概略
「宇宙の狼」という異名を持つ、ガミラスが誇る名将。理論派にして実行力も伴い、軍人としての素質も優秀で、デスラーから勲章を受け取り、さらにヤマト討伐を買って出た時など「また勲章が増えるだけだろうがね」と言われるほどである。
容貌は、濃いもみあげと、2つに割れたアゴ、そして軍服(戦闘服あるいは野戦服の類かと思われる)からも分かる筋肉質な体格が特徴。
名前の由来は第二次世界大戦時のドイツ陸軍軍人のエルヴィン・ロンメル。リメイク版の2199ではエルク・ドメルとフルネームが設定され、容姿も初代より若干ふくよかになっている。
性格
軍人としての能力は勿論のこと、優秀な敵(特にヤマト)への敬意を表すなど、人格も申し分ない。ただしその一方、部下に対する態度はかなり厳しい面があり、劇中ではゲール副司令官との確執が多数描写されている。
彼が集めていた珍妙なコレクションを「悪趣味だ」と叩き壊したり、ゲールが自分のライターでドメルの煙草に火をつけようとしたら着火しなかったため、「(そのライターのようにお前も)役立たず」と罵るような場面もあった。また、ゲールからヤマトへの艦隊攻撃を具申された時にも、それを受け入れることはなかった。
こういった幾多の仕打ちや、意見を退けられる行為が、ゲールに不満を募らせていくことになり、結果として後に思わぬしっぺ返しを食らわされることとなった。
軍人としての手腕
ドメルは名将と称される軍人である。実際に行った作戦、または戦闘を挙げていく。
異次元遭遇戦
ドメルがバラン星に着任した後に、彼は3000隻と言う大規模な艦隊を率いて軍事演習を行った。それも宇宙空間ではなく、異次元内での軍事演習である。(この事から、ガミラス軍は異次元内での航行技術を取得していることが窺える。ただし、後のシリーズで次元潜航したガミラス艦は次元潜航艇を除き、確認されてはいない)
この際、偶然にも異次元に嵌り込んでしまったヤマトに遭遇。ドメルは全艦隊で襲い掛かることなく、手始めに駆逐艦1隻を差し向けた。ヤマトを包囲網の中に誘き出し、全力で叩こうという意図であるとされる。
だが、ヤマトは予想に反して逃走を開始。ドメルは罠が通用しないと分かるや、全艦隊で追撃させる。この素早い判断が、彼を名称と呼ぶ所以の一つとも言えるだろう。とはいえ、結局はヤマトに振り切られてしまう。この一件から、ドメルはヤマトに対して次の様な認識をするに至った。
「ヤマト、侮りがたし」
精神・心理攻撃
艦隊における運用手腕はさることながら、別の側面でも意外な手腕を発揮した。それが、精神や心理を突いた攻撃である。リレー衛星と呼ばれる、ガミラスが有する強力な通信能力を持った中継衛星を使い、ヤマトに地球との通信をわざと繋げさせた。
地球は酷い状況に置かれているのは、ガミラスも承知していることである。そこで、散々な地球の状況を教えてやることで、ヤマトのクルーに精神的に追い詰め、不安を長大化させようと狙ったものとみられる。
この作戦は半分成功して、半分失敗した。失敗の原因は、ヤマトの通信長である相原義一にある。彼は繋がらなかったはずの通信が回復していたことに気づけず、それを報告をすることが出来なかった。それから、相原は内密に、自分だけの回線として使用を続けてしまったのだ。つまり、彼ひとりにしか効果は現れず、あまつさえ宇宙に飛び出した先でリレー衛星を見つけられ、破壊されてしまった。
失敗に終わったが、こういった艦隊戦術以外に対する、心理戦を駆使できるのもドメルが名将と言われる所以ではないだろうか。
人口太陽落下作戦
ヤマトがバラン星に向かっていることを知ったドメルは、大胆な作戦案を提示する。それは、バラン星にヤマトを誘い込み、地上調査をして動けない所に人工太陽をぶつけるというものだった。これはバラン星の基地をも失うもので、勿論のことゲールは反発した。それも当然のことで、バラン星は銀河への足掛かりとなる重要な基地である。それを失ってしまうと、途中補給や修理をすることもできず、または最前線への補給物資を届ける事に、途方もない時間を要することになってしまうからだ。
しかしドメルは気にも留めず、ヤマトさえ潰せれば、後に新しい基地を建設すればよい、という考えであった。因みに、ゲールの提案として、艦隊で全力を持って叩くべきだと至極真っ当な主張をしていた。基地へ敵を近づけず、なるべく離れたところで撃破する事が総統への忠誠心ではないかと考えているからである。
作戦としては最初に記述した通り。ドメルは艦隊ごと引き揚げさせ、ヤマトを遠くから監視するに徹する。基地はそのままに、だが、ヤマトの調査部隊を釘付けとするために、わざと原生生物バラノドンを大量に殺して地表に放り出した。
これは図に当たった。バラン星調査に降り立った調査隊は、これを発見して怒りをあらわにしている。そして、調査に夢中になっていたところに、彼は遂に人工太陽を動かした。落下時間とヤマトとの接触時間は、波動砲を撃たせる暇を与えない・・・・・・筈だった。
ここで彼は運に見放された。これまでに仕打ちを受け続けたゲールが、遂に行動を起こしたのだ。デスラー総統に密告して、基地の破壊を留めさせようとした。デスラーから直接に作戦を止めろと言われては、無視するわけにはいかない。
