立川恵の少女漫画および、それを原作とするメディア作品『怪盗セイント・テール』の主人公である羽丘芽美と飛鳥大貴(アスカJr.)とのカップリング。公式カップリング。
当初はいつもケンカすることでクラスメイトの間で有名だったほど仲が悪かった(だが、決して心から嫌うというわけではない)。
芽美には「ドロボーはドロボーだ」「神様のボートクだね、こりゃ」とセイント・テールを悪口を言い切るアスカJr.の傲慢な態度が気に入らなかったが、実際にセイント・テール追い回し始めたら彼が学校では見せない真心を持つことを気づいた。
そんな決心や情熱を励ましたい芽美は挑戦として予告状を送り始めアスカJr.にどんどん惹かれていく。
とある事情でセイント・テールが予告状を出さない時に、妙に必死なアスカJr.に呼び出され、「オレ以外のやつに捕まって欲しくない」と言われた。「ずっとあたしをあきらめないで諦めないで」という気持ちで毎回必ず予告状を出すというのを約束し、アスカJr.は「オレがつかまえるまで、誰にも捕まるなよ」というのを付け加える。
追いかけ回され続ける内に、アスカJr.の敵であるはずセイント・テールへの優しさに芽美の気持ちが募るが、そんなセイント・テールに関心を持つアスカJr.が芽美に対して「うるさいやつ」と敵対し続け、芽美は複雑な気持ちも抱いていく。
そのせいで自分がアスカJr.に恋をしていることを認めたくなかったが、彼に喜ばせる機会が高宮リナに奪われそうになった事件で、自分にとって「大事なもの」になったと気づき、自分の手で幸せにしたいと決めた。
そしてリナが芽美をついけまわしながらセイント・テールであると非難する時、「女の子をつけまわすってのはよくないからな」という口実でリナから芽美を守るために行動し、感情があふれるセイント・テールがアスカJr.に「もしも捕まるのなら、あなたに捕まりたいなって!」と漏らした(しかしドンカンキングであるアスカJr.は意味がわからなかった)。
芽美はちょっとだけアスカJr.との距離が近づいていて嬉しいが、それでもセイント・テールへの情熱を見て「“羽丘芽美”だったらきっとあんな風にはならない」と落ち込んでいる。そして自分がセイント・テールであることを気づかれたら嫌われてしまう、と恐れ始める…
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※ 以下、物語の核心に関わるネタバレがあります。 |
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そのマジックの裏にある真実(ネタバレ)
…というのだが、先ほど記したのは芽美の一方的な見方だけであることが原作12(アニメ11)話で明かされる。
アスカJr.は、いやでもハッキリ言わない芽美にとって自分も「いや」だと思い込んでおり、近づかなかいのは彼女の気持ちに配慮だった。
芽美のために声を上げようとしたら不器用な表現で敵対と勘違いされてしまう。
原作・アニメ13話では「本当の姿を映す」といわれるローザ王女の鏡がセイント・テールに取り上げられたらアスカJr.がその鏡の中に芽美の姿を見た。
非科学的だと捨て去ろうとしても本能が忘れず、「オレ、羽丘のことなんにも知らねー」と気づき、芽美を意識しながらすべてをハッキリさせるためにより熱心にセイント・テールを追いかけてしまう。
その間芽美は佐渡に口説かれて始め、アスカJr.は不安になりながらも自分の鈍感ぶりを気にしすぎて嫉妬を抑えた。
セイント・テールを追いかけ続ける内に、悪党ではなく「街の人々の悩みを背負っても世間から“理想”しか認識されていない存在」だと同情し、(警察の協力者として)彼女を逮捕したくなくなる。(この頃、以前の自己中心的な振る舞いが嘘のように消えてしまう)しかし何故か「オレじゃない他のやつが捕まえるのはいや」という気持ちで追いかけ続ける。
とうとう芽美の後ろ姿にセイント・テールの存在を気配する時に「セイント・テールを捕まえたいというだけでなく、羽丘芽美に似ている彼女を誰にも渡したくない」という恋心を遂に自覚。(この度「似てる」とは姿形ではなく「同じ気配が感じられる」という意味。つまり自分で具体的に確認するまで意識しないようにしたのに本能が同じ人物にしてしまい、押さえていた独占欲がセイント・テールへの態度になった)
換言すれば「セイント・テールの安全も羽丘芽美の幸せも他の誰にも任せられない」という意味も含める。
その宝物のように大切な存在になった芽美に「好きだ…羽丘が好きだ。ウソじゃないぞ…嬉しいんだ。羽丘が、傍にいて…手が、届いて…」という気持ちをアスカJr.の方から告白。
芽美もそれを涙を流して受け入れ、晴れてクラスメイト公認の恋人同士になる。
芽美がアイドルみたいな存在になって欲しくないアスカJr.の目的は「セイント・テールの居場所を作る」(怪盗になる必要がなくなるように芽美の閉じ込めた心に安心させる)というのだが、真珠の干渉のせいで芽美は「正体がバレたら嘘を許さないアスカJr.に嫌われてしまう」と恐れ、遠のき続ける。
