。
その後、フィランソロピーが正式に解散したのかは不明だが、伊藤計劃氏が執筆したMGS4の小説版では、スネークの死後にオタコンが、今までの仲間や新たな仲間達と共に引き続き同じような組織で活動している様子が見られる事から、フィランソロピーは存続しているか、組織を変えて活動を継続しているようである。
METAL GEAR SOLID MOBILE
携帯電話端末向けの非正史のスピンオフゲーム。
時系列はMGSとMGS2の間の話であり、フィランソロピーとしてメタルギアを破壊して回っていた頃のスネークとオタコンのエピソードが見られる。非公式だが、撮影して入力した壁の色と同じ色に変化させられるスニーキングスーツなど、後のオクトカムスーツに繋がるようなスーツも登場する。
ある日、オタコンの元に「新型メタルギア設計に関わる技術者」を名乗る者から連絡が入り、「この施設や新型メタルギアに関わる情報を提供する代わりに、私がこの施設から逃げ出すのを協力して欲しい」と持ちかけられる。そこでスネークが潜入を開始し、そこで行われている陰謀を暴いていく。
余談
フィランソロピーの名前の意味は「人類愛」「博愛」などである。人類の過ちを抗議して後世に語り継ぎ、少しでもより良い未来を作る為に活動している彼等に、相応しい名称であると言える。
日本では主に企業などが行う「慈善活動」の事を指す。
財団のメンバーは上記した通りだが、これ以外のメンバーや協力者の事は不明である。また、財団の名義上のトップが誰になっているのかも不明だが、そもそも公式に財団のメンバーとして登録されているのは、上記のメンバーの中でもおそらくナスターシャだけである為、組織の主な財源が彼女である事を考えても、名義上の財団のトップは彼女である可能性が高い。
財団の出資者の中には、『愛国者達』の中枢である12人の『賢人会議』のメンバーもいたという事がMGS2で明らかになったが、その後はこれはあくまで偽装に過ぎず、そもそも『賢人会議』などという機関自体が実在はせず、そのメンバーとされていたのは『愛国者達』の前身になった『賢者達』のメンバーであり、およそ100年前に既に全員が死亡していた事が判明した。その為に、この出資者の正体については不明のままである。また、フィランソロピーに出資していた理由も明かされてはいないが、『愛国者達』としても世界に無秩序に拡散したメタルギアの亜種の存在は目障りであり、それを破壊するフィランソロピーの活動と、部分的に利害が一致したからである可能性が高い。