概要
自らの欲望を満たすため、悪魔に魂を売るという契約をしたのにも関わらず、馬に乗っていずれかへ逃亡しようとした女に怒った悪魔が、魔法で変身させたという魔人。
体中が鱗に覆われた馬頭の女妖怪で、不浄な尾の先と尻には悪魔の顔が張り付いており、馬を病気にしたり、人が乗る馬を暴れさせて落馬による事故死を誘発させる魔物であると恐れられた。
実は...
元になったのは1523年に堕落した教会権力に対する、所謂「宗教革命」においてマルティン・ルターとフィリップ・メランヒトンが著した『二匹の驚異的なカトリックの怪物について』に掲載された図で、「バプステーゼル(教皇驢馬)」と呼ばれる。
ロバの頭は愚かな教皇を、胸と膨れた腹は欲望にまみれた教会組織を表しているといわれている。また元絵の背景に描かれているサンタンジェロ城は、当時の教皇が要塞として使用していた場所である。
1496年にローマで洪水が発生した際に、この怪物の死体が市街を流れるテヴェレ川で見つかったという(教皇の権力の終焉という暗喩)。
対応するものとして「ミュンヒカルブ(牛鬼カルフ)」と呼ばれる修道士のありようを揶揄した、子牛姿の怪物が描かれている。