本来の「逮捕」の概要
身柄を拘束することを指し、刑法でも人の身柄を拘束することについて「逮捕罪」が定められている。
「部屋や建物などに人を閉じ込めておく」監禁罪に類似しており、実際監禁罪とセットで定められているが、逮捕罪の場合動けないレベルで縛り付けておいたりすることを想定している。
捜査における「逮捕」の概要
一般に「逮捕」と言った場合には、警察などの捜査機関が犯罪の疑いのある者を法律に基づいて拘束することを指す場合が多い。
日本国憲法33条では、「現行犯として逮捕される場合を除いては、逮捕令状がなければ逮捕されない」旨が定められている。
犯罪や法律に違反する事を犯し、または犯したと疑われる者(被疑者)は、警察官などの司法警察職員や検察官,検察事務官に逮捕されることがある。被疑者の逃亡(自殺も含む)や証拠隠滅を阻止するためである。被疑者の処罰は目的とされていない。
ただし警察官であっても誰でも彼でも逮捕できる訳ではなく、原則として逮捕するには裁判官が発行する「逮捕状」が必要である(通常逮捕)。
この原則の例外となるのは「現行犯」(現行犯逮捕)。「現行犯逮捕」は警察機関の人間でなくても、誰でも可能である(私人逮捕)。
逮捕した後、「勾留」という手続に移って被疑者を拘束することが許されるが、逮捕と勾留の期間はごく一部の例外を除き最長で通算23日と厳格に定められており、この23日以内に刑事裁判にかけるか、釈放するかを決めなければならない。
この期間制限を越えて逮捕することは許されないため、事件によっては犯人を逮捕できる状況であってもあえてすぐに逮捕せずに泳がせておくということも行われることがある。
またもう一つの例外として、一定の重い罪につき急を要する場合はまず身柄を確保してから逮捕状を請求する「緊急逮捕」という手続きも定められている(これは刑事訴訟法に定められている手続きだが、上記の憲法33条との絡みからかつては違憲説もあった)。
逮捕状を持って警察に身柄を拘束される事を逮捕と呼ぶ訳だが、今ここに書いたとおり逮捕とは警察等の捜査機関による被疑者の身柄の拘束のみを指すものであり、犯罪者である事が確定する事とは異なる。
警察とて逮捕の際には無根拠に動いている訳ではなく、裁判所のチェックも入る。
しかし、捜査の初期段階では十分な証拠が集まっているとは限らないし,警察も人間である以上は誤認や調査不足などによる間違った逮捕と言う可能性は常に存在する。そもそも逮捕の要件からして「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」としかされておらず,法律上は「一応犯人らしい」程度の嫌疑で逮捕は可能なのである。そうしないと、証拠探しでまごまごしている間に犯人に逃げられてしまうということも起きるので、ある程度緩い疑いで逮捕を行うことはやむを得ないのである。
つまり,「逮捕したけれど犯人ではなかった」というのは法律上当然にあり得るのである。
裁判を経て各種証拠などを検証し「証拠上,合理的な疑いを差し挟む余地がないくらい確実」として有罪判決が出て初めて公式に認められた犯罪者となる。
しかしながら、警察に容疑をかけられている時点で何かしらあるのだろうという風潮に加え、この段階でマスコミが大々的に報道を行ってしまう事、そしてその後無罪であったことが分かっても名誉回復がなされる事が滅多に無い、仮に名誉回復がされても「火のない所に煙は立たぬ」と悪評を広める者もいる事から、世間一般では「逮捕=有罪」と言う認識を持ってしまっている人が少なくないのが現状。
そのため、逃亡の恐れがない案件でも大きく報道されると「早く逮捕しろ」と騒ぎ出す人は絶えない。
繰り返し述べたように、逮捕はあくまで犯罪捜査の手段の一つにすぎず,逮捕されることを以って犯罪者であることが確定する訳ではない。あくまで、裁判で有罪判決が出るまでは『犯罪者』とはならないので、その点誤解のないように!!
こうした誤解の下に「逮捕されたからあいつは犯罪者だ!!」と騒ぎ立てることは、最悪自分の方が名誉毀損という犯罪者になることになる。
なお法律違反を犯した被疑者となっても、その全てが逮捕されるとは限らない。犯した罪の程度や、逃亡の恐れがなく、捜査に協力的などの理由で逮捕に至らない場合もある(そもそも法律上は任意捜査(在宅)が原則で,逮捕は例外である)。
この場合は書類送検の上、後日不起訴処分になったり,在宅起訴されるなどの措置が取られる。もちろん後日、逃亡を図ろうとしたなどで逮捕の必要性が生じれば逮捕されることもある。
なお、法的根拠が無いのに他人を逮捕すると、冒頭で紹介した「逮捕罪」「監禁罪」と言う罪に問われる。警察・検察官でない者(俗に言う逮捕権を持たない者)が逮捕を行う事はもちろん、警察官や検察官が不当に人を拘束した場合も不法行為となる(捜査や裁判に関わるものが不法に逮捕をすると「特別公務員職権濫用罪」という逮捕監禁罪や職権濫用罪より重い罪になる)。
ただしこれにおいても「現行犯」に対しては例外とされ、一般人でも、また逮捕状がなくても独断で逮捕を行う事ができる。逮捕の際に暴力をふるったとしても、必要な範囲であれば適法であり賠償をする必要はない。
他方、一般人が現行犯を逮捕した場合、速やかに警察又は検察に通報して身柄を引き渡さなければならず、それ以上の拘束を行うと罪に問われる可能性はある。逮捕をした者が逮捕罪で逮捕されるという笑えないことになってしまうのだ。
フィクションにおいて
専ら悪役の退場シーンとして使われるが、主人公や脇役などが冤罪等で逮捕されるなど例外もある。