注意
片方の意見の否定や叩き・キャラ叩き・当時の制作スタッフを必要以上に批判する事は控えて下さい。あくまで炎上について解説するページである事を忘れずに。
ゲームやスタッフへの批判的な内容を見るのがつらい方、ペルソナ3を純粋に楽しみたい方はこの記事を閲覧せずブラウザバックする事を推奨します。
概要
『ペルソナ3(2006年発売)』から始まったプレイヤー間の主人公生死論争と、『ペルソナ3フェス(2007年発売)』収録の本編後日談『エピソードアイギス』の内容に拠る騒動を指す。
特に『エピソードアイギス』はシナリオ・探索や戦闘面のゲーム性・キャラクターの扱い・プロモーションに批判が集まり、主に匿名掲示板「2ちゃんねる」上でキャラ叩きとスタッフ叩きが連日行われた。また制作スタッフのインタビューもファンを混乱に陥れる内容であり、『エピソードアイギス』にショックを受けた少なくない数のファンの作品離れを引き起こした。
事の経緯
2006年発売の『ペルソナ3』のEDが解釈が分かれる内容だったため、ネット上で議論が勃発した事から始まる。
尚以下の反応は主に、2ちゃんねるのペルソナ3ネタバレED考察専用スレを中心に見られたとされる。
『ペルソナ3(以下、『無印』)』発売前
- ディレクターの橋野桂氏によるネット記事のインタビューが話題になる。(ソース元はリンク切れ)
>橋野:エンディングに必ず何か感じ取れるものがあると思うので、楽しんでください。(中略)プレイヤーにそれだけの時間を頂くわけですから、それで最後「なんじゃこりゃ」じゃコントローラ投げつけちゃうんで、そういうことはないですよ。
無印発売後
- 主人公がラストシーンで死んだ派・死なずに眠っただけ派・どっちとも取れるので判断がつかない派とファンの間で意見が割れ、ネタバレスレで議論が活発化する。
- 『電撃PlayStation』インタビューで橋野氏が「EDの受け取り方はプレイヤーに任せる」と発言する。
>――物語についてもいろいろ論議されているのを見かけますね。
>橋野:扱うテーマが「死」というものなので、それぞれがいろいろな受け取り方をしてもらえればと思います。
(中略)
>――主人公のゴールというと、エンディングについてユーザー間でもいろいろ推測が飛び交っています。
>橋野:儀式的な意味合いが強いというか、必ずしもバッドエンドではないと思っています。あとはそれぞれの受け取り方におまかせしますが…。そんなにわかりにくくしたつもりはないので、自分としてはちょっと意外な反応だったりするんですよね。
- 無印の公式設定資料集が発売。収録されたインタビュー内の橋野氏の発言で主人公の死が確定。ネタバレスレ内では同インタビューで同氏が語った死生観や「EDは葬式にする案もあった」という発言への批判が見られた。
>――いきなりですが、勝利を否定された最後の戦いの意味は?
>橋野:「ラストバトルでの勝利はどのような意味を持つのか?」ですか。絶対に勝てないニュクスすなわち死との戦いというのは、プレイヤーが契約をもとに入れられた『ペルソナ3』という装置の中で、絶対に逃れられない死に挑戦してみる、ということです。誤解を恐れずに言うと、バンジージャンプなんです。ゲームの冒頭で足を縛られて、跳んでみる。ゲームでは、この主人公が死んだことをはっきりとは言っていないのだけれど彼の物語は完全に終わってしまっている。でも、プレイヤーは死んでいない。つまり、ゲームを装置として、いつかは死んでしまうことを体験してみてください、ということなんです。そうした、死の疑似体験を経て、現実の中で死について、生について考えて見て欲しい。(後略)
- 『ペルソナ3フェス』発表。【私を手放さなければ、きっとまた会える】というキャッチコピーと、主人公の新規カットを含むPVおよびオープニングムービーが公開される。公式サイトでは時の狭間・未来への鍵・囚われ人・贖罪というキーワードと、「閉ざされた扉を開くのは絆の力。」という煽り文が登場。
- 本編での主人公の死は橋野氏の発言によって確定していたが、「主人公は後日談で復活するだろう」「主人公の死について建設的な話が見れるだろう」とファンの間で期待が高まる。
フェス発売後