だが、その躊躇いがいけなかった。ヤマトは回頭に間に合い、波動砲を発射したのだ。人工太陽は大穴を空け、その中をヤマトが突き進んで回避する。後は操作不能になった人工太陽が落下を加速させ、途中崩壊した破片群がバラン星基地を直撃。壊滅してしまった。
ゲールによる密告がなければ、この大胆極まりない作戦は成功していただろう。その反面、1隻潰すのに基地を犠牲にするという考えは、大胆すぎてゲールはおろか総統にも受け入れては貰えなかった。寧ろ、ゲールの進言通りに、ドメルの手持ちの兵力3000隻と、彼の艦隊運用手腕があれば、ヤマトを撃沈できた可能性は高い。(後のリメイク2199では、それを証明しているが)
七色星団海戦
先のバラン星壊滅の件で、軍事法廷から死刑を宣告されたドメルだったが、デスラーの寛大な処置により免れる。そしてヤマトへの再戦と名誉挽回を図るべく、雌雄を決した戦闘である。
ドメルは決戦のために、戦場を選定し、そして各戦線から精鋭の空母部隊を招集した。ルビー、サファイア、ダイヤ、オメガの各戦線から、三段空母こと多層式空母3隻、戦闘空母1隻の4隻である。各空母には、戦闘機隊、爆撃機隊、雷撃隊が集中的に搭載されている。また、戦闘空母には大型の爆撃機1機が搭載されていた。
何故、ドメルは手持ちにあった3000隻もの艦隊を活用しなかったのかは、明確にされてはいない。可能性としては、ドメルへの嫉妬や反感を持つ高官等の手回しや、基地を犠牲にした責任から取り上げられている、という考え方もできる。
戦場は七色星団で、レーダーが効かず暗黒物質が膨大なことから、艦隊の隠れ家としても有効だと判断した。もっとも、空母と戦闘空母しかいない状況を考えれば、隠れ家は絶対に必須と言えるだろう。そして、対波動砲兵器のドリルミサイルと、新兵器の空間物質移送機を配備することで、ヤマトへの備えを万全なものとした。こういった備えを怠らず、また、自軍の兵力の比率や状態を良く考えての戦場選定など、よく練り込んでいることから、非凡さを窺える。
作戦として、以下の手順があった。
・第1段階、第1空母の戦闘機隊を差し向けることで、ヤマトの護衛戦闘機隊を誘き出して釘付けにする。
・第2段階、第2空母の爆撃隊を瞬間物質移送機でヤマトの頭上に送り込み、奇襲を仕掛ける。
・第3段階、第3空母の雷撃隊も瞬間物質移送機で送り込み、ヤマトの両舷から攻撃させる。
・最4段階、連続した戦闘で燃料不足になり、帰投した戦闘機隊の隙をついて、戦闘空母からドリルミサイルを搭載した爆撃機を瞬間物質移送機で送り込み、波動砲をミサイルで封じる。
・最終段階、爆破を待つ。
彼の作戦は図に当たった。ヤマトのブラックタイガーは、尽く翻弄させられ、その都度にヤマトは爆撃機と雷撃機に攻撃され、満身創痍となった。ドメルの作戦指揮が優秀な事もあるが、もっともすばらしいのは、掻き集められた部隊が忠実に連携を保てたと言う事にあるかもしれない。
ドメルは最終段階――つまりドリルミサイルの自爆を待つまで、作戦を有利に進めた。無力化したヤマトを目前に、ドメルは爆破までの間、直接砲撃でヤマトを沈めようと考えていたのだ。しかし、彼はここにきて致命的なミスを幾つか犯すとになる。
全艦隊を持ってヤマトの前に姿を現した。そして、戦闘空母の砲撃能力を持って、ヤマトを沈めようと試みた。ヤマトも第二砲塔で反撃するが、レーダーも使えず命中しない。が、戦闘空母の砲撃も中々に効果が出ず撃沈できない。
結局は爆破が決定打となり得る、とドメルは確信した・・・・・・その時である。ドリルミサイルがヤマトの艦首から飛び出し、ドメル艦隊に突っ込んできたのだ。まさか、地球人(真田)によってドリルミサイルが反転するとは思ぬ事態であったろう。
そこからは惨憺たる光景が映った。ドリルミサイルは戦闘空母に真っ向から直撃、戦闘空母は大爆発して轟沈。その爆炎は隣接している第1空母に波及、見事に轟沈。さらに爆炎に包まれた破片が巨大な爆弾となって、第2空母、第3空母に直撃して轟沈。弾薬を積み込んだ空母なら尚更、誘爆の度合いは高い物であったろう。残るは彼の乗るドメラーズ2世のみで、ドメルは臆することなく爆雷攻撃に出るが、効果は薄く結局は自爆と言う手段に出る他なかった。
慢心と侮り
ドメルは軍人としての手腕が高く、ヤマトと沖田に敬意を表すなど、かなり出来た人物だった。その反面で、やはり侮りや慢心があったのは否定できない。
七色星団の時、彼はヤマトが無力に近いと信じて、艦隊ごと接近している。ヤマトには、どうにでもできないだろうという、危機感の薄れが引き起こしたと言っても過言ではない。爆破が失敗したにしても、戦闘空母のみを先行させていれば、少なくとも後方に控えた空母部隊から、再度の艦載機攻撃が出来たかもしれない。(明確な航空機損害率はでてないので不明だが)
また、彼は自軍の兵器に絶対の自信を持っていたとも考えられる。それがドリルミサイルに反映されており、よもや地球人にシステムの解析や逆転をされるとは微塵にも思わなかったのではないだろうか。
最期
初代・2199共に七色星団での決戦後沖田十三と交信、互いを祖国の命運を担う戦士と認め合ってから第三艦橋を巻き込んで自爆することとなる。