結局仙童親子がアスカJr.に強引にセイント・テールの正体を明かしてすぐに芽美に届けない場所に拉致し、彼が4日間で「どうしてオレに隠してた?オレってなんだったんだ?」と芽美の意図を悩むしか出来ない様子。
しかし助けてくるセイント・テールからの予告状を真珠が(侮辱の意味で)「ラブレター」と呼ぶとアスカJr.は「今までのも、全部」ということに目覚め、最初から彼を見守っていたと気づいた。
一方、すべてを失ってもアスカJr.を取り戻したいと決めて芽美は彼を助けるために自分を救い損ね、不意に落下してしまい「だまっていただかれてたまるかっ!」と言い切ったアスカJr.につかまえた。
芽美「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…あのね、あたしがセ…!!」
アスカJr.の腕には理想的な怪盗でもなく、強がるクラスメイトでもなく、セイント・テールと羽丘芽美の正体である。
そんな嗚咽していた女の子をぎゅっと抱きしめてすべてを許してしまう。
アスカJr.「…神様が見てる。…観念して、おとなしく捕まれ。気つかなくて、ごめん…!」
かくして2人の追走撃という名の恋はセイント・テールの『逮捕』という当たり前のようで一風変わった形で幕を閉じる。
それから8年後、原作・TVアニメ共に最終回エピローグで立派な私立探偵へと成長したアスカは礼拝堂で待つ芽美へと指輪を送りプロポーズして婚約。のち結婚する。(単行本6巻の後書き口絵で結婚式姿が披露されている)
聖良「2人の秘密だった約束が、永遠の約束になる日はそう遠くはないでしょう…」
花と雪
原作15(アニメ23)話ではアスカJr.が芽美に以下の話を語る。
アスカJr.「自然界のすべてのものには色があるだろ?天は青、雲は灰色…みたいに」
芽美「…うん」
アスカJr.「そこで雪は神のところへいって“自分には色がなくて不公平だ”って言ったんだってさ。神に“花をたずねて色をもらいなさい”と言われた雪だったけど、冷たい彼に色をくれる花はひとつもなかったんだ」
芽美「か、かわいそう…」
アスカJr.「…でもとうとう雪が諦めようとしたときに、ある花が“私の白い色でよければ”と申し出た」
芽美「それでそれで⁉」
アスカJr.「…それ以来、雪は冬の間中その小さな花を守ってる…という話だ」
この話は芽美の「あなたは他の誰にも認められなくてもあたしがそばにいたい」とアスカJr.の「歪んでた自分でも愛してくれた君の幸せを守りたい」という気持ちを表現する比喩である。
なお、前述の告白シーンでは「お返しします」という文句が出る。
原作では花と雪がこのような意味を込めてところどころにちりばめるのが見どころ。
「羽丘芽美」と「セイント・テール」の扱い
先に述べたように「アスカJr.はセイント・テールに比べて”羽丘芽美“には興味がない」というのはあくまで芽美の勘違いだった。
前述の花と雪の話や初期の伏線からすると、アスカJr.がセイント・テールを捕まえようとした最初の理由は誰かに認められたいことで、誰よりも芽美に認められたい描写もある。
しかもセイント・テールに関して「なぜそうするんだ?」と聞き続けたというのは人間としてセイント・テールのことを理解したい気持ちで、結局芽美を理解するには重要な質問だった。
原作番外編では怪盗をやめた芽美が「セイント・テールじゃなくなったからもうセイント・テールのように扱ってくれない=あたしに興味がなくなった」と悩み始める。(実際はアスカJr.は以前の自己中心的な言行を思い出した時恥であった)
突然に「あたしとセイント・テールと、どっちが好き?」と聞かれたアスカJr.は意味がわからず「同じだろ⁉」「セイント・テールっていえばさ…たまにはポニーテールにしないのか?」のような返事をした。
まさに鈍感な反応だが、アスカJr.にしてみれば「羽丘芽美という人間に本質的なものであるセイント・テールは否定してはいけない」という思いが含める考え方である。
紆余曲折を経て「お前は絶対逃げないから追いかける必要はない」というアスカJr.の意思が伝われ、芽美はセイント・テールである自分を認め、アスカJr.が好きなのは「どんな姿でも本当の気持ちを自由に見せる芽美」だと納得する。
余談
アニメ版では当初でも互いに惹かれ合いに近い描写であり、原作に比べてかなり仲良くする(ケンカの時でも敵対的な雰囲気が薄い)。
しかし大筋がだいたい原作をなぞる。
アニメオリジナル18話での
アスカJr.「オレのクラスにもえれー気の強い女の子がいてさ。どういうわけかそいつと顔合わせるとケンカになっちまうんだ。別にそんなつもりはないんだけど。今もケンカしてんだよな…なんだか知んないけどあいつがプンプンしててさ!」
芽美「(もう、鈍感!)」
アスカJr.「でもオレもわるいのかもしらねーな、きっと」
など、二人の関係に関するお互いの悩みを描くシーンが多い。