※「Kar98K」と表記されているが、正しくは「Kar98k(小文字)」である。
概要
1898年型騎兵短小銃。
オーベルンドルフ(ドイツ)の兵器メーカー、モーゼル(マウザー)社製のボルトアクション・ライフルで第二次世界大戦時のドイツ軍主力小銃として活躍し、東欧を中心に多くの国でコピー、ライセンス生産され、戦後も盛んに使用された。
Gew98を150mm切り詰めて騎兵銃としたモーゼル・スタンダード・ライフル(M1924)を元に、カービング・ボルト・ハンドル(Gew98はストレート・ボルト・ハンドル)、ハンド・ガード部にくぼみのない改良型の銃床、サイトの小型化等を行い、1935年のヒトラー政権のドイツ再軍備の際主力ライフルに選定され、第二次世界大戦を戦い、戦後も小銃不足を補った。
ライセンス生産品や輸入品、独自の派生型がチェコ、ハンガリー、ベルギー、中国などで使用された。
また開発会社の名前を取ったシースベッヒャーというグレネードランチャーのアダプター付(照準器はリアサイトのレールを使用)や、空挺用の折りたたみ式・分解式も試作された(強度不足で採用されず)。
ドイツ陸軍兵器局の記録によると、1939年から1945年の間に占領国や併合国の企業も合わせ、12社で総数7,413,767挺が生産されたほか、現在もスポーツ・モデルが販売されている。
第二次世界大戦の最末期には大幅な簡略化が行われたものの、こちらと違って戦後も本来の性能を持つ軍用モデルや民間向けのスポーツモデルが生産されたため、凄まじく評価が下がるといったことはなかった。
仕様
全長 | 1,105mm |
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銃身長 | 600mm |
重量 | 3,900g |
弾薬 | 7.92×57mmモーゼル弾 |
装弾数 | 5発 |
狙撃銃型
射撃試験の結果、特に精度の良い個体は本体にマウントを取り付ける改造を施してスコープを装着しスナイパー・ライフルとして使用された。
軍用スコープのZF39(4倍率)が少なく、民間の狩猟スコープ付きの物も多い。このためマウントやその仕様にも多くのモデルが存在する。
- ZF39(Zielfernrohr39)
カールツァイスから販売されていた倍率4倍のスコープを制式化したもの。機関部の真上に位置するように取り付けられた。
マウントベースは複数種類存在した様子だが、民間用の同程度の性能のスコープをZF39と呼ぶ資料もあるため詳細ははっきりしない。
- ZF41(Zielfernrohr41)
倍率1.5倍のスコープ。高度な専門的教育を受けた狙撃兵ではなく、歩兵部隊の支援を目的とした選抜射手向けに製造された。
ZF39とは取り付け位置が異なり、機関部の前、リアサイト横にレールを設置し、マウントを介して装着する。
しかしながら、この装着位置はそのままクリップを用いてリロードできる以外にほとんどメリットが無く、銃を構えた状態で頭を少しでも動かすとサイトポストを見失ったり、標的近くの狭い範囲だけ妙に拡大されて見える違和感しかない見え方であったりしたため大変不評であった。
その上、ZF39や他の民間用のスコープを載せた狙撃銃の生産が捗らなかったため、狙撃兵として専門の教育を受けた兵士にも支給されたが、遠距離狙撃を満足に行うことは困難であり、当然狙撃兵たちから顰蹙を買うこととなった。(※メイン画像がZF41装着型)
各国のKar98k
チェコスロバキア
M1924とKar98kをまねて改良したVz24やVz33が制式化された。
Vz33はオリジナルのKar98kよりさらに10cmほど短く、ストック上部のパーツがサイトの後端まで覆うようになっているのが特徴。
ナチスによる併合後もGew33/40の名でブルノ兵器廠が製造を続け、ドイツ軍の山岳部隊や戦闘工兵などに支給された。また、ほとんど同じKar98kも製造されている。
オーストリア
ステアー社でライセンス生産が行われた。かなりの数が納品されており、同社製品のチェンバー上部の660、bnz、bnz45、といった刻印のものは現存数も多い。
ハンガリー
オーストリアのマンリッヒャー機構の影響を受けた、異色のM1935ライフルを配備。
当初は8mmマンリッヒャー弾を使用していたが小改良で7.92mm弾へ移行が可能だったため、ドイツの要請で可能な限りKar98kと部品を共通化させて製造された。ドイツ向けのGew98/40と自国向けのM43があり、両国がソ連軍と戦った東部戦線では弾薬に互換性があった。
ポルトガル
Kar98kの最初期のモデルを輸入。
ポーランド
M1924を参考に製作されたM29ライフルを配備。ボルト・ハンドルは垂直、カーブの二種類がある。
ベルギー
第二次世界大戦後、FN社がM1950を米軍の30-06弾仕様に改造した。Vz33に似ている。
スペイン
M1924の国産化モデル、M1943を配備。
スウェーデン
ボフォース社が、輸入したKar98kを同社の8mmボフォース仕様に改造したM40を配備。
ユーゴスラビア
チェコのVz24を輸入し、M24として正式化。戦後は各国のKar98k系部品を組んだM1948を配備。
イラン
ぺルジアン・モーゼルと呼ばれる独自のM1328(西暦では1910年)カービンを配備。Kar98kより30cm近く小型化されている。
中華民国
戦前にはM1924やKar98bといったオリジナルモデルが輸入されていた。大戦中には中国国民党軍(国民革命軍)でコピー品が「中正式歩槍二式」や「二四式歩槍」の名で使用されていたほか、蒋介石銃とよばれる「民国二三式」など多くのコピーモデルがある。
フィクション作品への登場
ドイツ軍絡みのWW2モノ映画によく登場している。
機動戦士ガンダム0080「ポケットの中の戦争」に登場するジム・スナイパーⅡの主兵装は、Kar98Kがベース。
また、児童向け小説である「怪盗クイーン」シリーズの登場人物である狙撃手、ゲルブの愛銃として、この銃を改造した「K98改」、「K98改弐」が登場する。