概要
「VP」はドイツ語で「民間のための拳銃(People's Pistol)」を意味するVolksPistoleに由来し、「70」は1970年から生産が開始されたことを意味する。
世界初のポリマーフレーム拳銃ながら、9mm弾を18発と当時にしては破格の装弾数を備え、更には自動連射機能を有する、所謂マシンピストルである。ただしこの連射機能はデフォルトではOFFにされており、セレクター付きの専用ストックを装着することで3点バースト射撃という形で利用することができる。
加えて、専用ストックはホルスターとしての機能も有している(ストックの中の空洞に銃身がすっぽりと収まる)。
アイアンサイトが非常に見づらく、マガジンキャッチボタンに見える部分はクロスボルト方式のセーフティであり実際のマガジンキャッチはグリップ底部と先進的な外観に反して根本は古ぼけている。良い点としては前述の通り装弾数が18発と当時のピストルとしてはかなり多めなことだろう。
エアソフトガンではストックを用いた点バースト機構などが再現されたものがMGCやタニオ・コバ等より発売している。
この手のマイナー銃ではよくあることだが、絶版後に有名作品に登場してジャンク品にすらプレ値が付いてしまうという事が起きている。
歴史
この自動拳銃の開発秘話は、1944年までさかのぼることができる。
当時のドイツは、連合国軍のたび重なる空爆により、世界有数の工業力が低下の一途をたどっていた。
そんな中、ドイツ戦争省は低下した工業力でも生産できる、低資源で省力化された簡易兵器《フォルクス・バッフェン:人民兵器》の開発を、国内の各小火器メーカーに指示した。
そんな中、当時の主力小銃のKar98kを製造していたマウザー社は拳銃からライフル、マシンガンに至るすべての兵器の簡素化の研究を行っていた。その中の拳銃担当の技術者が戦後に、仲間の技術者と共にH&K社を起ち上げる事となる。
当時のVP70のコンセプトは、スチール版をプレス加工を最大限利用したパーツ構成で、発射ガスの一部をスライド内部に吹き付けてブローバックを遅らせるという、H&K P7にも通じる作動方式だった。
戦前のフォルクス・バッフェンとの大きな違いは、材質の変更である。フレームをスチールからポリマーに変更した(ポリマー素材の採用はグロック17より先)。またガス遅延ブローバックの「ガス圧が強すぎる」という弱点に対応するために、ライフリングが深めに掘られており、ガス圧を意図的に逃がした代償として弾速が落ちている。しかし、それ以外の機構は戦前のそれとは変わっていない。
何度も試行錯誤が繰り返されたが、試作品が製造されたころにはすでに敗戦を迎えており、そして時は流れて1968年、兵器購入予算をあまり取れない諸国向けの銃器を開発することを決定し、VP70として1970年から生産が始まった。
VP70は、中東やアフリカ、中南米諸国の軍、警察に売り込みを図られた。しかし、まとまった数を輸入したのはモロッコの治安部隊だけだった。
一般向けに3点バースト機能を省略したVP70Zも発売されたが、部品を省略させたためスライドとトリガーが重くて引きにくい、扱いづらい銃と評価されてしまった。
何度も改良が施されたが88年に生産打ち切りとなった上に、安くて扱いやすい銃としてグロックが大ヒットを納めたため、変わり種銃として歴史の闇に埋没してしまったのであった。
有名な使用者
「マチルダ」の名でレオンの愛銃として登場する(名前の由来はリュック・ベッソンの「レオン」と思われる)。
バイオハザード2では初期装備の銃で、R.P.D.配属初日のレオンが持ち込んだ私物。なぜ彼がこの銃を選んだのかと言えば彼がガンマニアでマイナーな銃が好みだったからである。なお途中で入手できるストックはバリー・バートンの私物である。
4ではクリア後に購入ができるが最初からストックが装着された状態であり、弾薬消費量が激しいのに比べて威力はマシンピストルより低い為購入するメリットがかなり薄めである。
6では「ウィングシューター」という名称でDSOエージェントに近代化改修した物が採用されているらしく、マガジンキャッチがUSPの様なレバー式に変更されている。また、レオンがゾンビになった大統領を射殺するシーンではステージングという引き金を一度引いてから部分的に引き戻して二回目に強くトリガーを引く、という妙にマニアックなアクションを再現している。
訓練の際にストック付で使用している。