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なでしこ(グリム童話)の編集履歴

2021-06-24 23:43:58 バージョン

なでしこ(グリム童話)

ぐりむどうわのなでしこ

グリム童話の一つ。植物のナデシコの花言葉の由来とされる。

概要

グリム兄弟が編纂した童話のひとつ。

初版と第二版以降では収録される話が異なっており、同名の話が二種類存在している。

あらすじの大部分は共通しているが、細部(特にヒロインの女の子)の設定が異なる。


共通するあらすじは「願ったことが何でも本当になる力を持った王子が、女の子をなでしこの花に変えて城へ持ち帰り、再び元の姿に戻して結婚する」というもの。

物語中に登場するなでしこはあくまで人間の女の子が姿を変えられたものであり、「なでしこ」という表題でありながら本物のなでしこの花は登場しない。


なでしこの花に変えられる女の子はどんな画家でも描けないほどの美しい容姿をしていたそうで、この女の子の美しさや王子との純愛などから、この物語がナデシコの花言葉(思慕・純愛・女性の美など)の由来になったとされる。


あらすじ

両方の話に共通する描写を箇条書きで記述しています。

片方の話でのみ見られる描写や設定については、それぞれの項を参照のこと。

  • 子供のいない王と王妃の間に「何でも願いの叶う王子」が産まれる。
  • 王子の力を利用しようと企む悪人によって王子が誘拐される。王妃は王子を食べた濡れ衣を着せられ、塔に閉じ込められる。
  • 誘拐された先で、王子は美しい女の子と仲良くなる。やがて成長した王子は狩人となり、女の子とは恋仲になる。
  • 王子は自身を誘拐した悪人を報復としてに変える。さらに女の子もなでしこの花に変えて、ポケットに入れて城へ持ち帰る。
  • 王子は素性を隠したまま狩人として王に仕官し、成果をあげることで王の信頼を得る。
  • 最終的に、実の父である王の前で王子は素性を明かし、なでしこの花に変えて持ち帰った女の子を元に戻して結婚する。

初版

ここでは初版にのみ見られる設定・描写を、登場人物ごとに記述しています。

王子

  • 「何でも願いが叶う」という力は、生誕後に彼の名付け親(乞食のような老人)が教会で祝福することによって後天的に与えられた力。
  • 王子自身このような力を持っていることは自覚していなかった。自身の素性や身分も知らぬまま育ち、本人は自分も森番の本当の子供だと思っていた。
  • 成長してから女の子から秘密を打ち明けられる形で初めて自身の素性や力のことを知る。これにより城へ帰ることを決めた王子は秘密を教えてくれた女の子をなでしこの花に変えて持って行くのだが、このときは彼女に同行の意思を尋ねることもなくいきなり変身させる。
  • 城に着いても女の子とはすぐに結婚せず、普段はなでしこの花に変えたまま、自分が部屋に一人のときだけ女の子を人間に戻してやり、出かけるときはまたなでしこの花に変えて(皆に見えるように)窓際に飾っておくという日々を送る。人間の姿⇔花の姿の両方を愛していたとも、二人きりのとき以外は見つからないように隠していたとも解釈できる。
  • 物語中で披露した力は「人間を別の物に変えたり戻したりする」「狩りの際に獲物を操る」の二つ。

女の子

  • 誘拐された王子が預けられた家の一人娘で、リーゼという個人名が判明している唯一の人物。
  • 生粋の人間の女の子で、物語中では父親(森番)も登場する。
  • 王子よりも先に彼の素性や力の秘密を知っていた(父から聞かされた可能性が高い)。成長して恋仲になった王子にその秘密を打ち明けたところ「なでしこの花になるように」と願われ、そのまま城まで持ち運ばれて家族とは離れ離れに。
  • 城に着いてからもしばらく人間の生活には戻されず、普段はなでしこの花に変えられたまま水の入ったコップに挿されて王子の部屋に飾られる。一応、王子が部屋にいるときは一時的に人間に戻してもらえるが、王子が部屋を出るときはまた花に変えられ、頻繁に変身を繰り返しながらも基本的に人間ではなく花として過ごすことになる。
  • 元々人間でありながら普段は植物として生活させられる、王子が一緒にいない間は一切自分の意思で動けない……など見方次第ではあんまりな扱いだが、女の子本人の心情は描写されていないため感じ方は読者の想像による。王子のことを愛しているが故にどのような扱いでも受け入れていた……という純愛の描写と捉えることもできる。最終的には再び人間としての生活を取り戻し、王子と結婚するハッピーエンドを迎える。

王・王妃

  • 最終的に王子を後継した後、物語の最後まで生存する。

王子を誘拐した悪人

  • 職業は「庭師」。
  • 森番とは知り合いで、誘拐した王子を預けて育てさせる。
  • 報復として犬に変えられて以降、生涯犬の姿のままではあるが最後まで生存する。

第二版以降

ここでは第二版以降にのみ見られる設定・描写を、登場人物ごとに記述しています。

王子

  • 「何でも願いが叶う」という力は、彼の誕生前にによって先天的に与えられた力。
  • 王子自身も幼い頃から力を自覚しており、使いこなしている。
  • 物語中で披露した力は「建造物を創造する」「人間を創造する」「人間を別の物に変えたり戻したりする」「狩りの際に獲物を操る」「他者の思考を操作する」…など多岐にわたる。
  • 城に帰る際、女の子本人に同行の意思を尋ねる描写が追加されている。(その結果女の子が同行を渋ったためなでしこの花に変えた。)

女の子

  • 正体は普通の人間と異なり、王子の願いによって創造された存在。その出生上、肉親や故郷も元々持たない。
  • 他の登場人物と同様、個人名は登場しない。
  • 王子を殺すように命令され、従わなければ自分も殺される状況でも王子を庇うなど、明確に自分の意思を主張する描写がなされる。
  • 王子が城へ帰る際、見知らぬ土地に行くことを不安がり同行を躊躇する意思を見せたことで、なでしこの花に変えられた。(結局は見知らぬ土地へ強制的に持ち運ばれることになったが、実は女の子も本心では王子と離れたくなかったので結果オーライ)
  • 城へ到着した翌日には、なでしこの花から元の女の子に戻される。元の姿に戻ってから再びなでしこの花に変えられることはなく、そのまま王子と結婚する。花に変身したのは1回だけで、あくまで城まで運ぶための手段だったようである。

王・王妃

  • 王妃は塔から出された後、三日後に亡くなってしまう。
  • 王も妻を喪った悲しみで、後を追うように亡くなってしまう。

王子を誘拐した悪人

  • 職業は「料理番」。
  • 女の子に対して王子を殺すように命令し、さもなくば女の子の命はないと脅す。
  • 犬にされるだけでなく「金の首輪を嵌められ、喉から炎が飛び出てくるまで燃えている炭を食べさせられる」という過激な報復を受ける。
  • 最終的に王の前で元の姿に戻された後、処刑されてしまう。

関連イラスト

この物語のヒロインはどんな画家でも描けないほど美しい女の子なため、彼女の姿をイラストで表現するのは至難の業であろう。


関連タグ

グリム童話 植物化

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