概要
アメリカ合衆国とエジプトの関係（アメリカがっしゅうこくとエジプトのかんけい、英語：Egypt–United States relations、アラビア語：العلاقات المصرية الأمريكية）は、アメリカ合衆国とエジプトの両国関係の事である。両国関係はイスラエル・パレスチナの紛争やテロ対策など、中東の地域的な問題によって大きく左右されてきた。エジプトはサウジアラビアと並び、アメリカと同盟関係にある。
両国の比較
| 国名 | 政体 | 現在の首脳 | 国土 | 人口 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ合衆国 | 大統領制 連邦共和国 | ジョー・バイデン | 962万9091平方キロメートル | 3億3189万3745人（2021年12月） |
| エジプト | 半大統領制 共和国 | アブドルファッターフ・アッ＝シーシー | 101万408平方キロメートル | 1億777万524人（2022年6月） |
歴史
初期
1848年8月に外交関係を樹立し、1849年3月にダニエル・スミス・マッコーリーが駐エジプト大使となった。1922年2月にエジプトがイギリスから独立すると、同年4月に新たに外交関係を樹立し、1921年10月以来就任していたジョセフ・モートン・ハウエルが独立後としては初の駐エジプト大使となった。それまでの両国は非公式の外交関係を築いており、同年6月に大使の地位は特命全権公使に昇格した。
冷戦時代
1952年7月に発生したエジプト革命は、対外援助を送り続けたアメリカとの外交関係を変える事は無かった。アメリカはソ連とエジプトの緊密な国家関係に警戒し、1956年3月にナセル大統領の地域権力を弱める為にオメガ覚書を準備した。同年6月に大統領に就任したガマル・アブデル・ナセルは、親ソ連・反イスラエルによってアメリカを敵対させた。
1956年10月にイスラエルはスエズに侵攻し、イギリスとフランスはイスラエルと同盟を締結して運河を占領する為に軍を派遣した。アメリカのドワイト・D・アイゼンハワー政権は、外交的・経済的圧力を利用してイギリスとフランスを撤退させた。
1967年6月に第3次中東戦争が発生し、両国は外交関係を断絶した。1970年9月にナセル大統領が死去した後、より穏健な後継者のアンワル・サダト大統領は、イスラエルとの和平協定に向けてニクソン政権との裏ルート交渉を開始した。しかしイスラエルがスエズ運河の東岸から軍を撤収する事を望まなかった為、交渉は行き詰まった。1973年10月に第4次中東戦争が開始されると、エジプトはイスラエルへの奇襲攻撃を開始し、エジプトは米ソ共同の停戦提案を拒否した。1974年2月に両国は外交関係を回復し、同時にアメリカはシャトル外交に従事した。
1975年9月にイスラエルとエジプトは、アメリカが仲介したシナイ暫定協定を締結した。1978年9月にジミー・カーター大統領の仲介でキャンプ・デービッド合意が締結され、これは1979年3月に締結されたエジプト・イスラエル平和条約に直接繋がった。サダト大統領はアメリカの援助がイスラエルの紛争から解放され、地域の平和政策を追求する事を可能にした為、その目標に不可欠である事に気付いた。
冷戦終結後
2011年1月に発生したエジプト革命の間にアメリカの政府高官は、エジプトのホスニー・ムバラク大統領とその政府に対し、改革を行い・暴力を控え・平和的な集会や結社などの抗議者の権利を尊重するよう求めた。
2012年11月にバラク・オバマ大統領は、エジプトがイスラエルとの平和条約を締結して以来初めて、アメリカはエジプトのイスラム主義者主導の政府を同盟国でも敵国でも無いと宣言した。別の事件でマーティン・デンプシー将軍は、アメリカとエジプトの軍事関係はイスラエルに対するエジプトの行動に依存すると述べた。
2013年7月にモハメド・モルシ大統領が大規模な反乱を起こして打倒された際、両国関係は一時的に悪化した。オバマ政権はムスリム同胞団とその支持者と戦おうとするエジプトの試みを非難し、将来の軍事演習の中止・F-16戦闘機とAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターのエジプト軍への引き渡しを停止した。
2019年3月にマイク・ポンペオ国務長官は、ロシア製のスホーイSu-35戦闘機を購入しないようエジプトに警告した。
経済
2018年8月にアメリカとエジプトは2国間援助協定を締結した。この協定では健康・高等教育・貿易・投資・科学の分野におけるエジプトの開発優先事項をサポートし、包括的な企業主導の開発を促進する。
軍事
2021年4月に両国は軍事後方支援・物資・サービスの相互提供を促進する為の覚書を締結した。この協定ではアメリカ軍とエジプト軍が兵站支援・物資・サービスを交換する為の枠組みを確立し、必要に応じて互いに払い戻し可能な支援を効果的に提供出来るようにする為、その永続的なメカニズムを作成する。
2022年5月にアメリカのジョー・バイデン政権は、エジプトへの対戦車ミサイルの6億9100万ドルの売却を承認した事を議会に通知した。国防安全保障協力局によると、売却はエジプトが既存の備蓄を補充するのに役立ち、ミサイルはテロ対策作戦と国境警備作戦に使用される。
アメリカとエジプトの軍事協力は、おそらく両国の戦略的パートナーシップの最も強力な側面である。アメリカ中央軍の元司令官であるアンソニー・ジニ将軍はかつて、「エジプトはこの地域へのアクセスを可能にする為、私の担当地域で最も重要な国である。」と述べた。エジプトはクリントン政権時代にアラブ世界で最も著名なプレーヤーであり、中東におけるアメリカの重要な同盟国であると説明されていた。
