概要
この台詞が飛び出したのは『アニメ版ヒロインたるもの!』第11話である。
涼海ひよりの友人であり、あるときにはひよりのピンチを何度も救った中村千鶴。
しかし、実は千鶴の正体はメイドとしてLIPxLIPのためにお金を貢ごうとするちゅーたんであった。
そしてよりによって、彼女こそ、第9話にて発生したスキャンダル事件を起こした犯人でもあったのだ。
『田舎から上京してきたことでアイドルに関する知識が全くなく、そして異性との距離感に無頓着なひよりが学校やプライベートでLIP×LIPに接触することに対する怒りが千鶴の心の中で蓄積されていき、友人としてひよりに接しつつもひよりをLIP×LIPに対する障害として敵視していた』これがスキャンダルを起こしたきっかけであった。
染谷勇次郎の思惑によって盗撮の犯人だと露呈した後は、それまでの大人しくも思いやりのある性格から一転冷徹な本性をあらわにし、ひよりとの対話を一顧だに拒絶する。成海萌奈のアドバイスによって千鶴の本心を聞き出そうとするひよりにしつこく付きまとわれた際に言いはなったのが、この『クソモブ女』である。
そして、ひよりとの取っ組み合いの末に、千鶴はクロスカウンターパンチでひよりを殴り気絶させてしまうのであった……
ひよりは本当にクソモブ女なのか?
千鶴は「ひよりはLIPxLIPと距離が近いクソモブ女だ」などと喝破するがこれらは全く的を射たものではない。
- ①千鶴「お前がクソモブのくせにLIP×LIPと距離近いからだろーが!!」
千鶴個人としての思想はともかく、ひよりのやっていることは一般的なアイドルのマネージャーやジュリエッタとほぼ同じである。というかそもそもそれは本来千鶴たちジュリエッタがやるべき仕事である。
- ②千鶴「アイドルに特別扱いされていい気になってんじゃねぇ!!」
ひよりは、田舎から上京して間もなく多くのバイト採用に落ちてしまい、その後ひょんなことからLIPxLIPのマネージャー見習いとして働くという経緯があった。その為、都会で頑張って生きようとしていた頃から、涼海ひよりが最も欲しかったのは「アイドルからの特別扱い」ではなく「生きるために必要なお金」であった。特別扱いされているどころか、ひよりは一番欲しかったものを就任時点で既に十二分に得ており、この指摘は千鶴の一方的な価値観にすぎない。事実として、ひよりも後にヒロイン育成計画で『パシリばかり 雑用係 最悪な奴らのマネージャー就任です』とあり、アイドルに「特別扱いされていた」のではない(千鶴の発言に「いい気になんてなっとらん!!」と言い返したのもそのため。LIPxLIPはひよりを芋女呼ばわりしていたようだが……)
ちなみに劇中でひよりがアイドルから特別扱いされる描写は一切存在しない(第5話の夢ファンファーレや第6話、11話で出会った成海萌奈のような例外こそ存在するが、どちらもやむを得ない状況下であった)。
- ③千鶴「このクソモブ女あああああああ!!」
「中村千鶴」というキャラクターの本性を決定付けた発言である。
ここでは簡易な説明に留めるが、11話が放映される以前はまだ本作が賛否両論だった時期。千鶴も初回からヴィラン寄りであったとは言え、まだ本格的な活躍は少なかった。
そこに颯爽と放映されたのがひよりに対して怒りと妬みからなる罵詈雑言を浴びせる千鶴の姿と信じていた友人である千鶴に恨まれたことを知ったひより…
当時第7話で根付きつつあった「ぶっ飛んでるけど本当は良い奴」のイメージを盛大にぶち壊すその光景が、深夜アニメという形でお茶の間に流されたのだ。言わずもがな、当時の千鶴の株は大暴落である。
アニメ版否定派にとって格好の批判材料に利用されたことは言うまでもない。そうでなくても、第7話や第9話での活躍のイメージが強かった人にはショッキングなシーンであったことは想像に難くなく、良くも悪くも千鶴が本性を現した第11話はその強烈さで有名になってしまった。