- 『フェス』が発売され、『エピソードアイギス』の内容を受けてネタバレスレが炎上。各地のレビューサイトでも批判レビューが複数投稿される。ゲームの内容については後述。
- ライターの田中裕一郎氏が『電撃マ王』のインタビューで「最高の充実で事切れるというハッピーエンドを描いた」「アイギスには帰るべき日常が必要だった」と発言。ネタバレスレで批判される。また、『ファミ通PLAYSTATION+』掲載のインタビューにおいても「アイギスに帰るべき日常を見つけてあげたかった」と重ねて発言。
- ペルソナ3のファンサイトの閉鎖・放置サイト化が続出する。2ちゃんねるの本スレはフェス発売2ヶ月で過疎化。
- 2009年、『ペルソナ3ポータブル』発売。本作では後日談が収録されず、フェスの移植や後日談のメディアミックス化などもなかった事もあり炎上は緩やかに沈静化。『ペルソナ4』『ポータブル』から入った新規が増えた事、当時のファンが離れた事も重なり、炎上を知る者が少数派となる。
- 『P4U』『P3D』などで主人公の復活が匂わされる。『Heartful Cry』等の楽曲こそ派生作品で定期的に扱われはしたものの、後日談そのものやメティスの露出はほぼ無かったために一部のファンから「後日談は黒歴史」と揶揄される。(炎上シナリオという意味を込めて黒歴史と呼ぶ者もいる)(とはいえ公式からの明言はないため、安易に黒歴史と呼ぶのは控えるべきであろう。)
P3R発売後
- 2024年2月2日、フルリメイク作『ペルソナ3リロード』発売。タイトル発表当時は後日談の搭載は無いと告知されていたが、発売1ヶ月後に『エピソードアイギス』のリメイクを含む追加有料DLCが発表される。アイギスの誕生日である同年9月10日に配信予定であり、リメイクではシナリオの根幹は変わらず、ゲーム難易度やキャラクターの台詞などが時代に合わせて細やかに修正されると告知された。
- リメイク版エピソードアイギスの売り方が海外ユーザーの不興を買う(原作であるフェスでは通常版に同梱されていた後日談が、リメイクでは3850円/34.99ドルのエクスパンションパスを購入しないとプレイできないため。本編自体も9680円と高額)。不満に思った海外ユーザーによってSteamレビューが荒らされ、エピソードアイギス配信前にしてエクスパンションパスの評価が【やや不評】に落ち込む。またパスは追加楽曲と衣装がセットとなっており、エピソードアイギス単体での購入はできない仕様。この件については日本人ユーザーからも不満の声が出た。
- アイギスのミックスレイド実装・ペルソナ全書引き継ぎ機能が発表される。オリジナル版にはなかった要素であり、一部ファンはこれを不満を感じた模様。
- 『ペルソナ5』の主人公であるジョーカーとのチャレンジバトルの実装が発表。ただしリロード本編ではなくエピソードアイギス内での追加要素という事で、「せっかくなら本編で戦いたかった」との声も挙がった。
フェス後日談の内容
ゲームという媒体である以上、実際にプレイしてみないと何が悪いのか伝わらないコンテンツであるため、未プレイの閲覧者はその点を考慮することが推奨される。
尚、シナリオやキャラクターについては可能な限り主観が入らないよう簡潔に記すものとする。(編集を行う際も注意されたし)
プロモーションやシナリオにおける主人公の復活を期待させる要素
- 「私を手放さなければ、きっとまた会える」というキャッチコピー
- 「『フェス』とはフェスティバルという意味」「ペルソナ3を楽しんでくださったユーザーのみなさんへのファンコンテンツ」「ファンの要望に可能な限りこたえた作品。期待して待って」というライターの発言(電撃PlayStation - 2007年01月12日号 Vol.376)
- 主人公の影を追いかけるストーリー、ナビの風花の意味深な台詞
- イゴールの「いかなる扉も開かれる」という台詞、意味深に光って閉ざされたままの主人公の自室の扉、「彼女は再び立ち上がるだろう 彼方の扉の向こうにいる”一番の大切”のために」という電プレ掲載の煽り文句
- 過去に戻れる「時の鍵」というアイテムの登場
- 本編でのチドリ生還ルート及びアイギスコミュの追加
しかし、主人公は復活しない。
