クソモブ女
くそもぶおんな
クソモブ女とはヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜にて登場人物の中村千鶴が言い放ったセリフである。
この台詞が出たのは11話『嫌われヒロインの戦い』。
この会では9話で発生したスキャンダル騒動の犯人が千鶴であったことが明かされる。
そしてスキャンダルを撮られた主人公涼海ひよりは千鶴になぜスキャンダルを起こしたのか問い詰めるが、彼女はそれをはねのけ、粗暴かつヒステリックな言動へと変貌してしまう。
千鶴「お前がクソモブのくせにLIP×LIPと距離近いからだろーが!!」
ひより「へっ!?」
千鶴「私が分をわきまえてそっと2人を見守ってんのに!貢ぐためにキャラ作ってメイドカフェでバイトしてんのに!お前出すぎなんだよ!!アイドルに特別扱いされていい気になってんじゃねぇ!!」
ひより「いい気になんてなっとらん!!」
千鶴のめちゃくちゃな発言にキレたひよりは、胸ぐらを掴みながらタイプチェンジし、千鶴を殺しにかかる。
もちろん千鶴も負けておらず次々と攻撃の応酬を続ける。
樹里「いいぞ~!!もっとやれ~!!」
いや、樹里さん、あなたは止めてあげなさい(もっとも、樹里の力をもってしても無理なのかもしれないが)。
千鶴「ヘラヘラ2人とお出かけして写真取られたらどーすんだよ!!」
ひより「取ったのはちづちゃんやろ!!しかもあんな風に大事件にして!!なんであんなこと……!なんで2人を困らせるようなことしたんよ!!」
千鶴「そんなの……お前のせいだろ!!ずっと推しのために生きてきた……なのにお前がいるせいであんなことに!!私は悪くない!!全部お前のせいだ!!」
ひより「なぁにうだうだ言っとるん!!うちのせいって思っとるなら直接うちに言えばよかったやろ!!」
千鶴「うるさいって言ってんだろ!!」
もはや交渉は決裂。
お互いついに本気を出し、
ひより「卑怯者があああああああああ!!」
話が通じないと感じたひよりはついにオールトゥエンティタイムブレークを、
千鶴「クソモブ女ああああああああ!!」
千鶴はこのセリフと共に強化ディメンションキック21を、それぞれぶつけにかかった!
そして、当たったのは……。
千鶴「え、し、死んだ……?」
なんと千鶴の技だった。
それをくらったひよりは哀れ血を流しながら吹っ飛ばされ、気絶してしまうのであった。
そしてこの11話が放映された後、この『クソモブ女』というワードがピックアップされたこと、そして平成の世に生まれたHoneyWorksのキャラクター達に対して失礼極まりないのは言うまでもない。
そもそもこの『ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』というアニメのテーマとは「「愛ってなんなんだ?正義ってなんなんだ?」」という問題提起と、その結論付けである。
ヒロインたるもの!もまたアニメである以上、予算や天候、人的都合、その他大人の事情といったくびきからは逃れることができない。そんな中でHoneyWorksシリーズは、様々な矛盾やトラブル(設定や時系列の齟齬、歪に複雑化した事で混沌とした世界観、年号のカテゴライズ問題、ゲストヒーローの扱いの難しさ、ファン同士の対立など)を重ねながら今年度に渡り放送され続けてきた。
この有様を良しとしない千鶴が言い放った皮肉こそがこの「クソモブ女」なのではないだろうか?
ある意味千鶴を暴走させた原因はひよりへの嫉妬とも言えるものであるが、しかしその一方で視聴者からは、「アイドルが異星からの侵略を受けている地球で、急にやって来た異星人(ひより)を千鶴が警戒するのは当然ではないか」と言う声もある。
確かに本編でのひよりはアイドルよりも生きるためのお金を最優先にする善良な人ではあったが、もしひよりがアイドルの信用低下やスキャンダルを企む凶悪な人であった場合、放置すれば染谷勇次郎や柴崎愛蔵が殺されたり、それ以上の被害を生み出す可能性もあり得たのだ(実際、地球人になりすまして潜入する極悪宇宙人はシリーズにおいても散見される)。
そのため、千鶴が「アイドルに近づく不審者への対処」としてみても不合理な行為に走ったのは恐怖心や群集心理によるものでもあり、その点には(いかにその行動が愚かであるにせよ)一定の同情をしなければならない所である。
また、肝心のひより側もそもそもが不法な地球滞在であり、その上現地組織に保護を求めるでもなく隠密に過ごそうとする、その割にマネージャーであるためとはいえ勇次郎や愛蔵と三人で行動しようとするなど、大分軽率な行いをしているのもまた事実である。
そして、ジュリエッタたちが任せるべき対象である筈の勇次郎と愛蔵がジュリエッタの不安解消に全く貢献出来ていなかった、という落ち度もまた否定出来ない。
勇次郎にしろ愛蔵にしろひよりに感情移入し過ぎているせいか、事態の収拾や住民感情への配慮を大きく怠ってしまっている点がある。
確かにひよりは同情すべき境遇であるし、それに対してスキャンダルを起こして彼女の信頼を落とそうと言う千鶴の行為は褒められたものではないが、それはそれとしてLIPxLIPとしてはちゃんと組織だった治安維持活動を行うべきであっただろう。
もちろんそうした活動を行っても暴投らがひよりの処分などを強硬に求めてくる可能性はもちろん有るが、その時はまた新たに対応策を考えるべきであり、最初から全く対応を行わない理由にはならない。
だが実際には、個人的な見守りと協力に徹するのみで、結果的に「LIPxLIPですら対応してくれない」と千鶴らの不安を助長し、暴発を招いている。
とまあ総括するなら、ひよりも千鶴もまともな行動ができていなかったことは間違いないものの、そんな行動に走らせたそもそもの元凶はLIPxLIPとひよりを強引に任命した田村レイにあるといってもいいだろう。
まさに、「お前たちのアイドルって醜くないか?」とでも言うべきか。
……そして、肝心の千鶴自身も、後にクソモブ女であったことが判明するのだが、それはまた別のお話。
ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜 涼海ひより 中村千鶴
大空スバル:とあるゲーム実況中にモブキャラ相手に暴言を吐いた後輩に向けて、「どんな、いわゆるモブキャラにも、ファンはいるの!」と諭したことがある。関係性があるかどうかはさておき、ある意味では千鶴とこの台詞に対する風刺ともとれなくもないだろう。
お前たちの平成って醜くないか?:ある意味で元ネタと言えなくもない台詞。