総括すると、劇中における千鶴の発言は全て清々しい程に徹頭徹尾ただのブーメランである。しかも、彼のやる事なす事の全ては味方に対しても不利益にしかなっておらず、ぶっちゃけ中村千鶴という女は、LIPxLIP(特に愛蔵)にとってはただの癌であり、ひよりにとってはただの頭痛の種でしかない。これもあってか大多数の視聴者からはこれらの発言を引き合いに出される形で嫌われている(ひよりを憎んでいたことが原因で視聴者から嫌われるとは、何とも因果な話である。ある意味、11話にもある「嫌われヒロイン」というのは、「千鶴から嫌われているひより」と「視聴者から嫌われている千鶴」のことだったといえる)。
なお、ひよりに対して言った「クソモブ女」というのも元をたどれば「身勝手な理由からなる、他者への憎悪」というそこら辺の外道の動機のほうがまだマシとすら言えるものが原因である為(後述するが、千鶴の一連の行動は法に接触したイレギュラーなものである)、自分の行ってる行動そのもので自分の発言そのものを否定しているというどこぞの巨大人工頭脳を彷彿とさせるブーメランに他ならない。
補足
先述のように、このシーンは千鶴から見たひよりの一瞬の落ち度(という名の建前)を示したものである。
しかしこの台詞を放った千鶴に対して、視聴者からは否定的な意見が少なくなかった。以下にその理由を2つ記す。
①「アイドルのマネージャーである以上距離が近いのは仕方ない」
これはひよりに限らず、他のアイドルプロデューサー(下手すれば現実世界の役職など)にも言える事である。「内田マネージャーや田村社長も近かったのに今更?」と感じた視聴者がいるのも仕方がないところである。
しかし、歴代のアイドルマネージャーがビル等を壊してしまう時は恋愛などをスキャンダルされる等の不測の事態が多いのに対し、この時のひよりとLIPxLIPは勇次郎と愛蔵が元々喧嘩を起こしやすいタイプのアイドルだった上に、ひよりも二人から次々に罵倒されまくりながらも仕事をこなしひたすらマネージャー業に専念、、そしてLIP×LIPがカウントダウンライブに出場することが決定した際に住宅街のど真ん中でひよりが二人とハイタッチをしていたという有様で、明らかに周囲の状況へ意識を向ける余裕がなかったことが窺える。
②「犯罪行為を侵した千鶴が非難出来るのか」
最大の理由がこれである。そもそもメタ視点と結果論で言えば本作における千鶴の行動は「犯罪」にも近いものであり、こちらからすれば「ちゃんとしたやり方でひよりに指摘してから言え」とも言いたくはなるだろう。
しかし、やり方を間違えたとは言っても千鶴もひよりと同じように確かな信念を持って必死にLIPxLIPを推そうとしたのもまた事実である。事実、彼女は彼らがアイドルの頂点を目指そうとしていることを応援するために自分の気持ちを抑えて身を引くことができる、要は『わきまえているファン』であった。その愛情の強さと純粋さは本物でありLIP×LIPだけではなくその裏方である社長やマネージャーにもファンレターを送るほどであり、彼女がメイド喫茶でバイトをしているのもLIP×LIPの活動を支援するため(本人は貢ぐためと言っている)であり、LIP×LIPが日本一のアイドルになることを応援するための「軌跡ノート」なるものを作り、学校のカバンに入れて持ち歩くほどであった。
余談
その後、色々とありながらも、12話でひよりと和解することができた千鶴だが、彼女が劇中でやらかした行動については、厄介なファンよりもよほど危険そうなのにもかかわらず一切触れておらず、田村社長たちこらも追及されていない(単なる「害獣騒ぎ」で片づけられた可能性も捨てきれないが。実際そういうのもいたし)。
関連タグ
三浦加恋…千鶴と同じく、主人公と仲違いしてしまった繋がりがある。しかし、加恋の場合はいじめという辛い状況の中でやむを得ずとってしまったことを後悔しており、千鶴よりはまだ可愛げがある。