賛否分かれるキャラクターの言動
後日談のシナリオは、とにかくプレイヤーによって感想や評価が変わる賛否両論の内容だった。「仲間達の主人公への想いが伝わって感動した」「プレイヤーと仲間達が前に進むために必要な話だ」との意見ががある一方で、「アイギスや仲間達が自己中すぎて気持ち悪い」「ゆかりが彼女面して暴走していてウザい」「本編の絆が台無し」「スタッフが透けて見えている、キャラの舞台装置化が酷い」と批判するプレイヤーもいた。
後日談の内容に納得したプレイヤーと、キャラクターに感情移入できなかったプレイヤーが生まれる事となり、ファンの間で評価が二つに分かれたのである。
ストーリー進行について
作中にて仲間割れから戦闘に発展するが、この流れを「実質殺し合いで、本来戦う必要のないキャラクターとまでガチバトルを強制されている。」「(戦闘までの流れが)不自然」「ストーリー進行のためにキャラクターが動かされている」と批判するプレイヤーもいた。
ちなみにこの点はP3Rでのリメイクに際して、公式サイトで「リメイク版ではより感情移入できるように調整した」との告知がなされている。
キャラクターによるストーリー上の出番の差
後日談は本編のセーブデータ等は引き継がず、一つのストーリーとして独立している。作中中盤ではアイギスとゆかりに特にスポットが当たり、特にゆかりは主人公に執着して仲間達に食ってかかったり泣き叫ぶシーンがある。そのため、本編でゆかりを恋人にしていなかったプレイヤーの目には少々不自然に映り、作中での強い言動も相俟って、人によって意見の分かれる描かれ方となった。
一方で風花と美鶴は主人公への想いを吐露するようなシーンは無く、アイギス・ゆかりと比べると大して目立たないため、プレイヤーによっては本編とのズレが感じられた。他にも、後日談ではアイギスの犬語翻訳機能が使用不可であるため、コロマルの出番も減りがちである。
エンディング
主人公はニュクスを封印して死んだのではなくニュクスと世界を守り続ける封印の扉になっていたと判明。ニュクスに触れようとするエレボスは死を望む人類の悪意なので倒すことは不可能。仲間達は人類の意識を変えていく事を決意して現実世界に帰還するが、具体的な対策は示されない。尚、後の『P4U』でエリザベスがエレボスを都度撃退していることが語られた。
本編エンディングとの関係
主人公の死の真相が判明した事で、本編ED「キミの記憶」の歌詞や、「わたしが守るから」という本編ラストシーンのアイギスの台詞の意義が薄れたのではという指摘がある。
グロテスクなムービー
主人公の姿をしたシャドウをプレイヤー自身の手で倒した直後にムービーが流れるが、その内容はシャドウの肉体から皮膚や肉が剥がれ落ち、血管や内臓を剥き出しにして崩れていき、最後には主人公の微笑みを一瞬映し出して消滅するというもの。人によってはトラウマになりかねないほど衝撃的な映像だった上、同じものを目撃したはずの仲間達のリアクションがそっけなかったためにプレイヤーの混乱を生んだ。
ゲームの進行について
日常パートがあった本編とは異なり、後日談はダンジョンと寮を行き来するのみ。ひたすらタルタロスと同じ自動生成ダンジョンに潜り、仲間の短い過去を見ては寮に戻るの繰り返しで、単調さは拭えない。
高難易度、育成の不便さ
フェス後日談は難易度が選択できず、HARDで固定される。雑魚シャドウは耐性も火力も凶悪で、仲間に直接指示できずガードコマンドも無いフェスのシステムの都合上、うっかり敵に先制を取られればパーティが半壊する。また自身の弱点を見切りスキルでカバーしている嫌らしいシャドウも雑魚・ボス問わず存在している。
その上育成面はペルソナ全書無し、ペルソナ合体の経験値ボーナス無しという不便な仕様となっている。シャッフルタイムでペルソナを集めて地道に育成していくため、とにかく探索に時間がかかる。ダンジョンはタルタロスと同じ仕様で代わり映えせず、楽しめるギミック等も無い。(無印・フェス本編のタルタロスがそもそもプレイヤーからは不評だった)
補足:発売後の制作者インタビュー
