演:天津敏
概要
TBSドラマ『水戸黄門』第5部のシリーズ通して登場した怪法師。
同シリーズでは初となる「シーズン通して、御老公一行の前に立ちはだかる刺客」キャラであるが、その異端なまでの強さと残虐さから、「シリーズ最強の敵」として水戸黄門ファンの間で語り草となっている。
人物像
五島藩筆頭家老・宍戸源左衛門(演:安部徹)の命によって光圀と五島藩の安里姫(演:小林由枝)の命を狙う刺客として登場。
行く先々の悪党を手下にして使役しては用済みと見るなり皆殺しにするなど狡猾かつ残忍な性格だけではなく、幻竜自身が鎖分銅を仕込んだ錫杖と刀、そしてそれに留まらない怪力と拳法を駆使し、光圀一行でさえ道中でつけ狙う幻竜一味を退かせるのがやっとだったほどで光圀からは「化け物」と呼ばれ、第5部最終回前では長崎の地で光圀一行を小屋に閉じ込めて爆殺寸前の危機にまで追い込んだり、最終回の決戦においても一行が全力を尽くしても全くもって太刀打ちできなかったラスボスである。
最強の刺客の末路…
これほどまでに化け物じみた幻竜を唯一真っ向勝負の末に討ち果たしたのは、清に渡り少林寺拳法の修行を積んだ五島藩家臣・玉ノ浦朝勇(演:夏八木勲)だった。彼が一行の助太刀に入り、幻竜との1体1の死闘の末に形勢不利と見た幻竜が逃げようとした所を腹を殴りつけ、怯んだ隙にさんざん一行を苦しめてきた錫杖を奪い取り、渾身の一撃で胸を突き刺した事でようやく化け物・幻竜は倒れた。この最強の助っ人の朝勇は、第5部第1話で幻竜に殺された安里姫の護衛・玉ノ浦朝英(演:横内正)の弟だった。なお、当初は朝勇も「光圀一行の後をいつの間にか追ってくる謎の怪人物」として描かれていた。
その後のシリーズに残した影響…
第五部以降の水戸黄門では『光圀または一行にゲストとして加わった人物を狙う刺客』役がシリーズ全般(もしくは半分)を通して登場するようになり、それらの刺客達は皆総じて…
- 「光圀一行を行程の間にたびたび襲撃」
- 「光圀一行が総力でかかっても追い返すのがやっとなほどの手練」
- 「奥の手として光圀一行を爆殺寸前に追い込む」
という玄竜の設定、行動が流用される事となり、いわば幻竜はその王道パターンの礎を築き上げた開拓者といえる。
“最強”と謳われし所以
しかし、その後のシリーズに登場した刺客たちは、基本的に途中で利用した旅先での悪党たちを使い捨ての同志または手下にする事はあれど、形勢が不利になれば見捨てて一目散に逃亡し、残された当地の悪党たちは光圀に裁かれるパターンが基本となり、皆殺しにまでされるケースはほとんどどなかった(盗賊または浪人の一団などの例外もあり)。
また刺客たち自身も、最後は*光圀一行の誰か*が雪辱を果たす形で倒すか、後ろ盾である黒幕が倒れた事で自ら命を絶つパターンがほとんどであり(中には同志たちや首領から捨て駒にされながらも光圀一行に助けられたり、お銀のように光圀の温情を前に改心したり寝返るなどして味方になった者もまれにいる)、「光圀一行ではなく助っ人のゲストが単独で討ち果たす」形で勝利できたパターンは、幻竜をおいて他に例がない。
そんなシリーズ屈指の残虐性、そして結果的に「最後まで光圀一行の者たちの手では倒す事ができなかった」という特異性こそ幻竜が「シリーズ最強の敵」と称される理由である。
この「最強の敵」っぷりは、第43部最終回スペシャルでの、これまでの『水戸黄門』シリーズの名場面を振り返る特集でも扱われたほどだった。
再登場
ちなみに幻竜はBS-TBS版(第44部)においても小沢仁志が演じてリブート登場しているが、そちらは放送回数が圧倒的に少なかった(第5部の全26回に対し全10回)ためか、登場回数は第4~5話のわずか2回で、第5部のような最強刺客としては描かれなかった。
それでも同シリーズにおいては初めて助三郎&格之進や弥七を苦戦させるなど、それまで相対した悪党とは一味違うインパクトの強さは健在だった。
関連項目
一条公麿三位中納言…玄竜と並ぶ水戸黄門を代表する名悪役。こちらは一話限りのゲスト悪役だったが、玄竜とは違う意味で強烈なキャラの濃さから印象に残る悪役となった。