社会主義とは、個人の財産権を制限し、社会を共有管理することで社会の諸問題を解決するための政治や経済の思想。特に生産手段の共有によって搾取のない社会を目指す思想は共産主義とも言う。
着想そのものはかなり古くからあるが、19世紀にイギリスのロバート・オーウェンによって起草・体系化された。根本的に個人の財産や産業を社会によって共有し管理することで、貧富の差をなくし、平等な理想的社会を実現できるとした。
ドイツのマルクスとエンゲルスはヘーゲルの弁証法的唯物論に基づいた「科学的社会主義=共産主義」を体系化した。マルクスは、国家を否定するアナーキズム(無政府社会主義)を掲げるバクーニン、政府が社会を管理する国家社会主義(Staatssozialismus、日本語においてはナチスのNationalsozialismusと同名になるが全くの別物である)を主張するラサールらと激しく論争した。
19世紀末のドイツ帝国では、ラサールの提案が取り入れられ、社会保険、公的年金などの社会主義的制度が誕生した。これ以降西欧諸国では資本主義のシステムを生かしつつ社会主義を運用する社会民主主義が力を持つようになっていく。アナーキストや共産主義者はこれを労働者を懐柔するための手段だとし、あくまでも革命を起こさなければ労働者は解放されないと主張していた。
その後も社会主義を母体とした思想がいくつも派生。マルクスの流れをくむ共産主義が主流となる一方、キリスト教の隣人愛に基づく解放の神学、仏教の平等思想に立脚し反共産主義を主張する仏教社会主義などが生まれた。
イタリアのムッソリーニは、共産主義から平等主義を排除してナショナリズムを混ぜ合わせ、ファシズムを体系化した。ドイツのヒトラーもこのファシズムに似た国家社会主義=ナチズムを国是とした。