P3本編で主人公が死に、エピソードアイギスで「その死を受け入れ前へ進む」という結末を迎える以上、ビターエンドに分類される内容と言える。そのため、ライターの田中裕一郎氏が「(本編は)ハッピーエンドを描きました」「プレイヤー自身の生き方に対する考えに、プラスのものが残れば、最高に嬉しく思います」との発言に疑問を呈するプレイヤーは多かった。
ちなみに田中氏はお気に入りのP3キャラを訊かれた際にアイギスと答えている。さらに「アイギスは対シャドウ用兵器として作られたわけで、戦いが終わってしまうと日常がなくなってしまう。その彼女に、帰るべき日常を見つけてあげたかったというのがいちばんですね」という発言もあり、後日談のシナリオがアイギス&メティス贔屓と感じていたプレイヤーの中には同氏を叩く者が多くいた。
また、橋野氏については無印発売直後に「解釈はプレイヤーに委ねる」と発言した後、無印設定資料集のインタビューにて主人公の死を確定させる部分があった。さらに、後日談のシナリオが賛否両論(かつ人によっては不満の多い)内容だったため、「自分の思想を押し付けただけ」「こんな内容ならフェスなんて出さないでほしかった」と同氏を執拗に非難するプレイヤーも見られた。
フェス発売後、橋野氏は公式ブログでこう述べている。
>ただ、ゲーム内容について、厳しいご意見も頂きました。特に、ペルソナ3のベースにある長時間のプレイの単調さや、シナリオの描き方についてなど、充分に楽しめなかったという意見も頂いており、こうした厳しい意見も、真摯に受け止めながら、今後に繋げていきたいと思います。
(2007.07.19 橋野桂の開発通信 Vol.11より)
プレイヤー同士の論戦
無印発売後〜フェス発売前は主人公生存派と死亡派の論争が盛り上がっていたが、フェス発売後は後日談肯定派と否定派が叩き合う事態となった。ちなみに当時のネタバレスレはほぼ否一色であり、たまに肯定派のレスがつくと否定派から袋叩きにされるという有様であり、ネタバレ考察スレではなく呪詛スレ、アンチスレだと本スレ民から揶揄される程であった。
ネタバレスレより比較的平和な本スレでは後日談は基本的に触れられず、時たま話題に上っても熱心に語るようなファンは皆無に等しかった。炎上が収まる頃には後日談アンチも愛想を尽かしてP3から去り、2008年発売の『ペルソナ4』が盛り上がった事もあってP3本スレは過疎化していった。
P3Rにおけるリメイク
『ペルソナ3リロード』の大型DLCとしてエピソードアイギスもリメイクされる事となった。オリジナルからの変更点としては、
- 本編主人公のペルソナ全書をアイギスが使用可能
- ミックスレイドがアイギスのテウルギアとして使用可能
- P5主人公とのチャレンジバトルの実装
- 本編と同じくリンクエピソードの追加
- 時代に合わせたシナリオの細やかな調整
などが挙げられる。
全書とミックスレイドの実装は難易度緩和が目的と思われるが、主人公の全書をエリザベスがアイギスに渡すという行為を快く思わない原作プレイヤーもいる模様。また、P3R版エピソードアイギスでアイギスのテウルギアとなったミックスレイドは、リメイクの際に削除されたものであり、(【ジャスティス!】、【闇と番犬】をPVで確認済み)「主人公で使いたかった」との不満の声が上がった。
(ちなみに原作ゲームでアイギスがミックスレイドを使えず、公式の名言こそ無いものの、ミックスレイドを『P3』主人公ならではの能力と考えていたプレイヤーもいた模様。フェスの公式ノベライズでアイギスがミックスレイド【雷神演舞】を発動しているシーンがあるものの、こちらはプレミア化している絶版本であり、知名度も低いため、無理もないと思われる。)
『ペルソナ5』主人公であるジョーカーのチャレンジバトル実装についてはP3R本編ではなくエピソードアイギス内の追加要素であり、P3R主人公でジョーカーに挑む事はできず、そのことを残念がるファンもいた。
尚、プロデューサーの和田和久氏はファミ通インタビュー「シナリオの根幹は変えない」「当時プレイした人も初めての人も楽しめるように作る」と発言している。
外部リンク
【P3R】『ペルソナ3 リロード: エクスパンションパス』開発者に独自インタビュー。高いハードルがあった“後日談”のリメイクや、“女性主人公”のこと、“完全新作”への意欲などを語っていただいた。(ファミ通インタビュー)