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選民思想の編集履歴

2023-09-17 15:57:58 バージョン

選民思想

せんみんしそう

自分たちは神から選ばれた特別な人間集団であるという考え方。

解説

人は弱く、生き抜くためには協力し合って集団を形成する生物であり、それらが民族や国家の起源とされた。一人では困難なことを二人三人と増やしていくことで一人分の負荷を軽減し、全体の生存率を上げる。これが集団の基本原理となる。

しかし代償として課される義務が重すぎてその集団の存続が難しいともなれば、何かしらのアメは与えなければならない。その中で最も安上がりなアメは「お前たちは特別だ」と言い続けて自尊心を刺激し続けることである。


選民思想とは概ね、自らを神々などの頂上的な存在から選ばれた特別人々であると考える考え方と言えるが、狭義ではユダヤ人の思想のことを指す。

彼らに言わせるところによると、ユダヤ民族とは創造主たる神が自らに似せて作りしアダムの直系子孫であり、ゆえにアダムは正当な神の代理人として世の諸々のあらゆることを管理し支配する権限を与えられた。

…というのがユダヤ教の伝統的主張だが、そもそもの話この世の全ての人類がアダム(Adam)とエワ(Eva)から生まれたとされるならば「『それ以外の人々』はいったいどこから来たのか?」という疑問が当然のように生まれる。一応、カインとアベルの例を始めとしてユダヤ主流から分かれていった人々が非ユダヤ人の祖先とする解釈もあるが、それはそれとして神の民族にも脱落者が出るという事態を認める事にもなる。

いずれにせよ選民思想の源流とされるユダヤ教それ自体が論拠に乏しいどころか矛盾を内包した発想であり、屁理屈に屁理屈を重ねて積み上げられた歴史を持つことを念頭に置くべきであろう。これはユダヤに限らず「王族貴族は神に選ばれて生まれてくる、ゆえに神の代行者として臣民国民を支配する権利がある」と考える王権神授説を始めとして、似たような発想は多くの宗教民族や政治形態で見受けられる。


しかしこれは決して限られた宗教や民族が持つ独特な発想ではなく、満遍なく全人類が持ち合わせかねない。例えば王族貴族による選民思想とは民族の問題というよりは階級の問題であり、現代でいいかえれば「金持ち特権」や「上級国民」のような思考である。これは非常に応用が利き、国民意識や民族意識が薄れた現代社会でも、文化や言語、消費傾向などで様々なマウント合戦が繰り広げられている。


選民思想に陥る集団は、彼らは自分たちの集団を保持するために周囲と自らを区別して危機感を煽り、自分たちがそれらの上に立つものだと教え込む。この手の選民思想は選ばれなかった人間の存在価値の否定してもよい解釈されることも多く、排斥運動や民族浄化の論拠として良いように扱われてきた。何せ理屈は簡単で、「あいつらは俺達と違うからあいつらを殴っていい」という論理性もへったくれもない暴力理論に宗教や政治や血統やらで何らかの”箔”を付けたのが選民思想ともいえるからだ。


事実、かつて第三帝国が似たような思想を極端な形で推し進めた結果、ユダヤ人を始めとしてロマや身体障碍者や精神疾患者、現代で言うLGBTQなど多くの人命が奪われるというジェノサイドに発展したケースもある。少なくとも実行した者たちは『我々には我々と違う者を一方的に裁く権利がある』と思い上がるか、公言される謳い文句を受け入れてその理論を盾に思考停止していたかのどちらかである。なお選民思想の源流であるユダヤ人たちが、それを模倣したとしか思えないゲルマン人選民思想によって排斥と虐殺の魔の手に呑まれたのは最悪な歴史の皮肉としか言いようがないと、古くから言われている。


彼の国が滅びた後もこの思想の根は深く、人種による優位思想や旧宗主国優位思想、あるいはその反動から生まれた過激な発想は戦後も各地で軋轢や摩擦を引き起こし、同じような芽はこの日本でも世界でも広くばらまかれている。近年では追い詰められた(と思い込んだ)人々が自らの劣勢を挽回すべく、「自分は○○だからもっと社会に認められるべき、それを横取りする××は被害を被っても当然だ」などとこの手の理論を勝手に創り上げては振りかざし、凶行に及ぶケースが後を絶たない。


その為に、現在での創作物ではたいてい“否定されるべき悪党の思想”として扱われたりする。


キリスト教の見解

聖書には「あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、あなたがたを任命したのです。それは、あなたがたが行って実を結び、そのあなたがたの実が残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何でも、父があなたがたにお与えになるためです。ヨハネの福音書15:16」とある。イエス・キリストは博愛主義であり、「わたしは良い牧者です。良い牧者は羊たちのためにいのちを捨てます-ヨハネ10:11」と言っている。


イスラエルの民は全人類の手本だったが、傲慢さゆえに道を踏み外した。だからこそイエス様はクリスチャンに「あなたがたは地の塩、世の光です。マタイの福音書5:13〜14」と人々の模範になるように教えられている。

聖書入門神様はなぜ特定の民族を選ばれたのでしょうか?


関連項目

王権神授説 特権階級 上級国民 善悪二元論

貴族ノブレス・オブリージュ=『高貴なる者の責任』を意味する言葉。選民思想に傾いた側がよく使う言葉だが、たいていの場合実行できてない。

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