ヨーロッパの伝承などに登場する妖精の一種。もしくはその伝承から着想を得て創作された架空の種族のこと。ファンタジー物の小説やゲームなどによく登場する種族であり、古くはグリム童話の『白雪姫』などに登場する「7人の小人」もドワーフである。
同じく架空の種族として設定される事の多いエルフとは対の関係で登場する事が極めて多い。ドワーフのみが登場してエルフは出ない、若しくはエルフのみが出て来てドワーフは登場しない~といった作品はまず存在しない。いわゆるファンタジー物の“定番キャラクター”である。
外見的イメージ
作品や描き手の解釈によって様々なのは言うまでも無いが、
- 背が低い(1m~1.5m程度)
- 筋骨隆々でいわゆるマッチョ体型
- 成人は男性だけでなく、女性も髭を生やしている
~という特徴を持っている事が多い。
他にも、
- 頑固者で偏屈だが酒好きで身内には優しい
- 地下に住み、普段は鉱脈などを掘っている
- 機械類の扱いが上手で鍛冶屋的な事もする
- 金銭欲が強く、特に黄金に目がない
~等々という性格付けをされてる事も多い。
その無骨なイメージに合わせて、手に持つ得物には「戦斧」や「ハンマー」が多い。
性格面については現在のファンタジー作品の源流の一つである「指輪物語」(正確にはその前日譚である「ホビットの冒険」)におけるトーリン・オーケンシールドというドワーフの王族の影響や、真逆の性格付けをされるエルフとの対比の為といった意味合いが強いと思われる。
また前述の「女性も髭を生やす」と言う特徴のせいか、作品などに登場するドワーフはほぼ100%男性である。
しかしながら…、その「女性も髭を生やす」という設定は、何かの小説やRPGなどで公式に設定された事はない!
恐らくはその原典に近いと思われる『指輪物語』の中でも、特にその様な記述などは全く無く、また同様に最古参のTRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』のルールブックの中にも、特にその様なドワーフの女性に関する記述は一切無い。由来は不明だが、いつのまにかTRPGの愛好家を経てファンタジー物全般の常識として広まっていった、いわば“都市伝説”の様な物である。
イメージの変遷
2000年頃までほぼ上記のイメージで固定化されていたが。しかし近年はTRPGの『ソードワールドRPG 2.0』や、ゲームソフトの『剣と魔法と学園モノ。』などの発表によって、女性ドワーフのイメージにも大きな変化が訪れている(前者は「ロリ」、後者は「ケモノっ子」の様なイメージ)。ただし『ソードワールドRPG 2.0』の発売年から考えると、むしろロリっ子ドワーフは『リネージュ2』の影響が強いかもしれない。
妖精としてのドワーフ
英語表記では“Dwarf”と書き、元々は北欧神話に登場する妖精の一種。ただし英語圏ではDwarfと表記した場合、日本語での“チビ(小人症)”と言うニュアンスを含むため差別的表現と見なされる事もあるので要注意。
伝承によってその姿形は様々だが。童話やおとぎ話に登場する場合、その多くは白い髭をたくわえた老人のような姿で、体がとても小さく。一般的に言うところの“小人”のイメージに近い。
ファンタジー物の小説やゲームなどに登場する時の“偏屈”や“頑固”と言った性格付けはあまり無く。森の奥や地下に住んで仲間たちや動物たちとも仲良く、毎日を酒を飲みながら歌い踊りながら暮らしている、非常に陽気な性格の妖精として描かれる事が多い。前述の「白雪姫」に登場するドワーフは正にこのイメージである。
指輪物語でも上述のトーリンを除けば性格付けに関してはこちらのイメージに近い。
一方で北欧神話には“ドヴェルグ(Dvergr)”という名前の妖精が登場する。彼らは“巨人ユミル(Ymir)”が死んで大地の元となり、その大地(=死体)から生まれた“ウジ虫”であるとされる。そのため陽気などとはほど遠い性格で、常に暗い地下深くで生活する事を好む陰気な妖精である。
この闇の妖精ドヴェルグは北欧の神々によって、ウジ虫から人の姿を与えられるが性格などはそのままだった。北欧神話の中ではあくまでも一妖精という立場だったので、人間からの信仰を集めるような存在では無く。時には自分たちを形作った神々とも対立する存在とし描かれるが、利害が一致すれば神々に自分たちの作った武器や宝物を捧げる事もあった。この事から彼らは、非常に優れた物作りの技術を持った“匠”と解釈される。
現在のファンタジー物の小説やゲームなどに登場するドワーフは、上記の「童話の“Dwarf”」と「北欧神話の“Dvergr”」の2つが合わさって形作られたイメージであると思われる。
ファンタジー内でのドワーフ
作品や描き手の解釈で変動はあるもの大きく共通するのは、
- エルフとは仲が悪い
- 悪の勢力を強く憎む
- 打たれ強く魔法などにも抵抗力がある
~等々が共通のイメージとして設定される事が多い。
前述の「エルフと仲が悪い」と言う設定は登場する作品によっては逆だったりする。その場合はむしろ“悪の勢力対抗する同志”と言う立場で親交が深く、代わりに人間などの世俗と距離を置いている設定になる事も多い。ただしいずれの場合も「悪の勢力を強く憎む」という設定は共通しており。その対象としてオークやゴブリンといった種族が“邪悪な勢力”として具現化されている事が多い。
因みに小説の『指輪物語』の設定では上古の時代、エルフの大宝玉シルマリルとドワーフの至高の首飾り「ナウグラミア」を一つにしようと。あるエルフ王がドワーフの宝石職人たちにこれを預けたところ、出来上がった首飾りのあまりの美しさに目が眩んだドワーフたちが、エルフ王を殺害して逃走。これに激怒したエルフたちがそのドワーフたちを皆殺しにしてしまったことが、今に続くエルフ族とドワーフ族との不和の原因であると語られている。
キャラクターとしてのドワーフ
前述の様にほぼ100%男性であるので、“頑固親父”と言うポジションを与えられる事が多い。通常、小説やゲームなどでは登場人物の年齢層が若めに設定されるため(多くは10代から20代)、それらの若輩をまとめる重鎮としての父親役として配役される。通常は主人公たちの仲で最年長者の1人である事が多いので、人生に対する含蓄に富んだ言い回しをする事が多い。
またその反面、「金銭欲が強い」と言う事を強調される事もあり。その場合にはむしろ、常に金銭トラブルを呼び寄せてしまうトラブルメーカーとしての“狂言回し”としての役割を務める事も多い。このパターンの時には単なる「守銭奴」や「ケチ」なキャラクターとしての性格が強調され、非常に世俗的な現世利益を追求するキャラクターとして描かれる事が多い。
またエルフなどと同様に「人間より長命」と設定されている場合が多いが。その場合でもエルフの様に何百~年千年近く生きると言う訳ではなく。あくまでも人間よりは長生き(200~300歳程度)という場合がほとんど。
これらのイメージの多くはファンタジー小説の『指輪物語』と、最古のTRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』から輸入された物である。